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神戸からのデジタルヘルスレポート 特別回 #2 MEDICA参加スタートアップ

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回はその特別回です!先日アジヘルさんこと田中大地さんと一緒に、MEDICA報告会@神戸をさせていただいたんですが、、、↓

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そこで紹介されていた企業がとっても面白そうだったので、出展企業のいくつかをご紹介させていただこうと思っています!大地さんが現地で実際に視察しておもしろそう!と感じた企業も登場します。

●MEDICAとは
例年11月にドイツ・デュッセルドルフで開催される、世界最大級の医療機器展示会。5,000社以上の出展者が参加し、世界130カ国から12万人を超える参加者が訪れる。
https://medica.messe-dus.co.jp/home/

1. StethoMe:自宅で使用できるワイヤレス電子聴診器

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企業名:StethoMe
URL:https://stethome.com/
設立年・所在地:2015年・ポーランド/ポズナン
直近ラウンド:Seed(2017年8月)
調達金額:$4.2m(TDJ Pitango Ventures、National Center for Research and Developmentなど)

病院で診察を受けたとき必ず医師が行う聴診。何気なく行っているように見えますが、そこにはたくさんの情報がつまっています。「拍動のリズムはどうか」「心音はどうか」「呼吸音はどうか」「呼吸音の聞こえ方はどうか」など医師は数秒の聴診で、様々な情報を収集し、判断をしています。しかし、心音や呼吸音から状態を判断することは一般の人にはできるものではなく、専門的な知識・技術が必要になります。

そんな聴診の民主化を行おうとしているのが、ポーランドのスタートアップ・StethoMeが開発している電子聴診デバイスです。デバイスはこんなもの!聴診器の先だけ切り取ったようなデザイン。

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このデバイスを心臓にあてるだけで心音や心拍数、肺音、呼吸数を独自のAIが聞き取り、連携したクラウドに送信してくれます。また、瞬時にデータから健康状態を診断し医師に共有してくれるため、異常がある場合には即座に次のアクションを起こすことができます。

驚くのがその診断の正確性。百万以上のサウンドデータと数万のカルテデータに基づいたAIアルゴリズムを用いて、感染症や肺炎、喘息について専門家の聴診よりも29%も正確であるとのデータが出ています。すごい...
さらに追加の臨床研究を多数行っており、その詳細もホームページ上に公開されています。とても素敵なスタンスだと感じます。

CEマークは当然取得済み。プロダクトのデザインも素敵。。。

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遠隔・オンライン診断に使えますよ!というデバイスは多数ありますが、「コンタミどうなの?」「人によって結構制度にばらつきでそうじゃない?」というものも多いです。その中でStethoMeの心音・呼吸音へのフォーカスはデータとして興味深いなと。そしてプロダクトデザインがいい感じなのも最高です。日本でもシェアメディカルさんのハミングバードなど、デジタル聴診器がポツポツ出てきていますが、どこが世界をとっていくのか...

2. TytoCare:どこにいても医師と一緒に医療検査を行うことができるデバイス

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企業名:TytoCare
URL:https://www.tytocare.com/
設立年・所在地:2012年・ニューヨーク/イスラエル
直近ラウンド:Series C(2019年1月)
調達金額:$56.7m(Ping An Global Voyager Fund、伊藤忠商事など)

中国の遠隔診療・オンライン診療の文脈で日本でも有名な平安保険グループのファンドが出資したことで国内での知名度もぐっと上がったTytoCareも、MEDICAに出展していました。改めてになりますが、その事業・プロダクトをご紹介します。

同社の中心にあるのはTytoという検査キット・アプリです。アプリとデバイスがセットになっていて、デバイスの付属機器を変更することで様々なデータを自宅で確認することができます。心拍や呼吸音、耳内画像まで。汎用性の高さが素晴らしい。

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具体的にどんなプロダクトなのか、紹介動画をさっとご覧くださいませ。

あらためて、めっちゃいいなと。動画の中にあるように小児の領域で価値が出そう。日本でも....うまくいけば...

自宅での利用を想定しているTytoHomeの他、学校や企業などで様々な人と1台でチェックしていくシーン向けのTytoProや、医療者が利用するためのTytoClinic・TytoVisitなども提供されています。

平安保険からの出資・提携を通じて、またぐっと成長速度が上がりそうですね...!!

3. Higo:ポーランド発の小児用遠隔診療デバイス

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企業名:Higo Sense
URL:https://higosense.com/
設立年・所在地:2017年・ポーランド/ ワルシャワ
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

もう一つポーランド企業で、TytoCareと同じような方向性で戦うスタートアップ・Higoをご紹介します。デバイスを起点として、自宅での検査を可能にするという意味で、かなりTytoCareに近い製品特性かと思います。

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Higoは、自宅にいながら診断できる小児用遠隔診療デバイス。特徴はデバイスだけではなく、「撮影・依頼から1時間以内に医師からの診断が返ってくる」というスピード感。小児向けということもあり、お母さんの不安を和らげるための重要な要素として回答が得られるまでの速さがあるんでしょう。そこにまで拘れるのはとても素敵なこと。

さらに、もう一つの大きな特徴が検査できる項目の範囲の広さも。耳や咽頭、体温、肺音、心音、さらに皮膚状態や腹部まで検査することができます。これも本体への付属品を切り替えることで対応する形ですね。

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当該データを用いて遠隔診断を行う小児科医は同社ホームページ上で名前と略歴が紹介されています。ユーザーの信頼を高める仕掛けとして重要だ。
さらに、ホームページから依頼すると30日間無料で使用できるようになっています。大丈夫なのか....すごい自信だ...

当日大地さんもおっしゃっていましたが、ポーランドの製品は素敵なデザインの製品が多いですね!

4. Digitsole:自転車を漕ぐ動作を解析するインソール

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企業名:Digitsole
URL:https://www.digitsole.com/
設立年・所在地:2014年・フランス/ナンシー
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

医療系を少し離れて、スポーツ系のものもご紹介します。Digitsoleは、サイクリングやランニングのパフォーマンスを向上するための分析を行ってくれるインソール。インソール!

インソール自体に電子機器が組み込まれており、インソールへの圧や衝撃を分析し、専用のスマートフォンアプリにデータを送信してくれます。同じインソールで、ランニング・サイクリング双方の解析を行うことができます。

サイクリングにおけるペダリングは重要要素。悪い癖を続けるとケガにつながったり、パフォーマンスの低下につながります。
良いペダリングを行うために、どのような角度でペダルに力をかけているのか、両足のバランスはどうか、などなどこれまで専用の設備で計測が必要だったものが、このインソールを使えばどこでもデータ取得が可能になります。すごいぞ、Digitsole。

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ヘルステックというとどうしても小児や高齢者などによっていきますが、スポーツ系の外傷や怪我もケアすべき大切な対象です。
こういう製品、いいなぁ。

5. MedicSen:糖尿病患者の生活様式改善アプリ

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企業名:MedicSen
URL:https://www.medicsen.com/en/
設立年・所在地:2015年・スペイン/マドリード
直近ラウンド:Grant(2017年9月)
調達金額:$170k(TURN8、HotDesQ)

最後は糖尿病管理アプリを。
正直、デジタルヘルスのリサーチをしているとよく見ます、生活習慣病関連の管理アプリ。製薬会社さんから「こんなの作りたいんだよね!」というお話でも、自己管理系のアプリはよく出てくるアイディアの一つです。

そんな色々ある管理アプリの中でもMedicSenが面白いのは、単に過去の管理をするだけではなく、患者の「未来予測」をおこなうこと。同社独自の学習アルゴリズムを用いることで、最大1時間先のグルコース値を誤差10グルコースユニットで予測をし、それをもとに個別に食事計画やインスリン投与、運動を行う時間を推奨する機能を搭載しています。スペイン語ですが、製品を紹介した動画をどうぞ...!!イメージは掴めるかと。

この食事がいい、この運動がいいということは誰にでもいうことができますし、それを提示するだけではアプリ利用者の行動変容を導くことは難しいです。このMedicSenは過去データに基づく未来の状態をユーザーに提示し、それを踏まえた個別に計画を立ててくれるのが素晴らしいです。

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また、食事や運動に関する疑問はチャット形式で聞くことができるため、日常生活におけるサポートも整っています。さらに、挑戦してメダルを獲得し、報酬でポイントに変換できるなどのゲーム要素も含まれており、アドヒアランスを保つ工夫もされています。UI全般もいい感じや。

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MedicSenは次の展開として、携帯用無針注射器であるスマートパッチも開発しています。まだ、実験段階ですが、これが成功すれば、在宅での糖尿病管理は大きく変わるはずです。
単にアプリにとどまらず、糖尿病患者のジャーニー全般を見る企業にMedicSenのビジョンはとてつもない大きいですね...!!

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こんな感じで、MEDICA特別回でした。ヘルスケア系のイベントに合わせて特別回をリリースしていければと思います!
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