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神戸からのデジタルヘルスレポート #18 (Omnicure/wellbrain/Qventus/Breakthrough Behavioral/CompactCath)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを毎週数社紹介するマガジンシリーズです。

今回は第18回です!
今回も元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. OmniCure:クラウドeICU

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企業名:OmniCure
URL:www.omnicuremd.com/
設立年・所在地:2013、オランダ
直近ラウンド:Seed(2017年9月)
調達金額:$300k

日本に限らず世界的に高齢化が進む中で、患者数もおなじように増加の一途をたどっています。そんな中で、医療費の増加、医師・看護師の人手不足が病院運営の大きな課題になっています。こうしたなか、IoTなどを使った遠隔医療システムが米国などでどんどん成長しています。

その中でも、ICU(集中治療室)は遠隔医療のなかでも特に注目度が高く、"eICU"として実効性のあるソリューションになるのでは大きく期待されています。日本でも、専門医による遠隔集中治療ソリューションを提供するT-ICUさんが今年7月末に約1.4億円の資金調達を行ったことが大きなニュースになりました。
(芦屋が本社、神戸にも拠点を持っていらっしゃるスタートアップなので、遠くから一方的に応援しています...!!)

このeICUシステムをクラウドで提供しているのが、今回ご紹介するオランダのスタートアップ・OmniCureです。

ICUに入れ込むシステム、というと大型のハードウェアをイメージしがちですが、OmniCureが必要とするのはスマホやタブレット、ウェアラブルデバイスのみとシンプルです。課金の仕組みはベット単位で大型の初期投資もいらない。最低限の設備・投資で、24時間365日、リモートでintensivist(集中治療医)をチームにアサインすることができます。(Intensivistなんじゃい?という方はこちらの資料をどうぞ)

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日本でいうと地方や離島等、集中治療医の確保が難しい病院ほど強いニーズがありそう。T-ICUさんが直近の資金リリースの中で書かれているICUの現状を読むと、いかに状況が切迫したものであるかが伝わってきます。

【日本の集中治療の現状】
救急搬送後応急処置が行われ容体が一旦安定した患者様や、大きな手術を受けた後の患者様など重症患者の予後を管理する集中治療室は、全国で約1,100あります。1,100室の内、約300室には5人から10人の集中治療専門医が在籍していると言われていますが、残りの800室には専門医が在籍していません。その理由の一つが、日本に約32万人いる医師の中で、集中治療専門医は0.5%、約1,700人と数が少ないことが挙げられます。

とはいえ、アメリカでもeICUを導入している病院は現状全体の1割程度に留まっています。医療リソースの最適配分が強く求められるなかで、今後どんどん伸びていく領域だと感じました。

2. WellBrain:慢性疼痛コントロール

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企業名:WellBrain
URL:www.wellbrain.io/
設立年・所在地:2015年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Venture Round(2019年6月)
調達金額:$788k~(StartUp Health, Launchpad Digital Health)

慢性疼痛(Chronic Pain)とは、

治癒に要すると予測される時間を超えて持続する. 痛み、あるいは進行性の非がん性疾患に関連する痛み

と定義されています。整形外科系の疾患や手術後の痛み、帯状疱疹や糖尿病に関連する神経障害性疼痛など様々な要因で生まれ、患者さんや周囲の方のQOLを大きく減少させてしまいます。少し古い調査ですが、2004年の研究では国内の慢性疼痛保有率は13.4%、1,700万人が対象と言われています

そんな慢性疼痛に対して、継続的な評価とマインドフルネスを組み合わせてその改善を支援しようとしているのがWellBrainです。
基本となる構造は、患者側がWellBrainのアプリを通じて痛みの度合いや精神状態を週次でレポートし、その情報が医療施設側にも共有されること。さらに、自宅療養期間中にも瞑想・メディテーションなどを実施することを奨励し、その様子もモニタリングしています。

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結果として、13%の患者ではオピエート(鎮静剤)の使用量減少が認められ、31%の患者は身体的痛みが1/3以上減少したと報告しています。素敵なアウトカム。

WellBrainの創業チームはHarvard、Stanford、Mayo Clinicの医療者チームが中心となり、そこにMITの神経科学者や仏教僧を巻き込むことでプロダクトを作り上げています。強い。同社のミッションはシンプルかつ明快で「あなたと患者を助け、人類を助ける」こと。かっこいい。

オピオイドの問題がこれだけ大きくなっている中で、WellBrainのようなアプローチをとる企業・施設も増えていくのかもしれません。

3. Qventus:AIによる病院運用効率改善

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企業名:Qventus
URL:www.qventus.com
設立年・所在地:2012年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Series B(2018年5月)
調達金額:$45.3m(Y Combinator、New York Presbyterian Ventures、StartXなど

「Simplifying Healthcare Operations(病院のオペレーションをシンプルに)」そんな真っ直ぐなミッションのために、AIによる病院運営効率改善プロダクトを提供するスタートアップがQventusです。

Journal of the American Medical Associationの調査によると、米国の医療業界は毎年1,400億ドルが非効率的な内部業務管理のために無駄に使われているとのこと。下記の動画の中でも触れられていますが、病院のオペレーションは全体として整然としていつつも、細かいカオスにあふれています。それを患者行動の明確なフロー化とAIによる予測で不確実性を少しでも下げ、オペレーション改善を図ろう、というのはQventusの思想。

Qventusは過去のデータを解析し、これからどのような患者が来院するか、どのようなインシデントが発生するかなどを事前に予測します。それに合わせたワークフローを提案し、整理します。その対象は病院全体のOperation Systemに加え、救急、入院、手術など個別の要素にも適用可能。

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Qventusのソリューション導入によって、病院側でも成果も着実に出ている模様。業務改善系は、こういうアウトカムの明示がとにかく大事ですね。

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これもやっぱりMDがFounder&CEOなのかなーと思ったら、Mudit Gargはまさかのエンジニア→Stanford MBA&Mckinsey→起業というハイパー人材でした。なんとなんと。。。

4. Breakthrough Behavioral:メンタルケア特化型遠隔治療

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企業名:Breakthrough Behavioral
URL:www.breakthrough.com/
設立年・所在地:2009年・サンフランシスコ
直近ラウンド:M&A by MDLIVE(2014年11月)
調達金額:$11.7M before M&A(Social Capital、Morado Venturesなど)

2009年からメンタルヘルス領域でのオンラインセラピープログラムを提供してきたのがこのBreakthrough Behavioralです。思い切った社名ですね。
1,000名以上のセラピストや精神科医が登録しており、うつ病やPTSDなどの患者さんが望ましい相手を選んでオンラインでセラピーを受けることができます。利用者のうち8割が改善徴候を示し、MAU3万人。立派な数字ですね。

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2014年には、MDLIVEという大手遠隔診療サービスベンダーに買収されています。プラットフォームとしては規模が重要なので、買収によって規模が拡大するのは患者さんにとってもセラピスト・医療者にとっても良いことでしょうね。

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日本はストレス大国と呼ばれており、うつ病の生涯有病率は6.2%とされています。とはいえ、精神科を受診する人は多くなく、病名がつかない状態で生活をされている潜在患者さんも相当数いらっしゃるはず。精神科のクリニックのドアを叩くことにある心理的なハードルについて、オンラインサービスを通じてハードルを下げることができれば、日本全体のストレス度も下がっていくのかもしれません。

5. CompactCath:コンパクトな尿道カテーテル

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企業名:Compact Cath
URL:www.compactcath.com/
設立年・所在地:2009年・サンフランシスコ
直近ラウンド:M&A
調達金額:XX

尿道カテーテルは、膀胱にたまった尿を排出するために利用される製品。CompactCathは、コンパクトで使いやすい尿道カテーテルを開発・提供しているスタートアップです。Webpageを開くと「私たちの最高のカテーテルサンプルをどうぞ!」画面が最初に出てきますよ。

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具体的なベネフィットとしては、

- パッケージからすぐに使用可能
- 抗菌性があることが知られているシリコーンオイルで事前に潤滑されています
- ポケットサイズのパッケージに収まる最小のフルレングスカテーテル

あたり。コマーシャルも放映しているようです。

デジタルという文脈から少し離れてしまいましたが、医療者・患者のUXをまっすぐに見据えて良いプロダクトを提供しようとするスタンスが素晴らしいなと感じ、ご紹介しました。

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こんな感じで、第18回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)

応援ありがとうございます!