神戸からのデジタルヘルスレポート #75 (治療のデジタル化 2/4)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
今回は治療プロセスのデジタル化に貢献するサービスをいくつかご紹介していきます。
1. Learning To Sleep:CBT(認知行動療法)技術を用いたデジタル睡眠治療
Learning To Sleepは、Webおよびモバイルデバイスを介して、睡眠障害のある人向けに、CBT(認知行動療法)で科学的に証明された方法と技術を用いた睡眠改善プログラムを提供しています。詳しくは動画を。
CBTは心理学の原則に基づいて思考パターンと行動の相互作用を明らかにします。創設者でセラピストのPeterBoyeは、このCBTを用いて睡眠の問題を治療する3つの方法を構築し用いています。↓のように書かれているんですが個人的にはまだ抽象度が高く、もう一段深く理解したいところ…しかしCBT的なアプローチ、好きです。
①安定した睡眠パターンを構築する睡眠時間設計
②眠れない要因、心配事・不安に対しての向き合い方、受容力の練習
③睡眠に作用するようにベッドからの刺激の追加
利用方法は、まず最初に①睡眠テストを実施し電話でのヒアリングを受け、5週間のプログラム(毎週心理学者たちのサポートフィードバック)を受ける形で進みます。全てリモートで受けることが可能。
いいですね。シンプル。
コロナ禍で睡眠に課題を持つ人が増えたという報告もあり、こういうサービスが広がって、少しでも多くの人がよく眠れるようになればと願っています。(弊社のビジョンは “Work well, Sleep Well“です)
2. Feel:リストバンドとアプリによる不安・鬱症者への継続的モニタリング・ケア
Feelは、不安や鬱に苦しんでいる人へ向けに、継続的なモニタリングとパーソナライズされたケアを行う、デジタルバイオマーカーとしてのリストバンドとアプリを提供しています。
Feel Emotion Sensorを搭載したリストバンドにより皮膚電気反応をモニターで患者の感情の動きを読み取り記録します。そして、アプリを通してメンタルヘルス改善のプログラムの提供(オンラインセッションやアドバイス)を行います。なんというか、Fitbit感。最初のプロダクトはCES2016年に登場しており、メディアでも注目されていました。
プログラム内容は2種類で、
Feel Program: 16週間のメンタルヘルスプログラム。長期のストレスや不安などを抱えている人向き。保険会社または勤務している会社を通してのみ利用可能
Feel Relief Program: 4週間のメンタルウェルネスプログラム。日々のアクティビティを等してストレスを減らす手助けや、自分でマネジメントする手助けをする。$50/週
です。週50ドルをどう評価するか。企業経由で利用するのが一般的なんですかね。皆保険の日本だとなかなかない(成功しづらい)マネタイズパターンな気も。
3. 慢性疼痛管理のマインドフルネスプログラム
ellaは、マインドフルネスプログラムを活用して痛みを管理するソリューションを、オンラインで提供している企業です。ユーザーは、このプラグラムを通して、患者が慢性的な痛みを管理するための脳の訓練を行います。約2ヶ月程かけてマインドフルネスプログラムを実施していきます。
プログラム例はこんな感じ。基本的なチェクインをして、オンラインセッションでマインドフルネスになれるフェーズ1から、実際にプログラムを実行していくフェーズ3まで(フェーズ2はどこにいったのだろう)
米国の拠点を見ると「Cedars-Sinai Innovation Space」となっていて、臨床現場とがっつり結びついて事業を考えている感じがします。痛みはQOLに大きく影響する要素、期待大です。
4. Hinge Halth:疼痛・頭痛緩和ウェアラブル
Hinge Healthが買収したENSOは、薬や手術なしで筋骨格痛へ対処し痛みを除去するウェアラブルを提供しています。投薬のような中毒性がなく、非侵襲かつ即時の痛み緩和を可能とします。HINGEとして今年10月にシリーズE+セカンダリーマーケットでの資金調達を行っており、累計調達金額は10億ドル超です。
従来の痛みを除去する高周波パルスデバイスでは、これまで外科的移植が必要とされてきました。また、投薬で痛みを除去する薬物療法では依存性の問題が指摘されてきました。Hinge Healthは、非侵襲的な電気神経刺激を用いて、痛みを緩和させる低周波インパルスを促進するため、外科的な侵襲性リスクや薬物療法の依存性リスクもありません。
薬物療法で問題となっているオピオイド投薬を極力減らし、痛みを軽減することにも同社は貢献しています。またアウトカムとして「痛みを56%即時緩和」「33%の身体能力改善」「ポジティブな反応が9-10と好成績」とのことで、患者さんからすると素晴らしい改善ですね。
企業としては現在評価額30億ドル。来年のIPOに向けて突っ走っているようです。
5. 難聴と補聴器障害の原因である耳垢除去デバイス
Clear Earは、難聴と補聴器障害の原因であるセメン(別名耳垢)を除去する機器OTO-TIPを開発している企業です。4,700万人のアメリカ人と世界3億5,000万人を超える患者へソリューションを届けることを目指します。
Oto-Tipの特許取得済みのスパイラルスピンテクノロジーは、従来の綿棒による耳掃除のリスク(鼓膜の損傷、ワックスの蓄積、感染、閉塞、さらには部分的な難聴のリスクの増加)を回避し、安全で効果的かつ簡単な毎日の耳掃除に最適とされています。
リモートで多くなったオンライン会議で多用するイヤホンもリスクがあるんですね。身近にリスクは潜んでいる模様。価格は$49~と比較的お手頃です。イヤホン経由でのオンラインミーティングが続いている方はぜひ。
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