運命③

母親から電話内容は、少女の許嫁にという相手が現れた、というものだった。

少女は、
(何故わざわざ会社まで電話をしてくるのだ、周りに同僚がたくさんいるなかでこんな話をするのは恥ずかしくてたまらない。)
と電話応対をしながらイライラを募らせていた。

しかも、その相手は元々、少女の姉とお見合いをする予定だった人だという。しかし、まずはしっかり働き、お金を貯蓄したいと、向こう2年間は結婚する気はないとのことだった。
その時点で既に姉にはお付き合いしているお相手がおり、妹なら2年でも待てるだろう、と少女が選ばれたのだ。

そんな経緯で少女の結婚相手が決まった。

前述した内容からもお分かりかとは思うが、お相手の彼は努力家で堅実な人だった。

しかしその頃、少女も恋というものに全く触れていなかった訳ではない。
少女は、会社の取引先でよく顔を合わせる青年に興味を抱いていた。その青年は、スポーツをしていて少女に気があったようだ。

ある日、青年からお誘いが来た。大会に出るから是非見に来て欲しい、そう伝えて照れ臭そうに去っていく青年を見届けながら、少女は迷っていた。

見に行くことは、許嫁の気持ちを蔑ろにする行為なのではないか。両親はどう思うだろうか。でも彼の勇姿を見届けたい。会場に行きたい。

大会当日がやってきた。

少女は、普段は着ない白いブラウスに白いスカートをはいて、会場に向かう準備をしていた。心はウキウキだ。数日前の悩みはもう無かった。玄関で大きな麦わら帽子を被り、鏡で笑顔を確認した。ばっちり。家の扉を開けて、商店街を歩き始めた。

その時、少女は前から歩いてくる許嫁を見つけた。

彼は、屈託の無い笑顔をこちらに向けて嬉しそうに歩いてきた。少女の服装がいつもと違うからだろうか。

ここで少女は、自分の運命を悟ったという。
少女がこれから別の男の所に行こうとしていることも知らず、ただただ嬉しそうに歩いてくる。
青年への思いは商店街を吹き抜ける風によってどこかへ運ばれてしまった。

それ以降青年とは会うこともなくなり、許嫁と結婚した。

それから彼は会社を辞めて、自身の会社を立ち上げた。地元密着、お客様第一の商売を二人三脚で続けてきた。やがて子ができ、孫ができた。

祖母が結婚するまでがメインのお話。

大変な人生を歩んできた祖母が放つ言葉には重みがある。説得力がある。仕事柄、人との関係をとても大事にしている祖母。

毎日感謝を忘れずに生きなさい。おばあちゃんも今に感謝している。おじいちゃんと出会えたことは運命。いろんな困難があったけど、結果出会えてよかった。関わる人全てに感謝しなさい。

祖母の人生を聞けてよかった、と心から思った。
皆さんも、身近な人の人生を聞いてみると、気の持ちようが変わるかも。

感謝して生きよう。

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