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神戸からのデジタルヘルスレポート #16 (ONCOASSIST/Quietyme/Visonable/Mediteo/Mammoth Biosciences)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを毎週数社紹介するマガジンシリーズです。

今回はその第16回です!
今回も元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. ONCOassist:がん治療医師向け診断支援

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企業名:Portable Medical Technology
URL:oncoassist.com/、http://portablemedicaltechnology.com/
設立年・所在地:2011年・ロンドン
直近ラウンド:Seed(2013年1月)
調達金額:N/A

ロンドン拠点のPortable Medical Technologyのメインプロダクトが、腫瘍治療を専門とした医療従事者のための意思決定支援アプリのONCOassistです。このアプリは、創業者のEoin O'CarrollとKevin Bamburyが、University College Corkのe-Business修士課程の卒業プロジェクトとして着手されたのが始まりです。こういう形で始まる素晴らしい製品がある、というのはなんというか心の支えになりますね。。

アプリの機能としては以下があります。
・乳がん、肺がん、大腸がんにおける診察支援ツール
・薬物の相互作用確認ツール
・すべての悪性腫瘍におけるAJCC基準(腫瘍の悪性度の基準)、病気分類、有害事象、毒性基準に関する情報アクセス
・臨床試験の適格性の決定に役立つ一連の予後ツール

医療従事者が診察や処方決定をする上で、「あれ、あれどうだったっけ?」となりそうなものがすべてこのアプリ内に収納されていて、最短時間で提供する医療の質を向上させることができます。さらに、患者に優しい治療に関する情報を提供してくれるため、医療従事者はだけでなく患者にとっても心強い味方となってくれるはずです。がん治療ではどんどん新しい薬剤が出てくるのでガイドラインのアップデートも頻繁で、そんな中でいつでも腫瘍治療に関する最新情報へのアクセスを可能にするこういうアプリケーションの必要性は高いんだと感じています。

大学院の卒業プロジェクトから始まったこのプロダクト。
わたしも、小さくてもいいので何か前向きなプロジェクトに取り組んでみよう、と思わせてくれる素晴らしい製品だなと感じます。

2. Quietyme:快眠支援・環境情報センサー

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企業名:Quietyme
URL:www.quietyme.com/
設立年・所在地:2012年・ウィスコンシン/ネシュコロ
直近ラウンド:Venture Round(2016年5月)
調達金額:$2.4m(Healthbox、American Family Venturesなど)

QUIETYMEは、騒音や湿度などの環境に関するデータを収集・解析し、そのデータに基づいたレポートやアラームをフィードバックしてくれるセンサーです。↑の画像にある通り、カバーしているのは騒音、温度、湿度、そして明るさです。

使い方としては病院の静かな環境を構築する、ビルのアセット管理を最適化するための温度・湿度を維持する、学校やモールなどで騒動・暴動などを早期検知する、など。音と明るさ、温度湿度が取れれば、たしかに様々なことが見えてきそう。病院の騒音、私もわかります、なんとなく不快なんですよね...

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素晴らしいのは、同社プロダクトを用いたエビデンスづくり・研究報告もしっかりと行っていること。下記がその一例です。
Noise and Sleep Among Adult Medical Inpatients: Far From a Quiet Night
Reducing Delirium in the ICU by Reducing Noise

ヘルスケアスタートアップとして、エビデンスをしっかり積み上げていく姿勢が素晴らしいです...!!

3. Visionable:ビデオコラボレーションツール@英国

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企業名:Visionable
URL:visionable.com/
設立年・所在地:2019年・ロンドン
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

先週に続き、NHS出身者が立ち上げたサービスのご紹介です。共同創業者のAlan LoweはロンドンのSt Mary’s Hospitalで医師として勤務した後にNHSに移り、そこでスタートアップなどとのサービス開発にチャレンジしています。NHS Englandで理事を務めたVictor Adebowaleなどと共にVisionableを創業し、広く活用されている次世代のビデオ会議と臨床イメージング機能を兼ね備えているシステムを開発・リリースしました。

Visionableを用いると、1人の患者に医療を提供する際、チームの一員が同じ場所にいなくてもビデオ会議を通じて情報を共有でき、本来遠隔で共有することが難しい画像や映像、臨床上のイメージを簡単に共有しながらミーティングを行うことができます。↓の画像のように、病理検査の結果も投影できるし、レントゲンも写せるし、CTも写せるし、バイタルもでるし、ともうなんでもありです。

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さらに、高画質、マルチカメラ機能、人数制限なし、データ制限なし、デバイスに依存しない、機能が豊富、シンプルで安全という特徴があり、NHSにおいて、広く使用されているのも納得です。どうやって構築しているんだ、このシステム...相当重いデータも扱うはずなのに...

NHSのような誰でも医療を受けることが出来るサービスだからこそ、それを支えるシステムが必要になります。このシステムがあれば、違う場所でも同じような治療を受けることができますし、様々な医療従事者を簡単につなげることができます。日本でも、離島や僻地医療でこういうプラットフォームが広がっていくといいな、と思いつつ。

4. Mediteo:服薬管理アシスタント

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企業名:Mediteo
URL:www.mediteo.com/en/
設立年・所在地:2015年・ドイツ
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

「Mediteo」は、患者の服薬管理を補助してくれる無料のアプリケーションです。このアプリの開発チームは医師が主導していて、患者のUXを踏まえてアドヒアランスを高める工夫が随所にあります。

まず飲む薬の登録は事前登録されたデータベースに登録するか、薬についているバーコードを読み込みます。こうすることで、誤登録の可能性を最小化します。また薬剤ごとの基本的な服薬スケジュールを提示しつつ、個々人の生活スタイルに合わせてリマインダーも調整できます。

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更に素晴らしいのは、近い薬効の薬が重複登録されるとアラートが出るポリファーマシー対応や、残薬が少なくなるとそれを通知する在庫切れアラートなども盛り込まれています。シンプルですが、必要な機能ですね。

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日本でもお薬手帳アプリがたくさん出ていますが、正直どれもUIがごちゃごちゃしていたりやたらタップが多い仕様だったりして、私でも使いこなすのが難しいものが多いです。しかも薬局ごとに別々だったりもして...まあお薬手帳なので仕方ないんですけど...

シンプルでかつ効果的なサービスが増えていくといいなぁと願いつつ。

5. Mammoth Biosciences:CRISPRによる疾患検出プラットフォーム

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企業名:Mammoth Biosciences
URL:www.mammothdiagnostics.com/
設立年・所在地:2017年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Series A(2018年6月)
調達金額:$24.6m(Mayfield Fund、NFX)

Mammoth Biosciencesは、DNA / RNAを使用してバイオマーカーや疾患を検知できる、世界初&唯一のCRISPR解析プラットフォームです。
CRISPRとは、獲得免疫(感染した病原体を特異的に見分け、それを記憶することで、同じ病原体に出会った時に効果的に病原体を排除できる仕組み)として機能していることが判明したDNA領域のことです。↓の動画によると、CRISPRをこのプラットフォームで解析することによって、病気を検出することが出来るということです。(間に過程がたくさんありますが、難しいので割愛します。。投下全般難しくて誰かにこのスタートアップの凄さを解説していただきたい...)

医療において使用する場合は、検査用紙をスマートフォンのカメラで撮影することでテストが実行されます。既存の他手法では検査機関にCRISPRの検体を送って解析して、と時間も費用がかかってしまいますが、この方法だと迅速で低価格な検出が可能になると。

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CRISPRは、人だけでなく、他の生き物や植物にも存在するため、同社のプラットフォームは以下のような分野にも活用されています。

・農業土壌微生物叢含有量、植物および動物病原体、作物の同定
・食料安全保障のための細菌およびウイルス汚染、種の特定
・特定の生物の検出と新興疾患への迅速な対応
・バイオテロリズムに使用される有害な生物学的因子と法医学的遺伝子型の検出

CRISPRは遺伝子編集の文脈でも注目されており、同社のような応用技術・プロダクトも含めて、今後さらに発展していくでしょう。
50年後の人類がどうなっているのか、現代の想像を大きく超えたところに着地していそうな気がします。

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こんな感じで、第16回でした。
noteマガジンに過去の回もまとめているので、ぜひぜひ購読してみてください:-)

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