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神戸からのデジタルヘルスレポート #8 (Cora/ Flatiron Health/ Tricog Health/AEvice Health/SwipeSence)

Cobe Associe代表の田中です。

7月最後の週に、デジタルヘルスレポートの第8回です!
今回も元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます!
(今回の短めになるように努力しました...しかし4千字あるので、好きな企業から見てみてください)

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1. Cora:生理用品D2C

企業名:Cora
URL:cora.life
設立年・所在地:2015年、サンフランシスコ
直近ラウンド:Series A(2019年4月、$7.5m)
調達金額:$13.5m(Harbinger Venturesなど)

生理用品のサブスクリプションを提供する同社。
Crunchbaseに取り上げられている会社紹介も短く、かつパワフル。

Organic tampons, elegant accessories, convenient delivery, and period products to girls in need for every box sold.

人気のある製品は
・軽いとき~重いときまで様々なシーン向けのタンポンや生理中の下着などが届くプラン
・生理用パッドがたくさん届くプラン
・タンポンとパッドがセットで届くプラン
などで、どれも月15ドル(~1,700円)で利用可能。
タンポン24個で16ドルというのはややお高めで、米国では50個入りのセットが9ドルほどで購入できるのが一般的とのこと。

しかし同社は継続的に成長を遂げており、年率400%で成長しているとのこと。直近この4月に資金調達をしており、TechCrunchでも"Femtech’s billion-dollar year"のタイトルでその資金調達を伝えています。

この会社が素敵なのは、製品の販売数に応じて生理用パッドを途上国の女性たちに届けていることで、↑の記事によると同社はこれまでインドとケニアの女性に対して500万個の生理用パッドを寄付しており、米国でも10万個の製品を寄付しているとのこと。

Founder & Chief Brand Officerを務めるMolly Haywardを含めて、取締役の80%が女性の同社。Femtech自体も伸びているので、これからもがんがんいきそう。

2. Flatiron Health:癌研究特化型ソフトウェア提供

企業名:Flatiron Health
URL:flatiron.com
設立年・所在地:2012年・ニューヨーク
直近ラウンド:M&A by Roche(2018年2月、$1.9b
調達金額:$313m(GV、a16z、Rocheなど)

腫瘍に特化した情報プラットフォームを提供しているのが、このFlatiron Healthです。がん患者、及びがん治療に関わる医療従事者向けに様々な製品を展開していて、

・OncoEMR:癌に特化したEHR(電子健康記録)でワークフローを明示
・OncoBilling:患者への請求管理の自動化
・OncoAnalytics:患者状態やクリニックの資金繰りなどをダッシュボード化
・OncoTrials:臨床試験対象患者の探索・スクリーニングなどの支援

などの製品を扱っています。

主力プロダクトであるOncoEMRは、医療IT専門の調査会社・KLAS Researchによる調査で最高レベルの顧客満足度を達成したようで、そのユーザビリティにも自信ありと。臨床現場での薬剤選択などの意思決定支援から、様々なデバイスからのデータ自動取得などの機能も充実していて、癌に特化することでシンプルで最適なUXを実現できています。

Rocheに買収はされたものの、あくまで独立した法人格を持って運営を続けていっています。
EMRのデータを製薬会社がみちゃえる、とかいかにも大変そうですし...

Founderの1人、Nat Turnerは医療業界の出身ではなく、直近ではアドテクスタートアップのInvite Mediaの共同創業者・CEOとして活躍し同社を2010年にGoogleへと売却しています。その前にはFirst Round Capitalで30以上の会社への投資に関わっており、その中にはユニコーンとなったOscarをはじめ、Bell Biosystems、Clover Health、Color Genomics、Doctor Evidence、Gravie、Notable Labs、Quartet Healthなどが含まれていたとのこと。
投資家としての視点ががつっと活きた典型例ですね。素敵。

3. Tricog Health:心電図D2D連携&機械学習解析

企業名:Tricog Health
URL:www.tricog.com
設立年・所在地:2014年・シンガポール/インド
直近ラウンド:Series A (2018年1月、$4m)
調達金額:$4.5m(UTEC、Blume Venture、Inventus Capital Partnersなど)

循環器系の疾患は死因のなかでも常に上位にあり、年間の死亡者数は1,770万人にのぼるとされています(2015年)。日本においても脳卒中・心疾患は総死亡の30%以上を占める重大な疾患のうちの1つです。

Tricog HealthのFounder/CEOのCharit Bhograjはインドで循環器の医師として働く中で、多くの患者がて近接な治療を受けるまでに時間がかかってしまうことに危機意識を覚えたとのこと。インドだけでも毎年5万人が心臓発作に苦しんでおり、うち3万人が命を落とします。なんという数字か。

そこで彼は、"Insta ECG"という心電図の解析サービスをはじめました。各医療施設で心電図(ECG)を取るとそれがTricog提携医師のところにデータが共有され、その評価レポートが届くと。よくいうD2D(Doctor to Doctor)連携ですね。

これまで150万以上の心電図を取扱、200以上の心疾患を検知。現在の導入施設数は1,300箇所以上にのぼります。社内外に30名程度の循環器系の専門医を抱えており、さらにはAI・機械学習技術も活用することで、スピード感のある診断・情報提供を可能にしています。
診断結果はSMSやアプリ経由でも閲覧可能とのことで、医療情報の取り扱いどうしているんだろうと興味津々...

ビジョンもまた素敵でした。

Tricog's vision is to change the 80% chance that a heart attack will take one’s life, to an 80% chance that the patient survives

ぜひ成功してほしい、社会インパクトの大きいスタートアップです。

4. AEvice Health:子どもの呼吸器疾患モニタリング

企業名:AEvice Health
URL:www.airesone.com
設立年・所在地:2016年、シンガポール
直近ラウンド:Seed(2017年12月、$375k)
調達金額:$820k(Enterprise Singaporeなど)

↑の画像にあるくまちゃん型のもの"AireSone Junior"が、AEvice Healthが提供している3歳以上のこども向けのウェアラブルデバイスになります。このデバイスは心拍数と子どもの呼吸、睡眠品質をトラッキングし、アプリ経由でその情報を保護者や医師の手元に届けることが可能です。

モニタリングデバイスとして、
・心拍数や呼吸のデータを用いて状態をスコア化
・リアルタイムでデータをフォローし、状態が急変したときに通知送信
・家族が確認したデータをかかりつけ医師に瞬時に共有可能
といった機能を持っています。シンプルだからこそパワフル。

デバイス自体も防水加工がなされており、かつデータの解析技術についても特許化済みとのこと。すてき。
現在約3,000名が購入のためにWaiting Listに登録されており、9月からいよいよ出荷とのこと。期待を持って待っておきましょう。

寝てる間にも負担なく計測できるのは素敵ですなぁ。
自分も小さいとき喘息持ちだったようなので、これがあれば両親がもっと楽できただろうなぁと妄想。技術は着実に前進している。

5. SwipeSence:院内感染防止ネットワーク

企業名:SwipeSence
URL:www.swipesense.com
設立年・所在地:2012年・シカゴ
直近ラウンド:Series B(2017年12月、$10.6m)
調達金額:$27m(Eclipese Ventures、TEXO Ventures)

病気を治しに病院に行っているのに、逆に病院で別の病気をもらってきてしまう。そんな事態が現実に起きています。
米国のthe Centers for Disease Control and Preventionによると、年間200万人以上が病院内で何かしらの感染症に罹患し、結果として10万人以上が死亡、ヘルスケアシステムに対する金銭的負担は年間300億ドルにもなると推計されています。

SwipeSenceが取り組んでいるのは、病院内の衛生環境の改善。
病院内に張り巡らせたクラウドベースのセンサーネットワークを通じて、各部署・スタッフごとの手指衛生状態を可視化します。さらにSwipeSence内のCustomer Successチームが各病院での環境改善・文化変革のための支援を行うと。

SwipeSense導入後12ヶ月で手指衛生コンプライアンスの遵守度は192%増加し、さらに院内での各種感染症は49%も低下したとのこと。
すごいインパクトだ。。

Crunchbaseをみていると、各資金調達ラウンドでリードを取っているEclipese Venturesをはじめ同じVCが何回もラウンドに参加していて、期待度が高いんだろうなぁということを感じました。

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こんな感じで、第8回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)

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