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変わっていくこと、変わらないこと(2021/11/7 ukka 秋田分校文化祭レポート…のようなもの)

(※以下、いつものことながら、大半が私のひとりよがりの内容になりますのと、今回思うところがあってエビ中メンバー・ukkaメンバーの敬称を略して書いていますので、このあと読み続けていただく奇特な方は、何とぞやさしい気持ちで見守っていただけると幸いです)

いい風は空をその気にさせた

《あ、風が吹いてきたんだ…》
広い会場にしては、少し急ごしらえにも見えるステージ・テントのちょうど後ろ、4種類の旗がなびいているのを見て、改めてそう思ったのは『214』の中盤にさしかかったところだった。
茜空の頬に、長い髪が(視界が明らかにさえぎられるとわかるくらい)覆いかぶさっているのを真正面に見すえ、ふっと空気が自分の頬を吹き抜けていった。
秋の日はつるべ落とし。
ライブ開始時にステージまで明るく照らしていた太陽が、すでに西に傾きはじめ、ステージの真裏、ちょうど西側にそびえ立つ秋田キャッスルホテルの影は、長く客席にまで影をのばそうとしていた時間帯だった。

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ukkaの4人体制Day-1は、突然やってきた。
5人体制の勝負をかけたZeppツアー初日、その興奮も冷めやらぬ3月18日、水春がグループを脱退するというアナウンスがあり、間髪入れずに5人それぞれのブログが発表されたのは、夜19:00のことだった。
そして、あの日から200日余りが経った。

またこの場所とかこの時間にきてみたい

2年ぶりに開催された「私立恵比寿中学秋田分校」通称”秋田分校”。
ABS秋田放送が主催し、秋田県公式観光&文化大使 ”美の国ガールズ”のエビ中が 、"秋田の魅力発信"と"地域経済の活性化"をコンセプトに毎年行っている、イベント型のコンサート。
2015年の第1回から数えて、今年が6回目。

ukkaは、改名前の桜エビ~ず時代に、エビ中妹分グループとして、計3回このイベントに参加している。
(加えて、2019年は「ABSまつり」として、秋田分校の2週間前に行われたイベントにも出演するため秋田に来ている)

イベントは、有観客のコンサート "学芸会"以外にも、コラボイベントとして、野外無料イベント "文化祭"や、ファンアートの展示 "芸術祭"やコラボグッズの販売 "購買部"など、週末あるいは金曜日からの3日間をかけてお腹いっぱい秋田を楽しめるイベントになっている。

緊急事態宣言もあけ、「秋田県内のコロナ新規感染者は、昨日も今日もゼロでした」というニュースが流れる中…ではあるものの、まだまだコロナ禍の爪痕が色濃く残っている今年の秋田分校。
土曜日の"学芸会"では、出演者の人数を絞り、かつ出演時間が重ならないようにグループごと予め決められたフェス形式での開催となり、ステージに多くの演者が立たないような工夫(恒例だった出演者どうしのコラボパフォーマンスも今年は中止など)がされていた。
そのあおりもあったのだろう。ukkaは、"学芸会""文化祭"両方に参加した2年前とは異なり、今年は日曜日の"文化祭"のみでの出演となった。

今年の"文化祭"が行われる場所は、前々回3年前と同じ、にぎわい広場。
美術館と交流施設の正面に広がる、だだっ広い石だたみの会場。
ukkaにとっては、なじみ深く、そして思い出の場所だ。
 2017年11月12日 "文化祭《セトリ》"(桜エビ~ずとして初の本格的な地方遠征)
 2018年10月21日 "文化祭《セトリ》"
 2019年10月6日 "ABSまつり《セトリ》"(このあとより1か月ABSラジオでミニコーナーを担当することとなった)
 (※2019年の"文化祭"は、ABS秋田放送の新社屋イベントスペースでの開催)

普段は、フリーマーケットを広げているおねえさん、出店でカレーを振る舞うおにいさん、中学生高校生のバンドやおじさんおばさんジャズトリオなんかがのんびりと集まって、日がなのんびりと過ごすような場所とのことを聞いた。
今日も、ステージと逆サイド、出店が出ているエリアでは、並べられたテーブルに、アイドルの生写真と発泡スチロールの容器に入ったきりたんぽを並べて楽しむアイドルファンを、興味深そうに見つめる地元の人の姿が見受けられた。

そんな場所で、抜けるような青空のもと、朝早くから集まった観客の数は、イベント開始11:00時点で、すでに200人くらいはいただろうか?
いつも見る顔もいれば、カメラをかかえた地元出演者の親御さん、たぶん初めてukkaを見る地元の皆さん、大通りを行き交う車からのんびりと顔を出して一瞬「何をやってんのかな」と目をやる小型犬。

おおよそ25ヶ月ぶりの秋田。
この期間、長く影を落とすコロナ禍で、不要不急という単語がエンタメを窮屈なものにしていく中、遠征もままならない地元の観客にとっては、どれだけ長く待ち望んだ秋田分校だったろうか?
“文化祭”進行役の長谷川瞬さんと、ABSの関向アナウンサーは、繰り返し繰り返し、壇上から有観客のイベントの司会をできることの感慨深さを語っていた。
そして、それは前説に登場した、ABS秋田放送の”用務員さん”こと、このイベントを成立させるため各方面との調整に苦慮して走り回っていたであろう、佐々木さんも同じだった。

むかえてくれた秋田の人には、もちろん秋田なりの思いがある。

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よかったら練習しとかない?

ukkaの出番は、出演アイドルグループ3組の真ん中、アプガ2期(アップアップガールズ(2))の次、大トリいぎなり東北産の前。
持ち時間は45分。
アプガ2期のライブがはじまった時点で、おおよそ観客は300人ほどに増えていただろうか? うち東北産のファン”皆産”は半数くらい、それぞれ色とりどりの推しメンタオルを、日差しよけのために頭にかぶっている様子が、秋田にも「現場」が戻ってきた風景をあらわしていた。
(注:下の写真は、いぎなり東北産のライブにおける、撮影可能の時間帯に撮ったものです)

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アプガ2期が、すっかり日差しがまぶしい時間帯のなか、秋田に凱旋したメンバーとともにアツいステージを終え、時刻は13:45。
開演前のリハーサルチェックで、ふわりとukkaの4人がステージに現れた。
川瀬あやめ・茜空・芹澤もあ・村星りじゅ、、、え?りじゅちゃんずいぶんと髪をバッサリ切ったじゃないの…そんな客席の思いとは関係なく、リハーサルは淡々と進んでいく。
まずは立ち位置の確認から。いつもと違って、ステージ上にバミリが番号とともに、わかりやすく書いているわけではないので、立ち位置がわかりにくいようだ。上手下手どの範囲まで動こうか、前後ろの奥行きはどのようにフォーメーションを組んでいこうか、思いのほか長い時間4人は話し合いを続ける。
フォーメーションオッケーとなれば、次は音響マイク。
「214フルでお願いします」
茜空の声がマイク越しにひびく。

フルバージョンの『214』が、秋の秋田の空気に混ざりあう。
アウトロが止まり、メンバー立ち位置を確認しながら、ふとしたメンバーの一言に、茜空の「えへっ」と顔をほころばせる表情が目に入る。

さかのぼること3時間前、オープニングアクトとして披露された、地元秋田大学の”よさこいサークル”「よさとせ歌舞輝」約40人の演舞。
3年生が引退して、1年生2年生の初の大舞台とのことで、慣れない新幹部学年が、立ち位置を入念に/ときに思うにまかせない様子で確認しながら、向こうの方には見せ場を用意された旗手が、少し緊張気味に頬を膨らませている、そんなリハーサルを見ながら、ふと、この春からukkaの自己紹介に加わった「大学1年生の…」という茜空の声を思い出す。

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ちょうど1年前。
大学へ進学しようと自身の進路を定めた茜空が、受験のために事前提出する小論文のテーマに選んだのは「秋田分校」だった。
それから半年を経て、4人体制が始まってすぐ、それぞれの新生活が始まった。
そんな5月に、とある配信で茜空本人から明かされたのが、受験に至るまでの、大学生になるまでの話。
《自分の身の回りに起こること、それは興味本位ではなく、すべて自分ごとだと考えて、じゃあ自分は何を知りたくて何をしたいんだろう》
そんなふうにいつも思う彼女が頼りにしたのは、当時のマネジャーである藤井校長であり、仲の良いエビ中メンバーの柏木ひなたであり、そして毎月秋田の高校を訪問して、5回の秋田分校を通じてもっとも深く秋田と関係を結んだ”生徒会長”小林歌穂だった。
さらに、その縁から、ABS”用務員さん”佐々木さんにもインタビューをして、「経済効果1億円」という数字だけでははかれない、このイベントが、長く深いところで観客を魅了している・秋田の人と結びついていることを納得した彼女は、その小論文でもって、大学進学の切符を手にすることになった。
ukka 公式ブログ - ​高校卒業、そして。(茜空)

同じ世代・同じ大学生が、同じようにステージに立っていること。
それはプロ・アマチュア関係なく、演者に許された聖域でもあり、おそらくこのコロナ禍で練習する時間も、披露する機会も失われて、しんどい思いをしたのは、きっと秋田の大学生も同じだったのかもしれない。
でも、またエンタメが、こうしてライブとして、週末の日常の風景に溶け込んで戻って来る日は、きっと近い。

リハーサル2曲目は、『それ9(それは月曜日の9時のように)』。
前方席に座っている多くを占めていた、いぎなり東北産のファン"皆産"が、むずむずしながら、ちょっとだけ右手を左手を軽く動かしていたり、小さくクラップしていたり。うん、楽しい。
聞くところによると、通常の東北産のフェスや野外ライブでの有観客のリハーサルは、できるかぎりおとなしく見ているように心がけているそうだ。
そんな皆産をうずうずさせておきながら、サビ前のいいところでバッサリ切られて、「あとは本編でのお楽しみ」とばかりの顔で、さっとメンバーは奥に引っ込む。

14:00ちょっと前、進行役の長谷川瞬さん、関向良子さん両名が壇上にあがる。
ふたりとも、リハーサルを聴いているだけで興奮した様子。
それもそのはず、何年も前からABSラジオでの番組を通じて、ukkaのファンを公言しているふたり。
長谷川さんは、ワンマンライブを見るためだけに東京に遠征をしてその熱量を『タマリバ』で語り、

関向アナウンサーは自身のラジオ番組内で、おおよそアナウンサーモードではない早口でukkaのことを紹介してくれるほどの大のファンだ。

ukkaが秋田に来てくれることを、誰よりも待ち望んでいた2人からの紹介には、「今日が4人体制最後のライブとなります」の一言が加わった。
いよいよだ。

でもそろそろボクたちの出番だね

00. overture
01. Shining City Light
02. エビ・バディ・ワナ・ビー
03. 214
04. Party goes on
05. ガールズナイト
06. ファンファーレ  <ツイキャスによる配信アーカイブ>
07. それは月曜日の9時のように
08. タリルリラ
09. WINGS  <ツイキャスによる生配信アーカイブ>

『overture』で笑いながら、上手から飛び込んできたのが茜空。750日ぶりの秋田でのステージは、これ以上ない青空が抜けるの中で、無事に始まった。

1曲目は、村星りじゅフィーチャーの『Shining City Light』。腰まであった髪の毛を切ったりじゅちゃんが、いつもより心なしか軽やかにステップを踏んで、いつもより軽やかに秋田の真ん中で声を伸ばす。

2曲目『エビ・バディ・ワナ・ビー』
アプガ2期が作ってくれた、アイドルグループの元気さ、客席まで巻き込んだ楽しさの雰囲気をそのままに、会場の熱量は明らかにあがっていく。

そして3曲目『214』。冒頭に書いた思いのあと、ふと風が来る方向に目を向けてみた。
道を行き交う人たちも、何人かが足を止めてステージを見つめている。
いつだって、この曲は何かをかえてくれる。
実際に風が吹き始めたのは、そのタイミングではなかったのかもしれないけれど、15人いや20人くらいのたまたま通りかかった人たちの”気”と、もしかしたら会場の多くの、いぎなり東北産のファン”皆産”がぐっと前のめりになった”気”も、そのときに吹いてきたのかもしれない。

芹澤もあ・茜空・川瀬あやめそれぞれのフィーチャー曲『Party goes on』『ガールズナイト』『ファンファーレ』がその先に続く。
4人体制での最後のライブ、4人のためにそれぞれ書かれたフィーチャー曲をセトリに入れてくるかもなとは少し思ったけれど、ワンマンライブに比べても持ち時間が短い時間で、フルコーラスを4曲入れてくるとまでは思っていなかった。やはりukkaは侮れない。
4人体制になってから、いくつものライブ・イベント、そしていくつもの出会いを経て、そして、日々のたゆまぬ努力・レッスンを経てたどり着いた、いつしか”自然体”のukkaとして、強いチームになっていた。
そして、「え?ukkaってみんなこんなにしゃべる子たちだっけ?」「いつの間にか、こんなに立派にしゃべる大人らしさを身につけたんだっけ?」と先輩グループや、周りから言われるチームになっていた。

4人体制のDay-10、突然のことから、たった2週間足らずで向かえた最初のワンマンは、ツアー2公演目の福岡。
ぽっかり空いた穴を埋めることなどはもちろんできず、ただただ一生懸命自分たちに大丈夫って言い聞かせながらステージに立ち、初めて披露された『ファンファーレ』。
あの日傷だらけの中で披露された4人の『ファンファーレ』も、今日いったんのゴールを迎える。
川瀬あやめが、なかなか出ない高音域に苦労させられたと言っていた「♪毎日がスタートライン」の力強い歌声とともに、メンバーにも万感の思いがよぎったようだ。芹澤もあが珍しく続く自分のパートで一瞬だけ声をつまらせる。茜空はすべてを振り払うかのように、続く川瀬あやめの「♪笑えそうだ~」で両手を大きくブンブン回し続ける。

『それ9(それは月曜日の9時のように)』終盤、川瀬あやめのフェイクがどこまでも伸びていくパートで、いつも何かを後ろで仕掛けてくる茜空が、小さく深呼吸のポーズとともに秋田の空気を吸い込んだ。

続く『タリルリラ』で、吸い込んだ空気を思い切り吐き出すように、自らが(本来はささやく)セリフパートで、大きく「秋田さいっこう~」と叫んだ茜空。
ずっと来たかった秋田、ずっと来てほしかった秋田、この場にいられてやっぱりよかった。
そして、一度は「折れかけた、いや、折れた」と彼女たちをもってしてこぼれた言葉にもかかわらず、4人で続けてくれたことでかなった風景だった。

客席の大半が日陰に入って、先ほどよりもずいぶんと気温が下がった。
澄み切った霜月の空気を切り裂く『WINGS』の歌声とともに、「4人体制のukka」最後になるライブは、ここで終わりを迎えようとしている。
西に傾いている太陽は、北西方向の秋田警察署の南側の壁面と太陽光パネルをオレンジ色に染めているのがわかるだけで、西の空に今日はどんな夕焼けが広がっているかというのはわからない。
風は、引き続きゆっくりと北から南へと吹き付けていた。

たぶん変わらないって気がしてる

ukka「また来年、秋田分校に呼んでもらえるようにukka頑張ります」
長・関「新メンバーも2人加わるんですよね」
ukka「もう、ほんっとマイペースでねぇ、鍛え上げますよ、スパルタで」
困っているのをいかにも楽しんでいるんだなと伝わってくる、川瀬あやめの笑顔。
後ろで、いつものように菩薩のようなアルカイックスマイルで微笑む村星りじゅ。
すんとすました顔が、どこから見ても美少女なのに、どこかしらコミカルに見える芹澤もあ。
そして茜空。
《あなたたちも、全員思いっきりマイペースやん…》

11月は、出雲大社に集まっていた各地の神が、地元に帰ってくることから、別名「神楽月」とも称されるそうだ。
ルリ・リナの2人を加えて、ukkaは新しく6人体制でのライブをスタートさせる。
8ヶ月足らずの間に、4人が駆け抜けた先に、どんな仲間を見つけることができたのかな。
さて、また11月23日に宴が始まる。

変わることは簡単なことじゃない。
変わらないことも簡単なことじゃない。

2人の両翼が抜けても、しっかりと、残った4枚の羽で高く飛び続けたukka。
そして、また新たな2枚の羽を加えて響かせる『WINGS』を、僕らは、またどんなふうに聴くんだろう。

良いライブをありがとうございました。


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