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神戸からのデジタルヘルスレポート #22 (i-vitae/Motognosis Labs/Nocturne/RAMPmedical/Uvisio)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回はその第22回です。
元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます!

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1. i-vitae:不妊症の女性の自然妊娠を支援するプラットフォーム

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企業名:INNOVITAS VITAE S.R.L
URL:https://www.i-vitae.co/en/
設立年・所在地:2014年・イタリア
直近ラウンド:Seed(2016年1月)
調達金額:N/A(Startupbootcamp Digital Health Berlin)

日本にいるとあまり触れることのないイタリアのスタートアップです。取り組むテーマは、不妊症。

不妊症は、出産可能年齢の女性の30〜40%に影響を及ぼすと推定されています。同社が開発した「I-VITAE」は、生殖補助医療(体外受精などの不妊治療のこと)を回避し、自然に妊娠できるようにするプログラムを提供することにより、不妊症の女性が母親になることを支援しています。

i-vitaeでは、静脈血から4つのバイオマーカーの値を測定し、その存在有無を診断します。この4つのバイオマーカーは、不妊症の場合に存在することが知られており、妊娠障害の原因または原因の1つである可能性があるとされています。その後、検査結果をもとにプログラムやオーガニックサプリメントが提供され、自然妊娠が出来るよう支援してくれます。

料金は、199ユーロ(約24,000円)で、検査や検査後の電話相談までフォローしてくれます。利用者の声として、3回受胎がうまくいかなかった人も、「I-VITAE」を利用して自然妊娠が出来たという声が報告されています。

既存の不妊治療は、痛みが伴うだけでなく、長期間で精神的につらいものであると友人から聞きます。世界中の女性、家族をもっと自由に。すばらしいプロジェクトです。

ちなみに、Hubspotの成功事例としても取り上げられていました...

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2. Motognosis:神経疾患患者の運動機能障害分析システム

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企業名:Motognosis
URL:http://www.motognosis.com/
設立年・所在地:2014年、独ベルリン
直近ラウンド:Seed(2017年11月)
調達金額:N/A(Startupbootcamp Digital Health Berlin)

1のi-vitaeに続き、こちらもStartupbootcamp Digital Health Berlinの参加スタートアップ。Webが独特...

Motognosisは、最新のモーション分析テクノロジーを用いて、神経疾患に影響される運動機能について50以上の包括的な評価セットを提供しています。同社の製品の運動機能の評価は、多発性硬化症、脳卒中、パーキンソン病、その他多くの神経疾患などの一般的な障害を幅広くカバーしています。
これにより、以前は専用の運動機能評価が出来る病院施設にアクセスできなかった、多くの入院患者、外来患者、および在宅において、詳細な運動機能の評価・分析が可能になり、診断および治療モニタリングの大幅な改善につながります。

画像を見る限り、システム構成としてはKinectと処理能力が一定あるPC+ソフトウェアで構成されている模様。日本でも、大学・大学院の研究でもできそうな内容だ...!! リハビリ系のチームさん、ぜひ...!!

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今までは、医師による主観的な評価のみでしたが、同製品を使用することで3D画像として患者の運動機能を補足することができ、より正確な運動評価が可能になります。ただ動きを分析するだけではなく、その技術を在宅など様々なシーンで誰でも使えるようにしているところがさらに素晴らしいなと感じます。

3. Nocturne:網膜画像解析による神経障害診断

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企業名:Nocturne GmbH
URL:http://nocturne.one/
設立年・所在地:2018年・独ベルリン
直近ラウンド:Seed(2018年7月)
調達金額:€71.4k~(Startupbootcamp Digital Health Berlin、EASMEなど)

3番目もStartupbootcamp Digital Health Berlinから。
欧州は診断機器に対する保険償還が厳しくなっています(特に独仏)が、それでもこういうプロダクトがたくさん出てくるのがすばらしい...!!

Nocturneは、網膜の3D画像解析を通じて神経障害の診断を支援します。目の網膜は、直接評価することのできる唯一の脳部位です。網膜を評価することで、疾患によって引き起こされる脳の変化を直接評価することができます。

同製品は、光干渉断層法(OCT)のデータを用いて評価を行います。OCTとは、眼科で日常的に使用されている非侵襲的画像技術です。非専門医がNocturneなどを活用することで、臨床結果に対する早期治療反応において、関連する神経疾患の治療決定が迅速化されることでしょう。

プロセスとしては、現場では撮影のみで撮影画像はクラウド上で解析され、レポートとして戻されるという仕掛けのよう。どれくらいのタイムラインなんでしょう。30分以内でできるのならすばらしいな...

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神経学的評価は、正確に実行しようとすると時間もお金も必要です。同製品で簡易的に評価を行い問題があれば大病院での精密検査を進めるという風に、スクリーニングツールとしての活用方法もありそう。
正確性が劣っていたとしても、迅速検査で一定のスクリーニングができれば医療経済的にはバリューがあります。ぜひ広がってほしいプロダクト。

4. RAMPmedical:2型糖尿病における最適治療決定支援

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企業名:RAMPmedical
URL:http://www.rampmedical.com/
設立年・所在地:2015年・独ベルリン
直近ラウンド:Seed(2018年7月)
調達金額:N/A(Startupbootcamp Digital Health Berlin)

さらにStartupbootcamp Digital Health Berlinから。調達時期を見ると、Nocturneと同じバッチですね。

RAMPmedicalは、2型糖尿病患者の最適な科学的治療の決定を支援するためのウェブアプリです。現在の治療ガイドラインと医学研究を分析し、医師が情報を理解して間違いを避けることができるように提示します。

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やっていることは以下の2つ。

Step1. 危険な治療法を除外:
患者データから副作用の大きい治療や薬を除外してくれます。患者情報(年齢、性別、併存疾患、血液値、妊娠、授乳、ライフスタイル)からも禁忌となる治療法を除外してくれます。

Step2. 治療法を一目で比較し選択:
提示された薬物療法と非薬物療法という異なる種類の療法を比較できます。
医師が患者データを入力する時間は15〜45秒と短く、入力した患者の診断結果や治療は自動的に保存され、誰でも閲覧できるようになります。

上記の意思決定によってどのようなアウトカムが得られたのかについても正確な評価をシステム上で実行します。

良いなと思ったのは、オンライン利用と、EHRと連動した院内イントラ利用それぞれが選べること。こういうシステム的な配慮、医療現場的にとても大切です。

癌領域でも同様の意思決定支援プロダクトをよく見ます(過去記事でも紹介した気がする)
医師・医療者も完全な人間ではないことを、私たちは認識すべきです。彼らが働きやすくなるような環境を整えること、大切。

5. Uvisio:日焼け防止ソリューション

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企業名:Uvisio
URL:https://uvisio.com/
設立年・所在地:2017年・オランダ
直近ラウンド:Seed(2018年7月)
調達金額:N/A(Startupbootcamp Digital Health Berlin、SmartWare.tech)

今日はもうStartupbootcamp Digital Health Berlin推しで。オランダのスタートアップです。上で紹介してきた企業とはだいぶ経路が違って、Uvisioが提供するのは日焼け防止プロダクト。

どんなふうに使うかというと、まずは個々人の肌状態をアプリを用いてチェックします。その後利用している日焼け止めを登録した上で、日々の紫外線暴露記録を↑の画像の中にあるクリップを用いて行います。この小型クリップにはUV線量計が組み込まれていて、1日の個々の太陽への露出を測定し、1日の最大暴露量を超える前に警告してくれます。

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同社代表・Larisa Kryuchkovaによると、皮膚がんの90%は太陽光への暴露との関連が認められるとのこと。そのため子供も大人も、紫外線曝露量をコントロールし、適切な日焼け止めを選択することで、そのような疾患を減らすことができると。

日光を浴びることはビタミンDの生成や骨の増強のために不可欠ですが、一方で紫外線暴露による皮膚がんのリスクも高くなります。Uvisioを使用することは単に日焼け防止だけではなく、将来のリスクをコントロールしたい子供・若年層を中心に重要なプロダクトだと感じました。

Uvisioはアプリ単独でも提供しており、こちらは無料。Uvisioクリップのお値段は39ユーロ(約5000円)とお手頃です。軽く小さいので、服にぱっとつけられるのもいいですね。

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こんな感じで、第22回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)

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