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神戸からのデジタルヘルスレポート #88 (2021年最後の一本)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回から2回続けて、なかなかジャンルの切り分けが難しかったんだけど素敵だったスタートアップをご紹介です。2021年最終回です!

1. Care.coach:アバターによる慢性疾患管理支援

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企業名:Care.coach
URL:http://care.coach/
設立年・所在地:2015年・ミルブレー/カリフォルニア
直近ラウンド:Grant(2021年4月)
調達金額:N/A

Crunchbaseより

Care.coachは、デジタル空間上で患者とアバターとの関係を構築することで慢性疾患の自己管理を改善するサービスを。全米20以上の州で利用されており、数千に及ぶケアのプロトコルの中から患者に最適なプランを提示します。

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スマホやタブレット経由で、デジタル空間上のアバターから投薬や運動、食事のリマインダーがなされたり、そこで得られた活動データを用いて疾患の状態管理や医療チームとの遠隔診療等に繋げることも出来ます。↓が紹介動画なんですが、「人間みたいに話しちゃうのよ~」と言っているおばちゃんもいて、可能性を感じました…!!

アウトカムとして、病院では転倒とせん妄を80%以上削減することに成功しているようで、在宅での利用では、病院への入院・再入院、不必要な救急科への受診を回避するツールとして期待が高まっています。こういう領域は、日本のチームも強そうですよね…!!

2. Astarte Medical:NICUにいる未熟児転帰をサポート

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企業名:Astarte Medical
URL:http://www.astartemedical.com/
設立年・所在地:2016年・ヤードリー/ペンシルベニア
直近ラウンド:Series A(2021年9月)
調達金額:$16.4M

Crunchbaseより

Astarte Medicalは、未熟児として生まれNICUにはいっている赤ちゃんが、できる限り安全に、かつ早いタイミングで退院したり、お母さんに元に戻ることが出来るようにするためのデジタルツールを開発しています。早産児の状態をリアルタイムで病院・臨床チームに連携することを基本に、早産児の腸の健康を定量化することで治療計画をカスタマイズする機能も搭載。腸なんだ…!! 詳しくは下の動画に。

受胎から2歳までの人生の最初の1,000日は、脳、体、代謝、免疫系の発達にとって最も重要な時期とされており、この期間の過ごし方によっては、下記のようなリスクが顕在化すると言われています。

・成長障害が発生するリスク
・アレルギー、肥満、喘息を発症するリスク
・発達遅延、発達障害を生じるリスク

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早産時のケアにあたるNICUは、以下のような課題を抱えていると言われています。
・医師間での経験差
・リアルタイムでのデータ連携が限定的
・早産児の腸の状態について標準化された尺度が未整備

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Astarte Medicalが提供するNICUtrition Equitable Care Intelligence(ECI)は、初期1,000日間の経腸栄養プロトコルを統合し、母親と赤ちゃんの状態をデータ化。栄養状態と成長関連データのダッシュボードを作成・可視化することで、臨床医療従事者の意思決定を支援します。

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2021年7月には急性期病院であるSt. Bernards Hospitalとサービス導入の契約を締結。現場での活用を通じてプロダクトが更に磨き込まれ、更に色んな場所で活用されていく未来になると素敵ですね。

3. Somni:睡眠健康プログラムの提供

企業名:Somni
URL:https://www.puresomni.com/
設立年・所在地:2014年・マディソン/ウィスコンシン
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Crunchbaseより

Somniは、ウェアラブルなどを活用し、睡眠データ取得・睡眠教育・コーチング・各種ツールをユーザー毎に組み合わせて個別の睡眠健康プログラムを提供しています。睡眠の質を30%以上改善することができる、とも。どんなものなのかみてみましょう。

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創業者のMatt Bergは、睡眠が健康に及ぼす影響を知り同社を起業、最近は遺伝子検査との組み合わせにも取り組んでいる模様です。彼のPodcast音声もあるので、ぜひ聴いてみてください。タイトルは "Correcting Broken Sleep"(壊れてしまった睡眠を正す)、いいですね、まっすぐだ。

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4.Spiras Health:慢性疾患患者向け在宅治療ソリューション

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企業名:Spiras Health
URL:http://spirashealth.com/
設立年・所在地:2015年・ブレントウッド/テネシー
直近ラウンド:Series B(2021年6月)
調達金額:$15M

Crunchbaseより

Spiras Healthは、COPD、うっ血性心不全、腎臓病、高血圧等の慢性疾患を持つ患者が救急搬送されることを防ぐ・減らすための在宅治療ソリューションを提供しています。独自開発している予測モデルを通じて、事前に発症可能性が高い患者を特定しておき、担当している医療者に早期からの介入を促します。患者本人にとっても、彼らの保険支払をカバーする保険会社/起業にとってもベネフィットの大きなサービスですね。

フォローアップの訪問数も週1~、月1回、数か月に1回等、必要に応じて設計が可能。患者は24時間年中無休でケアチームに連絡をすることができ、相談や質問ができるようになっています。

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コロナ禍で多くの患者が在宅治療・診療に移行する中で、Spirasは2020年単年で利用患者数が2倍に跳ね上がりました。同時に契約している保険企業も増加しているため、良い成長サイクルに入ったように見えます。

現在のCEO、Scott Bowersは元々政府系の医療チームで勤務してきた経験を持ち、かつ保険大手のUnitedHealthで地域社長を務めたこともあることから、保険戦略などにも精通しています。成長するにつれて、このような医療版プロ経営者がスタートアップに参画する例をよく見ます。これが米国のヘルスケア/メディカルスタートアップ、という感じがしますね。。

5. Ruth Clinic:麻薬依存患者への治療支援・遠隔処方

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企業名:Ruth Clinic
URL:http://www.ruthclinic.com/
設立年・所在地:2018年・コロンビア
直近ラウンド:Seed(2019年5月)
調達金額:$150K

Crunchbaseより

デジタルヘルススタートアップというよりも実際の医療機関ですが、社会問題との繋がりも深いのでこちらを…!!

Ruth Clinicは、米国でここ数年大きな問題となり続けているオピオイド依存症・乱用障害からの回復支援を専門としたクリニックで、カウンセリング・各種サポートサービス+依存性の低い薬物治療を組み合わせたMedication-Assisted Treatment(MAT)を提供しています。

遠隔治療にも対応しており、薬は配達が可能。

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Ruth Clinicの運営チームは依存症ケアを専門とする医師とセラピストの女性2名体制。Sarah Motorny, DOは中毒医学の認定を受けている医師。依存症治療を専門としており、家庭医学の理事会認定も受けているそうです。
Tamara Robinson, LADACは、認可を受けたアルコールおよび薬物中毒カウンセラーです。麻薬裁判所のコーディネーターという肩書も持っているとのこと。まさに専門家ですね。

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いかがでしたでしょうか?マガジン内の他のデジタルヘルス記事も、ぜひお手すきで見てみてください。

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