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神戸からのデジタルヘルスレポート #19 (foc.us/EpiBiome/QueueDr/AMICOMED)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを毎週数社紹介するマガジンシリーズです。

今回はその第19回です!
今回も元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. foc.us:経頭蓋直流電気刺激(tDCS)ヘッドセット

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企業名:foc.us
URL:https://foc.us/
設立年・所在地:2012年、ロンドン
直近ラウンド:Seed(2013年2月)
調達金額:N/A(HAX、SOSV)

transcranial Direct Current Stimulation(経頭蓋直流電気刺激、略称:tDCS)。日本語でも英語でもさっぱりわからない謎の電気刺激。これを簡単に説明すると、電極を用いて頭皮の上から軽い直流電流を流して脳の部位を刺激すること。

そうすることでどんないいことが起こりうるのかと言いますと、認知能力の分野で脳の能力を向上させることができるのです。つまり『脳のドーピング』。胡散臭い匂いぷんぷんしますが、DARPAでも大真面目に研究されているテーマで、特許取得がされていたりする有望領域です。日本でも、理化学研究所などからtDCSに関する研究発表がされています。

そんな一見SFのような技術をゲームのヘッドセットと組み合わせて開発しているのがこのfoc.usというスタートアップです。同社のWebにアクセスすると、ファーストビューが↓。

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なんというプロダクトファースト感。まずは開発者向けにいろいろ部材を出して、事例を作りながら進めていこうとしているのかもしれませんね...

浜松医科大学では、リハビリ分野へのtDCSへの応用も研究されています
脳ハック、注目です。

2. EPIBIOME:AMRと戦う機械学習+CRISPR技術スタートアップ

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企業名:EpiBiome
URL:https://www.locus-bio.com/
設立年・所在地:2013年、サンフランシスコ
直近ラウンド:M&A by Locus Biosciences(2018年7月)
調達金額:$7.1m before M&A(illumina Acceleratorなど)

抗生物質耐性菌(薬剤耐性菌、AMR: antimicrobial resistance)と呼ばれる、抗生物質が効かない菌が注目を浴びています。この菌が広がると医療現場で使われる様々な治療法が用いることができなくなり、現状些細な疾患や症状とされるものでも、命の危機に繋がる可能性があります。このAMRは大変恐ろしく、2016年の伊勢志摩サミットでもひとつの議題として提示され、核戦争やAIの暴走といった人類滅亡のシナリオと並んで語られる甚大リスクの1つとなっています。

そんなAMRと戦うヒーローが、このスタートアップ・EpiBiomeです。このスタートアップは「抗生物質耐性菌に作用するファージと呼ばれる細菌撃退物」を発見するための発見する機械学習技術を開発・提供しています。また高度なゲノム編集技術(CRISPR)ももっており、バイオテクノロジーの一線を走ってると言えるでしょう。

同社は2018年7月、CRISPRベースの抗菌製品を開発しているLocus Bioscienceにより買収をされています。買収時のプレスリリースで同社CEOのPaul Garofoloは、

EpiBiome built the world's most effective automated platform for finding novel therapeutic phages.(中略)
Adding this high-throughput screening, genomics, and bioinformatics platform to the front end of our synthetic biology pipeline significantly accelerates our engineering of new phage products targeting specific bacterial populations, reducing the time to IND for new programs to as little as 12 months. We also expect to complete clinical development in less than half the time of traditional antibiotics.

と、製品開発サイクルの加速を期待する声明を出しています。

マイクロソフトの創業者であるビルゲイツは言っています。「いま私がやるならゲノム編集やバイオテクノロジーの分野だ」と。このスタートアップはまさにその技術の王道を進んでいるように見えます。
普段生活しているだけでは見えてこないが深刻なリスクに対して、真摯に向き合い技術開発をすすめるチームには、尊敬の念しかありません。

3. QueueDr:患者待ち時間最適化スケジューリング

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企業名:QueueDr
URL:https://queuedr.com/
設立年・所在地:2013年、サンフランシスコ
直近ラウンド:Series A(2016年9月)
調達金額:$1.2m(500 Startups、Launchpad Digital Healthなど)

翻って、一般庶民の私たちにもわかりやすいプロダクトを。

予約の突然のキャンセル。日本では飲食店や航空券、ライブチケット等があり、それらに対するソリューションも徐々に出てきています。USではもう一歩進んで、医療機関のキャンセルに対するソリューションが登場してきています。その一つがこのQueueDrです。

QueueDrの基本機能は患者の予約管理機能。しかし彼らが提供する面白い機能は、患者が予約をキャンセルした時に現れます。キャンセルがWeb上で実行されると、自動で予約を希望する可能性のある類似の患者を特定し、自動メッセージを送ります。これによってで80%のキャンセル充填率を誇っているようです。↓動画の0:25あたりから紹介されているもの。


同社のサービスを通じて、年間10万時間分以上の医療機関内事務作業が削減できているとのこと。Waiting Listへの登録もできるし、細かい調整もスマホのSMS経由でできてしまう。すばらしい。

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日本ではやっとキャンセルに対するソリューションが出始めたくらいですが、QueueDrが創業したのは2013年。米国のスタートアップをTTP(徹底的にパクる)して日本で事業を始めるのは、まだまだありうる選択肢なのかもしれません。

4. AMICOMED:血圧管理プラットフォーム

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企業名:AMICOMED
URL:https://www.amicomed.us/core/landing/
設立年・所在地:2012年、サンフランシスコ
直近ラウンド:Seed(2018年2月)
調達金額:$1.5m(Launchpad Digital Health、iStarterなど)

米国疾病対策センターによると、7000万人のアメリカ人成人が高血圧を患っており、その中で適切な血圧管理を実行している人は半分に満たないと言われています。高血圧自体には明らかな自覚症状はありませんが、放置すれば脳卒中や心臓病、視力障害などの生命を脅かす重篤な疾患を引き起こす可能性もある危険な健康状態です。(日本にも高血圧患者は4,300万人いると言われており、人口対比でいうとアメリカよりもよっぽど深刻な状態...)

高血圧に対して、個別にパーソナライズされたライフスタイルプログラムを提供することで改善することを目指すのがこのスタートアップ、AMICOMEDです。

約90日間で構成される矯正プログラムは、ダイエット、運動プログラム、血圧測定スケジュールや教育コンテンツが含まれています。基本となる血圧のトラッキングから、実行内容に応じたプログラム変更及びコーチングにより、参加者は最大~20mmHgの血圧低下効果を獲得したとのこと。"医師推奨の"と彼らが謳うというのも納得です。

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先日、ポケモンGoが全世界で2兆円の医療費削減効果を生み出した、という記事が出ていました。糖尿病や高血圧などの生活習慣病はこれまで薬による治療が行われてきましたが、IT・デジタル領域の知見も入ってくれば、より効果的な治療・改善がなされていくかもしれませんね。

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こんな感じで、第19回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)

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