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神戸からのデジタルヘルスレポート #1 (Nutrafol / AgileMD / Bodyport / MyClinicalPro / koekoetech)

ここ数年来、デジタルヘルスが盛り上がっています。ATカーニーJETROがレポートをだしたり、ヘルスケアメディアの大御所・Answer newsさんもDRGのデジタルヘルストレンドを翻訳されていたりします。

わたしもいまいくつかデジタルヘルス関連のプロジェクトに関わっていて、インターンの子たちと一緒に、国内外のデジタルヘルススタートアップをリサーチして知見をためていっています。日々勉強。

その中で、おもしろいなぁと思ったスタートアップ事例をご紹介します。網羅性はちょっと...ですが、RockHealthだったりヘルスケアアクセラレーターのポートフォリオだったり、TechCrunchに登場したスタートアップだったりをひろって、深掘りしてます。また、欧米の事例だけではなく、アジアの事例もたくさん扱いたいなと思っています。

毎週更新していくぞ!いざ第1回!

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1. Nutrafol:処方箋なしで購入可能なヘア増強サプリ

企業名:Nutrafol
URL:nutrafol.com/products.html
設立年・所在地:2014年・ニューヨーク
直近ラウンド:シリーズB(2019年4月)
調達金額:$35m

"Hair Wellness"を提唱する2016年設立のスタートアップで、毛髪の成長を促進するパーソナライズされた発毛サプリメントを提供してます。

毛髪関連の悩み(Hair loss)をもつアメリカ人は8千万人にのぼり、推定市場規模は35億ドル。調達資金の1/3を研究開発投資に振り向けており、科学的な根拠に基づくマーケティング・ブランディングの確立を進めています。
2019年1月に1億ドルを調達しユニコーンとなった男性向け総合ウェルネスD2CブランドHimsは処方薬を中心に事業展開しているものの、Nutrafolはサプリメント市場にフォーカスしているところが差分。(FDAは今年1月に怪しげなサプリメント市場にメスを入れると発表

CEOはもともとファッションモデルだったGiorgos Tsetisで、彼は21歳のときに自身の毛髪が薄くなってきたことに気づき様々な処方薬を飲んだものの状況は改善せず、一方で様々な副作用に苦しんだとのこと。「毛髪関連でFDAに認可された薬は2種類しかなく、この分野には1988年以来イノベーションが起きていない」とメディアに語りました。

現在、米国内のヘアサロンやクリニック1,300箇所以上で展開されており、顧客の75%は中高年層の女性。売上は毎年3倍になるペースで成長しているとのことです。Amazonのレビューでは最高評価と最低評価が混在している一方、2018年に行われたthe Ablon Institute of Researchが主導する臨床試験では80%の女性が「著しい改善(“significant improvement”)があった」とされています。

2. AgileMD:最新・正確な医療情報プラットフォーム

企業名:AgileMD
URL:www.agilemd.com/
設立年・所在地:2011年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Seed(2012年6月)
調達金額:$2m

もともとは医学書などを無料で読むことができる医療系情報アプリでしたが、現在は電子カルテ(EHR)やモバイルアプリと連携したクラウドベースでの臨床ケア支援のプロダクトを通じて、医療者が正しい治療プロトコルやケア知識にスムーズにアクセスすることを支援しています。

シカゴ大学メディカルセンターやスタンフォード大学、UCSFなどと連携しながら正確でかつ最新の医療情報を保持することに注力し、350超の病院・5万人を超える医療者に使われるモバイルアプリケーションサービスへと成長しました。

ヘルスケア領域の有力アクセラレーター・Rock HealthやY-Combinatorの2011年夏バッチに参加するなど、2010年代初頭にかなり勢いがあったデジタルヘルススタートアップなんですが、ここ最近はニュースがなく、どうなっているんだろうなぁという感じです。
日本でも電カルデータの活用や医療者向けの支援ツールを開発するスタートアップがぽこぽこあるという認識なんですが、はて、米国ではどうなんでしょうかね...

医療版Instagramとして医学生教育に貢献しているfigure1はじめ、医療者向けのサービスは様々可能性があると思っていますです、はい。

3. Bodyport:心臓病リスクを算出するスマート体重計

企業名:Bodyport
URL:www.bodyport.com
設立年・所在地:2014年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Seed(2016年2月)
調達金額:$2.5m

Y Combinatorの2015年夏バッチに参加したハードウェア企業。創業者のSarah Smith及びCorey CentenはBodyportの創業前に、救急救命士が行う心肺蘇生法をアシストするプロダクトを開発するスタートアップ(Atreo Medical)を運営しており、同社は2010年に医療機器企業・Medtronic社に買収された経験を持つ。

Bodyportが開発するスマート体重計は、心臓病に繋がりうる兆候(血圧、心拍数、心拍変動など)を足の裏から読み解くために各種センサーを設置。計測は20秒ほどで完了し、他になんのデバイスもいらない(腕に巻いたり、何かを握ったりもしなくていい)。この負担の少なさから心疾患の既往歴のある人や高血圧患者のリモートモニタリングに活用したい、とBodyport代表のCoreyさん。↓がHIMSS(Health IT Conference)2019でのインタビュー動画。

以前循環器内科の先生とお話をしたときに、「喧嘩をモニタリングするという意味で、一つだけ指標をみるなら血圧よりも体重」とおっしゃっていて、スマート体重計はヘルスケアIoTとして筋が良いんじゃないかと思っているです。

4. MyClinicalPro: 印尼・美容クリニック向けCRM

企業名:MyClinicalPro
URL:www.myclinicalpro.com/
設立年・所在地:2016年・インドネシア
直近ラウンド:シリーズA
調達金額:$150k

ここまではアメリカの事例でしたが、ここから突然東南アジアです。↑のスクリーンショットも元々はインドネシア語。Google翻訳の賜物...ありがとう。

MyClinicalProは美容クリニック向けのCRMツールをSaaS形式で提供しています。無料プランでもPOS連動の予約機能、従業員・顧客のプロフィール登録、基本的な日次売上レポートの抽出が可能です。
月々25万ルピア(約1,900円)のスタータープランでは部屋予約機能や在庫・資金管理などの経営支援機能が、50万ルピア(約3,800円)のアクセラレートプランでは更に施術者や顧客ごとのスケジューリング、購買管理、電子カルテ機能などが利用可能になります。

各美容クリニックでの利用データを蓄積しており、美容業界におけるビッグデータとして活用することを企図しているようです。利用の方針としては
・美容クリニックの運営コスト削減
・顧客エンゲージメントの改善
・顧客の意思決定支援及びデータアクセスの担保
など、個々のクリニックの経営支援的な側面が強いですね。

日本だと美容医療SNS・Meilyトリビューなどユーザー側のサービスが目に付きますが、美容クリニック向け支援か、なるほどという感じです。
経済成長著しいインドネシアですから、美容整形を含めた美容クリニック領域はあつくなるだろうなと、入念ウォッチです。

5. koekoetech:国を良くするソフトウェア企業

企業名:koekoetech
URL:www.koekoetech.com/
設立年・所在地:ミャンマー
直近ラウンド:
調達金額:

いとこ同士で設立した、ミャンマーの「IT Social」企業。ミャンマー系アメリカ人のMichael LwinはワシントンDCでの企業弁護士、Yar Zar Minn Htooは医師でありソフトウェアエンジニア。なんだこの家系。そんな二人が共同創業者として立ち上げた企業がこのkoekoetech。
2018年8月時点で55名の従業員がおり、うち70%が女性。

企業ホームページのトップにある「Software to improve Myanmar」のメッセージがシンプルかつパワフルで最高に素敵。扱っているのも医療系だけではなく、基本的な法務・行政系のシステム開発(受託?)も行っているとのこと。ミャンマーを良くするITシステムであれば何でもやる、くらいの勢いでしょうか。

彼らが提供しているサービスの一つが、妊娠中の女性・母親に対してヘルスケア情報を提供するモバイルアプリ・maymay。ミャンマー版ママリ、的なことでしょうか。言葉が全く読めない...

さらにはHMIS(Health Management Information System)として、医療機関における情報管理を行うためのITツールを提供。簡易版電子カルテが最も近いイメージでしょうか。

↓がチーム・HMISの紹介動画。ユーザー課題から出発している感じがして高感度高いです。このように言い切る姿勢、かっこいい。

We will provide low-cost, easy-to-use healthcare software developed by local Myanmar people for local Myanmar people.

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デジタルヘルスレポートをまとめるマガジンもはじめましたのでぜひふぉろーのほど◎
こんな感じで、第1回でした。ぜひまた第2回もお楽しみに!

by Cobe Associeインターンチーム(多田、藤田、森元、松田、橋爪、大場)+田中


応援ありがとうございます!