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神田伯山 畔倉重四郎連続読み 初日

2020年1月に行われた「神田松之丞 畔倉重四郎」
大須演芸場に5日間通い続けて聴いた話が今年、また名古屋に帰ってきた。

飛ぶ鳥を落とす勢いで若手人気講談師だった松之丞が伯山を襲名し
披露目興行、松之丞時代からの人形浄瑠璃共演、末広亭夜席の主任抜擢、姉弟子阿久鯉との慶安太平記俥読み、宮本武蔵続き読み、天明白浪伝連続読み、国宝となった師匠松鯉との歌舞伎座公演、叔父弟子愛山の次郎長伝との稽古をそのまま会にした相伝の会、相変わらず日本各地のホールを満杯にしながら様々な活躍を経た伯山がまた名古屋で畔倉重四郎をやる

それを聴きに行ける
行くしかない

第一話「悪事の馴れ初め」
第二話「穀屋平兵衛殺害の事」
重四郎の生い立ちや流れを丁寧に描く
元は侍で真面目な親を持ち、見た目も悪くない男重四郎
真面目な男が悪に堕ちていく
連続読みには珍しく最初から聴くものを話しの中に引きずり込む
プライドが高く知恵も回る男が持っていた欲望
そして欲が欲を招くように溢れ出て止まらなくなる
この先を暗示させるように歯車が狂い出していく

第三話「城富歎訴」
第四話「越前の首」
父が無実の罪で投獄された息子
城富が誠実な父を信じて訴える清廉さ、直向きさからだんだんと
父が殺された絶望と
頼りにしたが裏切られたとの思いで越前守への怒りとやるせなさでぐちゃぐちゃになっていく
名奉行と言われた越前は、本当に城富の願いを退けてしまったのか

伯山は盲人を演じるのが上手い
城富がもう一人の主人公という通り
初日 会場は城富の心情に同化し
重四郎という真の悪人に立ち向かう



毎回伯山を聴いて思うのは
以前と少しずつアップデートされている 前回と同じではないということ
仲蔵もそうだったように

小僧の三吉の演じ方
鼠小僧のしじみ売りや、小政の生い立ちなどで小僧を演じる話があるが
前ほどわざとらしい子供っぽさが無くなったと思う
聞き手が慣れたのかもしれないけれど、笑いどころとしてもとても面白かった

城富が悪夢にうなされて起きるシーン
「ーーーーゴクリ。」
と喉の唾を飲み込む音を大きく聞かせるなど、マイク効果をふんだんに使う伯山技も嬉しい

また以前よりも話がわかりやすく
どんどん話が自分に入り込んでくる

大きなホールで満員のお客さんを引き込まなければならないから、仕方がないのかもしれないけれど、張り扇の大きな音より、伯山の声をもっと正確に聞きたくなる

二つ目の途中から追いかけ出した私にも、こんなに明確に進化 いや深化を感じる伯山

同時代に巡り逢えた幸せを感じさせる

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