やまい

風邪を引いたら、熱が出たり、頭痛がしたり、悪寒がしたりする。

怪我をすれば、その部分の皮膚が破れて血が出たり、骨や神経を傷めて、痛みがあったりする。

悪寒がなくなったり、痛みがなくなったりすれば、治療は完了したことになる。

つまり、治ったのだ。

では、心は?

心の場合、その他の場合と違って、自覚することが難しい。

そりゃあ。社会人になって、そこそこの仕事をすれば、毎日平穏という訳にはいかない。

難しい決断をしなければいけないときもあるし、なにが答えなのか分からないまま正しいだろうことを信じて突き進まなきゃいけないこともある。

そんなときは、ドキドキしたり、眠れなくなったり、時には落ち込んでご飯がのどを通らないこともあるだろう。

たいていは、一過性のことで、動悸や不眠はなおったりする。

でも生きているとそういうことばかりではない。仕事のことだけじゃなく、私生活のことも上手く行かないことも出てくる。歳を重ねればそういうことが増えていったりする。

自分の人生の荒波を、何とか乗り切らなきゃいけない。そう思って踏ん張り続ける。だから、そんなとき、心が傷ついてるとか弱ってるとか思わない。

僕もそうだった。確かに生活は一変し、溶けない思い出に溺れていても、なんとか乗り切ってきた。続く限り、なんとしても、何を犠牲にしても、そうしていくつもりだった。

でも、周りの目は違ったようで。隣の席の同僚がとても心配してくれていた。僕は嘘をつけないから、余計なことをたくさん言っていたんだろう。

年度末に、その同僚は心療内科の予約をとってくれていた。

僕は診断され、薬を処方された。

風邪を引いたときと同じだ。

僕は無自覚だったが、病を冒されているらしい。

同僚がそこまでしなかったら、僕は病院に行かなかったし、病を自覚することはなかっただろう。

ただ着地点が全く見えない。何がどうなったら僕は治ったと言えるのだろうか。病は烙印のように僕につきまとっている。

「あんた、メンタルが弱いからね」

呪いのように繰り返される言葉があった。

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