見出し画像

神戸からのデジタルヘルスレポート #104 (バイオテクノロジー)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

2022年7月に#103を出してから1年超…
今年は全20回で、2022年創業のデジタルヘルス系スタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信を予定しています。ぜひマガジン登録してね!

第1回のテーマは、「バイオテクノロジー」です。


1. Areteia Therapeutics:喘息経口薬

企業名:Areteia Therapeutics
URL:https://areteiatx.com/home
設立年・所在地:2022年・ニューヨーク(米国)
直近ラウンド:Series A
調達金額:$350M

Areteia Therapeutics は、好酸球性喘息のための経口薬を開発しているバイオテクノロジー企業です。現在、同社では第Ⅲ相開発プログラムが進行中であり、市場リリースに向けて開発中の状況だそうです。

出所:Company Presentation(JP Morgan Healthcare Conference Jan 2023)

同社が経口薬開発を進める喘息は、世界中に2億5000万人の潜在患者がおり、年間50万人が死亡しています。現在は吸入器および生物製剤(注射)が中心で、多くの患者の喘息を完全にコントロールできず、有効性が低下している状況です。 現在開発中の経口薬は、生物学的製剤に匹敵する効果を持ち、治療のパラダイムを変えるだろうと期待されています。

▼好酸球が損傷を引き起こす前に、好酸球の成熟を阻害し、血液を通って肺に移動するのを防ぐ

出所:https://areteiatx.com/our-science#a-new-approach
開発中の経口薬

▼現在の開発フェーズ

出所:https://areteiatx.com/our-science#a-new-approach

<市場の状況>

  • 重度の好酸球性喘息を患っている米国およびEUの患者は推定300万人

  • 米国の重度の喘息患者の半数は、少なくとも年に1回は入院しており、医療システムの直接費用は推定$210億にのぼる

  • 喘息用生物製剤市場は現在70億ドル、2026年には110億ドルに成長が見込まれている

※現在吸入器および生物学的製剤(効果的であるはずが10人に1人未満の導入に留まる)に匹敵する効果を持つ経口剤が、治療のパラダイムを変えるだろうと期待されている

出所:Company Presentation(JP Morgan Healthcare Conference Jan 2023)

2. ArrePath:薬剤耐性感染症(AMR)

企業名:ArrePath
URL:https://arrepath.com/
設立年・所在地:2022年・プリンストン(米国)
直近ラウンド:Seed
調達金額:$20M

ArrePathは、薬剤耐性感染症 (AMR)*の世界的な健康問題に取り組んでいるバイオテクノロジー企業です。新しい化学物質にさらされたときの細菌の複雑な挙動を解読することにより(細菌解剖といいます)、新たな効果のある抗生物質の発見および開発を可能とするプラットフォームを開発しています。

*薬剤耐性感染症(AMR)=抗菌薬に対して耐性がつき、抗菌薬が効かない感染症

疾病管理予防センターによると、米国では毎年280万件以上の抗生物質耐性感染症が発生し、その結果35,000人以上が死亡していると報告されています。 今後、対策を講じなければ、2050年までにAMR死亡者数が毎年1,000万人にまで膨れ上がる可能性があると推定されています。

▼参考:2019年の分析レポート

前述の薬剤耐性感染症(AMR)の増加を止めるための開発・研究に取り組んでいるのが取り組んでいるのが、ArrePathです。そのために同社がアプローチとして進めているのが「抗感染薬の発見における機械学習と画像技術の統合」です。

  1. 標準的な増殖阻害アッセイを使用するのではなく、多次元表現型スクリーニング、プロテオミクス、ゲノミクスに基づく技術と非常に詳細なデータ「ランドスケープ」の機械学習を利用した分析と統合することで、複雑な生物学と細菌の部検を解読する

  2. プロテオミクスおよびゲノミクス技術と組み合わせた多次元表現型シグネチャーの詳細な分析で、薬剤耐性の細菌を特定。 ※特定できることで、抗菌活性の原因を定義できるようになる

  3. 細胞がどのように死んだかを理解することで、薬剤耐性感染症(AMR)に対応できる新しい化合物の作用メカニズムと開発を実現できるようになる。

出所:https://arrepath.com/platform/


3.Navignostics:がん治療薬の開発

企業名:Navignostics
URL:https://www.navignostics.com/
設立年・所在地:2022年・チューリッヒ(スイス)
直近ラウンド:Seed
調達金額:CHF*8.5M
*CHF=スイスフラン

Navignosticsは、人工知能 (AI) 駆動のソフトウェアを使用し、単一細胞で分解された空間プロテオミクス腫瘍データ(研究者が腫瘍で発現するタンパク質のマップを作成できるようにする技術)と組み合わせて、各がん患者に最適な治療法を特定するバイオテクノロジー企業です。
毎年新しい抗がん剤が市場に投入されていますが、どの患者に最も効果があるかを知ることは困難な状況です。従来の方法では、特定の薬物標的をチェックしたり、特定の変異についてゲノムをスクリーニングしたりして、腫瘍サンプルを分析することができるものの、どの薬がどの腫瘍に効果的なのかを特定するまでには至っていません。

<同社の空間シーケンスの特徴および現在の開発状況>

  • がんゲノミクスと同様に多くの異なるマーカーを同時に測定できる上、タンパク質のレベルで直接測定できる

  • 現在、同社はチューリッヒ大学病院の研究者と協力して、転移性結腸直腸癌患者に対する最良の第一選択療法を特定できる空間バイオマーカー シグネチャを開発中

  • 精密腫瘍治療を開発しているバイオテクノロジー パートナーに医薬品開発サービスを提供する予定

このような空間シーケンスは、腫瘍が発現している遺伝子やタンパク質だけでなく、それらが腫瘍内のどこにあるかを発見する能力を提供する新しい分野といわれています。

出所:Navignostics maps tumor proteomes to improve precision oncology

<同社の空間シーケンスの内容>

  • 腫瘍を特徴づけるたんぱく質を検出

  • 腫瘍の分子組成の高解像度デジタル画像で検出したたんぱく質を特定

  • 単細胞タンパク質の発現から細胞の種類、細胞の相互作用やアセンブリに至るまで、豊富な腫瘍の特徴を抽出

  • 物に反応する可能性のある患者とそうでない患者を区別・分析

出所:https://www.navignostics.com/

4.Visiox:眼科治療薬

企業名:Visiox
URL:https://www.visioxpharma.com/
設立年・所在地:2022年・タリータウン(米国)
直近ラウンド:Seed
調達金額:$7M

Visiox Pharmaは、手術による治療が多い眼科疾患に対応するため、眼科治療薬の開発を行うバイオテクノロジー企業です。
現在、白内障摘出術は、米国で最も頻繁に行われる眼科手術であり、全眼科手術の70%を占めているそうです。米国では2050年までに5,000万人が白内障になると予測されています。
Visioxは、白内障手術の満たされていないニーズに対処するために、バイオテクノロジーの技術を用いた創薬の開発に取り組んでいます。

出所:Visiox Pharma announces FDA acceptance of glaucoma new drug application

<現在、同社で開発が進んでいる製品>

  • PDP-716(主力製品) 眼圧症および開放隅角緑内障のための薬。1日1回投与。FDAにて2023年8月4日に受理。

  • SDN-037 術後の炎症と痛みのための薬。1日2回局所投与。2036年まで特許保護されている同社の独自技術を利用。

出所:https://www.visioxpharma.com/

5.Shantai Health:免疫微生物医学×腸内細菌

企業名:Shantai Health
URL:http://www.shanxingshengwu.com/
設立年・所在地:2022年・江西省(中国)
直近ラウンド:Series A
調達金額:N/A

Shantai Healthは、中国における免疫微生物医学のプロバイダーです。腸内細菌叢、HPV ウイルス除去、100周年記念プロバイオティクス、腫瘍免疫療法、アンチエイジング、免疫機能制御などを対象とした、免疫学とミクロ生態学の分野で、画期的な医療イノベーションを開発することに取り組んでいます。

<主な研究対象:腸内フローラ>
会長である王京蘇氏が中国科学技術大学高等研究院、済南大学生物医用転化研究院と共同で実験室を育成・推進した「腸内フローラ産業化プロジェクト」をはじまりとして、新しい医療技術の統合、開発、促進に取り組んでいます。 同社の腸内細菌プロジェクトは、「大規模な集団スクリーニング、標準化された腸内細菌の調製、および健康な腸内細菌の腸内コーティングされたカプセル」などの技術により、業界で主導的な地位を維持しており、消化器系疾患、腫瘍、肝性脳症、新しい冠状肺炎のリハビリテーションの治療において、優れた治療効果を達成している状況です。

出所:http://www.shanxingshengwu.com/service.php?id=26

腸内フローラを改善させるためのサプリメントとして、「プロバイオティクス*製品」を開発・販売もしております。
*ビフィズス菌や乳酸菌など人の腸に存在する善玉菌

また、同社のニュースリリースでは、うんちが新型コロナウイルス感染症を治し、感染者の回復を助けることが証明された、とする臨床研究も発表されています。


応援ありがとうございます!