神戸からのデジタルヘルスレポート #89(COVID-19対策)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
2021年12月末に#88を出してから四ヶ月ほど。
2022年は、まず1回分COVID-19対策系のサービスを紹介し、その後は2021年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信で、合計15回ほどお届けする予定です!
1. euverita:モバイル検査
euveritaは、在宅で色々な検査が受けられる出張検査サービスを提供しています。スマホで予約すると、自宅やオフィスまで下のような検査カーがキットや検体を回収しに来てくれるそうです。当日予約も可能で、結果が出るまで20分というスピーディーさ。
提供している検査のラインナップは以下。コロナ以外にもFDA承認の各種検査が受けられます。金額は検査項目にもよりますが$50~$150ほど。
Covid-19
インフルエンザ
連鎖球菌検査(呼吸器検査)
UTI尿検査(尿路感染症の検査)
検査結果次第で、医師の訪問診療や遠隔診療を受けるオプションもあるようで、わざわざ出向かなくとも「病院グレード」の検査が受けられると謳っています。
現在はミネソタ州とウィスコンシン州の一部でサービスを展開中です。2021年11月からは企業を提携し従業員向けにコロナ検査プログラムを提供するとのこと。
創業者の1人でCEO兼CMOのGeoffGorresは、その道20年以上の元救急医で、米海軍の訓練を受け感染症分野の特許も取得している人です。
ちなみに創業当初はDHS(Decisive Healthcare Solutions)という社名でスタートし、2021年8月に現在の名称euveritaへ変更しています。
2. Testasy:リモートコロナ検査&QR証明
Testasyは、在宅で出来るCovid-19検査を提供しています。検査結果だけでなく、遠隔医療相談や陰性の場合のQR証明書も受け取ることができます。スイスの医療技術企業GobiX(Testasyの親会社)とBiolytix AG(微生物学的水質検査から製薬業界向けの遺伝子発現研究までラボサービスを展開)、薬局チェーンDr.の共同プロジェクトとして発足しました。
スイスを拠点としたスタートアップで、2021年10月からはパートナーラボであるBiolytix AGと協力してバーゼル地域限定で遠隔でのPCR検査サービスの提供を始めています。いずれスイス全土、ヨーロッパへ拡大を見越しているようです。(2021/10/1のプレスリリースより↓)
提供しているCovid-19の検査は、抗原検査とPCR検査の2種類で、いずれもオンラインから検査キットを注文し、キット到着後にビデオ通話で医療者の監督のもと検体を自分で採取するしくみです。採取した検体はパートナー薬局へ持ち込み or 提携している宅配便で集荷してもらえます。抗原検査は30分、PCR検査のほうは4~12時間以内に結果が送られてきます。
創業メンバーは、3Dプリント技術を活用した診断分野のツールを開発しているMedTech企業GobiXのCEOであり医師であるMichel Bieleckiと元マッキンゼーのビジネスアナリストであるJeyla Sadikovaです。CEOのMichelはAIアプリケーションのスペシャリストでもあります。
GobiXではCovid-19検査用の綿棒や唾液採取用チューブも開発しており、コロナコンサルティングも展開しています。
3. certify.health:デジタル証明書
certify.healthは、スウェーデンを拠点にヨーロッパで”Certify.health”という個人向け健康アプリと医療専門家向けのデータ管理プラットフォームを提供しています。
ちょっと話は逸れますが、同社が所属しているスタートアップグループ「Sting(Stockholm Innovation & Growth)」はスウェーデン最大のスタートアップインキュベーターで、政府系スタートアップデベロッパーでもあります。スウェーデンは政府がスタートアップの支援に積極的で、世界では珍しくスウェーデン政府自体がスタートアップ育成を目的に組織を立ち上げ、全面的に支援しています。2002年から大学・企業・ストックホルム市をはじめとした公的機関とが協業して発足しています。
certify.healthは、そんなStingのいち企業として2020年から発足した、医療検査を提供する企業です。サービスの詳細は以下です。
Certify.healthアプリ(個人向け)
検査や予防接種の予約が可能、検査後に公式署名付き証明書が届く
EU DCC証明書(EU版デジタルCovid-19証明書)の発行が可能
公的機関からの法的要件とガイドラインに厳密に準拠
Certify.healthポータル(医療専門家向け)
ユーザーの予約(検査又は予防接種)と記録データ管理
セキュリティ保護された証明書の発行(結果アップロードの際に医師が署名可能)
国立公衆衛生研究所およびその他の当局からのガイドラインを常に厳守
4. Oxsed:オックスフォード大発・ウイルスRNA検査
感染症研究の世界的リーダーであるオックスフォード大学が設立した、Covid-19検査特化の企業です。従来のCovid-19検査の精度とコストの高さに疑問を呈していた同大学の研究者らが、20ポンド(約25米ドル)以下の費用で実施できる検査を開発するために創業しました。
2020年4月の設立後、ウイルスRNA検査(名称:Oxsed RaViD Direct SARS-CoV-2 Test)を開発。同年10月末には英国企業DNAFitに買収されています。
【従来のCovid-19検査】
PCR検査:検体の温度の上げ下げを繰り返すことで、ウイルスの中にあるRNAを増幅し、感染の有無を判断。専用の機器が必要。
抗原検査:ウイルスを構成しているタンパク質などの「抗原」を検出する検査、無症状の方からの検出が難しい。
抗体検査:ウイルスに感染した際に体内で作られる「抗体」を検出する検査、抗体は感染から1~2週間後に検出される。
【Oxsed RaViD Direct SARS-CoV-2 Test】
ウイルス内の遺伝物質. (RNA)を検出する、という意味ではPCR検査と同じですが、工程がシンプルで専用機器不要(試薬のみ)である点が特徴です。
RT-LAMPテクノロジー:PCR検査のような検体の温度の上げ下げの繰り返しや専用機器を使用する必要なし
口または鼻の綿棒・唾液からサンプルを採取し、試薬入り試験管に移すだけ
試験管を65°Cで30分間加熱し、試薬の色の変化で結果判定
本検査はRAEng President's Special Awardも受賞しています。大学のスピンオフなので開発から受賞、買収までになんと半年かかっていないそう。
5. Doglabs:コロナ探知犬を有するR&Dスタートアップ
Doglabsはウイルスやバクテリアの特定・診断のための研究開発を行うR&Dスタートアップで、コロナを探知できる探知犬を扱っている興味深い企業です。
下の動画にも出てくる訓練犬は、コロナ患者の汗から分泌される揮発性有機化合物を嗅ぎ分けられるんだそうで、95%正確であることが証明されています。1~2秒で検出可能なうえに無症状者でも判別できると。
かなりの精度でPCRよりも速く検出できる、と2020年9月にフィンランドのヘルシンキ空港で導入が始まってます。
2021年3月にはタイでも。
同社は他にも病気の生体検出で犬を活用する研究をしています。癌探知犬の研究も進めている模様。
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