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4度目の殺人


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ゴシック・バロックそのもののような展示を得意とする、ヴァニラ画廊さん。

様々な展示をされており、わたしも何度も通わせていただいております。

そんなヴァニラ画廊さんで展示をして、大変話題になった展示の一つに「シリアルキラー展」があります。

内容は、シリアルキラー(連続殺人犯)の残した「何か」のコレクションの展示だ。

2016~2019の間に、年一回、四度展示が行われました。

高校生以下立ち入り禁止、2019年の開催時は混雑を避けるためにチケットを日付指定で前日購入になるほどの人気を博した展示です。

知らない人にとっては、そんな展示していたのかと思われるものではありますが、それほど人気だったんです。

そのような展示なのではありますが、こちらの展示皆勤賞させていただきました。

展示物

シリアルキラーに関する「もの」といっても様々で、展示物はシリアルキラーが描いた絵、手紙、写真、頭髪、歯科レントゲン、下着の一部……

月夜の狂人の愛用していた聖書や、殺人ホテルHH.ホームズの取り壊されたホテルの一部などまでも含まれています。

手紙などは、プリズン・グルービー(犯罪者ファン)などとのやりとりが多く、短文が多い印象でした。

特にそれらに対する内容の解説などはないので、パンフレットを見るもよし、ある程度の知識を持って見に行くのもいいと思います。

展示されているシリアルキラーは国外の人間で、尚且つ数が多いので公式サイトで確認して欲しい人数なのだが、多少なり顔が思い浮かぶなという人でも知っているラインナップだ。

勿論、何も知らなくても十分にその展示を見る価値はあるでしょう。見る人にとっては。


これらの稀有なコレクションを所有している人物は、たった一人。

コレクターHN氏

たった一人の(本人曰く)些細な好奇心から集められた展示物たちだ。

四度の開催で、勿論展示物の被りはあるものの、新しい展示も追加されている。どれだけコレクションがあるんだ。

ヴァニラ画廊さんは結構狭いのですが、そこに所狭しと並べられた展示は圧巻です。


全四回と言いましたが、この中の第三回。実は「シリアルキラー展」ではなく、「エヴィルデヴィル(悪魔的)コレクション」という展示名で開催されています。

シリアルキラーの展示に含めて、HN氏の蒐集品である「創作物」の中にある「悪魔的なもの」の展示というものだった。

映画の小道具なんかもあり、エルム街の悪夢のフレディのナイフ付き手袋は一番感動しましたね。ナマで見れるものでもないし、何よりわたしがホラー映画が好きだからである。

悪、というものは判らないが、悪魔的、というものならばコレクションとして貸し出すことができる、というHN氏からの提案で行われた内容の、第三回の展示。

もし現実のシリアルキラーに関するものを求めていたら物足りない展示なのだろうが、創作物に描かれる悪魔的な存在に関するものが好きな人にとってはセットでお得。映画ファンには堪らない。


※パンフレットの一部

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ナンセンスを愛す

第一に、わたしはハイブリストフィリア(犯罪性愛)でもプリズン・グルービーでもない。

寧ろその存在を嫌悪しているし、厳罰主義であるところもある。

シリアルキラーに対して興味を持つ切っ掛けは、犯罪心理学的な観点からであり、それ個人の人間が、なにか特別な存在ではない。

この展示から犯罪心理学が学べるかと言われると、確かに多少なり得るものはあるのだが、先駆者の研究を読み込む方がよほど勉強になる。故にこの展示は娯楽だ。

では何故、そのように嫌悪する存在の遺物を見に行くのかと言われれば、自分を正気であると思いたいからだ。

嫌悪すべき犯罪者たちをみて、その残したものを見て、嫌悪できるか。なにが正気であるか、その時代によって異なるが、このように他人が「悪」と明確に銘打った、ある種の「基準」があるものならば、自分一人の感覚にはならない。

目の前に置かれているのは、いいや「いる」のは、その時代の「狂人」だ。罪人だ。

それを確認するいい指標になる。

常に展示には社会的な意義を求められる。正直そんなもの、不要だと思ってしまう。公的な金がかかる博物感に関しては、その展示の教育的な意義がないと支援してもらえないのは学芸員の職を得たかった身としては十分に理解できる。

だが正直なところ、見たいから見たいし、知りたいのだ。それ以上の理由があるだろうか。人間には好奇心がある。それが全てだ。

だからこそ、奇妙でナンセンスな展示を見たいと思ったら、その衝動のままに見に行った方がいい。展示している側には多くの人員が割かれている。その奇妙な展示物を愛する人が、倍以上いるのだから何も臆することはない。


今年、2020年は流行病の影響もあり、展示内容自体が押しているために開催されるのか不明ではありますが、五年連続で開催して欲しいなと思っております。

主に夏に開催されているので今年は冬にやってほしいなぁなどと思ったり。今年は難しいかな。


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