世界の名ボクサー:トーマス・ヒットマン・ハーンズ⑤「デトロイトの暗殺者」

80年代のスター。世界5階級制覇王者。二階級制覇&防衛戦。ウィルフレド・ベニテス戦、マレイ・サザーランド戦、ルイジ・ミンキロ戦、ロベルト・デュラン戦を紹介します。

トーマス・ハーンズ(アメリカ)
身長185cm:オーソドックス(右構え)

①トーマス・ハーンズ 15R 判定 ウィルフレド・ベニテス
(WBC世界J・ミドル級タイトル戦、1982年)
(ダウンシーン)
5R:右ストレートでベニテスがダウン
9R:左ジャブでハーンズがダウン
(感想:ハーンズが二階級制覇。WBC1位のハーンズ。これまで35勝(32KO)1敗。世界ミドル級王者マービン・ハグラーへの挑戦が決まったが、試合直前にハーンズが右手を痛めて試合が流れた。ターゲットをハグラーからベニテスに変更。43勝(26KO)1敗1分の王者ベニテスはプエルトリコの「天才」。17歳6ヶ月で世界王者になり、22歳8ヶ月で三階級制覇。直前の試合ではロベルト・デュランを判定で下し、二度目の防衛に成功している。ニューオリンズ「スーパードーム」での一戦(会場ではラリー・ホームズ、シュガー・レイ・レナードが観戦)。ゴング前、至近距離でニラみ合い。共にスリムな体型だが、ハーンズの方が背が高い。ハーンズがいつものように鼻をこすりながら左ジャブ、ワンツー。接近戦では左ボディを打つ。ベニテスは受け身。ジャブ、右カウンター。攻めるハーンズだが、ベニテスはヘッドスリップで攻撃をかわして正確な左ジャブ。5R、右ストレートでベニテスがダウン。6Rにもハーンズの右でベニテスがピンチ。9R、ハーンズがバランスを崩したところに左ジャブがヒットしてダウン(ダメージはほぼ無し)。一貫して受け身の姿勢のベニテス。10R、ハーンズが「打ってこい」と挑発。終盤は足とジャブのハーンズ。ベニテスは前に出るが、カウンターを食う(序盤・中盤と逆のパターン)。15R終了。互いに健闘を称える。判定は2-0。ジャブで先手を取り続けたハーンズが評価された。ベニテスはテクニックはあるが、練習嫌いの男。カウンターを取る巧さはあったが、試合の主導権を握るような精力的な試合ぶりではなかった。「2-0」は意外。見事に二階級を制覇したハーンズ。しかし右手を負傷し、ブランク。全く意外なことにベニテスはこれが最後の世界戦に。ハーンズ戦後はムスタファ・ハムショ、デービー・ムーア、マシュー・ヒルトンらに敗れた。引退後はパンチドランク症状で悲惨な姿に。)

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