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「NETFLIXの最強人事戦略」 要するに、何がすごいのか?

話題の本を読みました。

どういう本?

2013年、Netflixの文化や行動規範を定めたカルチャーガイドである「NETFLIX CULTURE DECK」が、FacebookのCOOに「シリコンバレー史上、最も重要なドキュメント」と絶賛されたことでバズりました。

「NETFLIXの最強人事戦略」は、このカルチャーデッキが実際にどのように運用されているかをエッセイ仕立てで書いた本、という感じです。

純粋にカルチャーデッキの内容だけを知りたい方は、Netflixの採用ページを見た方が早いと思います。
ただ、多くの場合、カルチャーデッキだけを読むと「言うのは簡単だけど、運用するのが難しいんじゃん…」ってなります。w

この本は、そういう思いに応えてくれるくらい、現場の姿を臨場感を持って描いた本です。

章立て
序章   新しい働き方 ― 自由と責任の文化を育む
第1章 成功に貢献することが最大のモチベーション
第2章 従業員一人ひとりが事業を理解する
第3章 人はうそやごまかしを嫌う
第4章 議論を活発にする
第5章 未来の理想の会社を今からつくり始める
第6章 どの仕事にも優秀な人材を配置する
第7章 会社にもたらす価値をもとに報酬を決める
第8章 円満な解雇の方法
結論 

要するに、Netflixのカルチャーは何がすごいの?

書籍とカルチャーデッキを読んだ結果、特にユニークで、日本の企業文化ではまだあまり見かけないなと感じた特徴を取り上げます。

1. 正直・率直・公平。メンバーを自立した大人として扱う
Netflixにおいて「正直であること」は他のルールがうまく回るための必須条件になっていると感じました。

メンバー間で意見の相違や衝突が起きた場合には、基本的に当事者同士で話し合って解決することが求められます。
著者のパティ・マッコードさんは元CHROで、メンバーから相談を受けることも多かったそうですが「それ、本人に直接言ったの?」と必ず問うようにしていたそうです。

正直に伝える文化が醸成されていることで、衝突を恐れずに議論が活発になる、現場レベルのメンバーの意見が積極的に採用されて成果に繋がるなど、業績にも良い影響を与えているようです。

メンバーを「管理下に置くもの」として捉える組織では、現場が意見を言って、それを上位職者が判断して… という流れになりますが、Netflixではメンバーを自立した大人として公平に扱い、責任を委ねているところが特徴です。

2. 情報の風通しの良さ。非対称性をなくし、責任感を育てる
どんなレベル、職種のメンバーに対しても、情報がオープンに開かれているのも特徴です。

たとえば、新入社員だからといってNetflixの歴史を知らなくていいわけではありません。また、エンジニアやデザイナーといった技術職だからといって業績に関する数値に無関心でいていいわけがありません。

こう書くと当たり前ですが、日本の企業では「知っておいた方が好ましいけど、知らなくても無理もない」というレベルで済まされていたり、むしろ「部長以下にはこの情報は伝えてはいけない」といった統制めいた状況が多いのではないでしょうか。
Netflixでは、情報の非対称性をなくすためのコミュニケーションが積極的に取り入れられています。これは、どのレベルのメンバーであっても事業を理解し、それぞれが責任を持って働くための文化です。


3. 徹底的な成果主義。必要な才能に対価を払う
正直で風通しが良い組織作りはとても魅力的ですが、誤解してはいけないのが、これは「仲良しこよし」のためのものではないということです。

NetflixのCEO リード・ヘイスティングスも、本書の著者 パティ・マッコードさんも言うのが「我々はチームであって、家族ではない」ということ。
彼らは徹底的に成果にこだわるチームであり、より強いチームを作るために、明確なカルチャーを定めているのです。

明確なカルチャーが役立つ場面の1つが、メンバーの採用です。
書籍にも「頭数を揃えればいいというわけではない」「理想から考えてチームを作る」などの言葉があるとおり、Netflixは一流の人材を獲得することをとても重要視しています。優秀で必要な人材であれば、見合う報酬を払って来てもらう、その潔さも特徴です。

そして、その逆の場面、メンバーの解雇にもカルチャーは登場します。
どんなに優秀な人材であっても、Netflixのカルチャーに合わない(チームで戦えない)人材には組織を出てもらうこともあります。また、かつては素晴らしい時間を共有したメンバーに、今のNetflixにはポジションがないという理由で組織を離れる決断をしてもらうこともあります。スピーディーに組織の編成と改革を繰り返すNetflixにとって「ノスタルジアは危険な徴候」なのです。


4. 非管理主義。オーバーヘッドを作らない
メンバーを自立した大人として扱い、スピード感を持って事業を拡大していくNetflixにとって、間接部門は時に足かせになります。著者のパティさんは、こうした制度をどんどん廃止して、オーバーヘッドを減らしていきます。

有名なのが、Netflixには有給休暇制度がありません。これは「休むな」というメッセージではなく「自分の判断で適宜休みなさい」という意図からです。有給以外にも、経費精算などの事務手続きも極限まで簡素化されているそうです。自分で判断して行動できる大人に、制度による統制は蛇足というわけです。

必要なら休むといい、必要と思う経費は使っていい、高い能力には見合う報酬を払う… これも、メンバーそれぞれが自立した大人であり、かつ仕事に誇りを持った優秀な人材であるという自負があるからこその文化でしょう。
才能を信頼し、それを文化によって伝えることで、より優秀な人材が集まるサイクルができている気がします。


まとめ : なんか、超「ティール」だ。

この本、読むたびになんか既視感みたいなものがあって、何でだろうと思ったら、並行して読んでた「ティール組織」と似た趣旨のことがたくさん書いてあるんですね。

メンバー同士に階層がなく公平である、情報の非対称性をなくす、自立した意思決定を促す、合わなければ組織を離れる… など、ティール組織とNetflixにはかなり多くの共通点があります。

「NETFLIXの最強人事戦略」を読んでる限りでは、「ティール組織」という言葉は書籍の中に1つも見つけられなかったのですが、言語化されてなくても、そういう組織文化がトレンドとなりつつあることの表れかと思って震えました。

ただ、2冊とも読んでも、正直まだ日本企業にティール文化が定着するイメージが全然湧いてません。まずは自分の周りの小さい組織で運用してみて、部分的に適用していくしかないんですかね…
どんどん人材が流動的になる時代において役立つことは間違いない組織の作り方だと思うので、うまく取り入れてブラッシュアップしていきたいところです。


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