『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

2022年は、昨年2021年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信を予定しています！

今回はフェムテック、女性の健康をテーマに事業をしているスタートアップをご紹介します。

1. Prenome：妊娠糖尿病のリスク予測とケア

Prenomeは妊婦さんに特有の病気の危険因子を特定できるツールを開発している企業です。

特に妊娠糖尿病に重きを置いていて、独自に臨床研究を行っています。この研究はOneinSevenと冠した調査研究で、妊娠中の人の遺伝的特性と社会的要因・統計情報などを組み合わせて妊娠糖尿病のリスクを計算しスコア化しています。唾液ベースの遺伝子検査を行動アプリと組み合わせたもので、現在の80％のベースラインと比較して、90％の精度で妊娠糖尿病を正確に予測できるようになるそうです。

加えて大規模データセットとAIを活用することで、妊娠前または妊娠初期の段階で妊娠糖尿病になりやすい人を予測する仕組みで特許を取得しています。

妊婦さん向けにはリスク評価に基づいて食事計画などのコーチング、医療者向けには妊娠糖尿病のリスク予測ができるデータプラットフォームが近々利用できるようになります（正式なローンチはまだみたい）。
この予測技術は将来的に不妊症や多嚢胞性卵巣症候群などの関連する領域にも活用できるのでは、と期待されているそうです。

こちらの紹介動画・記事もぜひどうぞ↓

2. CorDiFio Health：AIで女性の心臓病を早期発見

CorDiFio HealthはAIを用いた女性の心臓病の早期検出に取り組んでいる企業です。
実は世界の死因トップはがんではなく結構ぶっちぎりで心臓病です。*　そして、心臓病の男性は胸の痛みを訴えるケースが多いのに対し、女性の症状は「胸周辺の違和感」であったり「少し苦しい感じ」などと形容されることが多く、不安やうつなどメンタル系の問題と誤診されたり、発作の兆候が見逃されてしまうケースが少なくないそう（一部の症状が似ているうえ、関連性もあるんだとか）。
*https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/the-top-10-causes-of-death

そこで同社は、女性特有の症状を周知し、健康状態や家族歴を入力することでリスクを割り出してくれるアプリを開発しています。この診断結果は医師に正しく伝えて誤診を防ぐためのコミュニケーション手段でもあるというところがミソ。

Cordifioは22年3月ごろにβ版を公開予定だそうです。ユーザー向けにはサブスク制、保険会社や雇用者向けにはライセンス契約の形でマネタイズしようとしているとのこと。

ピッチ動画ですが、詳細は約10分程のこちらもどうぞ。

3. MyMenopauseRx：更年期障害専門のオンライン診療サービス

MyMenopauseRxは女性の更年期障害を専門としたオンライン診療のプラットフォームを運営している企業です。

ほてりや気分のムラ、不眠など人によってさまざまな症状の更年期障害に苦しんでいる女性に向けてサービスを提供しています。

バーチャル診療を予約すると、ビデオチャットで更年期障害の専門医の診察が受けられます。それぞれに合った薬や検査の処方が受けられるのに加え、市販薬やサプリについてもアドバイスがもらえるそうです（ホルモン治療薬に加えてなぜか小じわクリームまで紹介されている手厚さ）。

更年期障害について悩みや解決策をシェアできるコミュニティやコレステロール、性感染症などオプションの女性向け検査（有料）も強みです。
価格がオンライン診療が99ドル/回、また各種検査も価格が明示されていて何かと明朗会計なのが魅力です。かかるお金も平均100~200$と、保険診療時の平均（180~249$）よりもお手ごろです。

創業者自身も更年期障害専門の産婦人科医で、かかりつけ医の診察だけでは更年期障害がなかなか解決せず自分のもとにやってくる患者さんをたくさん診てきたという経緯があって、エンジニアの息子さんと一緒にこのサービスを立ち上げたそう。

↓創設者兼CEOのBarbra Hanna, DO, NCMPさんご自身もバーチャル診療を対応

現在はアリゾナ、イリノイ、カンザスなど一部の中西部の州のみのサービス展開ですが、今後全国への拡大を目指しているとのことです。

4. Evolve Essential：インドの生理用品定期便サービス

Evolve Essentialインド全土で生理用品の定期便サービスを提供している企業です。

1か月分のBOXが15個入りで、その中で多い日用と普通の日用の配分をカスタムできるのが良いところ。マンスリーBOXは3か月単位で注文できます。36個パックも同様に、多い日用は13個で普通の日用は23個、みたいな中途半端な設定でもOK。

バスケット版は生理用品にプラスでデリケートゾーン用ソープとおやつのクランベリークランチがついてきます。
製品自体が生分解性で100%オーガニックコットンを使用していて、肌にも環境にも優しい「トキシックフリー」を謳っています。

宗教的に生理がタブー視されていたり、公衆衛生や経済的事情により生理用品への理解や普及が一歩遅れていたインドでもどんどん選択肢が増えていて今がまさに春、という感じがします。

5. Vitalogue Health：国産の在宅ホルモン検査

Vitalogue Healthは女性向けの在宅ホルモン検査サービス「Canvas」を提供している企業です。ひいきするわけではないですが、こちらなんと日本のスタートアップ。

検査の流れとしては、
①キットを選んで注文
②自己採血
③郵送（ポストに投函でOK！）
とかんたん。指先から採取した血液を数滴染み込ませたろ紙を提携している検査会社へ送ると、医師のコメント付きの結果レポートがオンラインで返ってきます（10日以内）。加えてホルモンバランスに良いと言われている食事・運動・瞑想などのセルフケア情報も届けてくれるそう。
もしも結果を受けて病院に行った方が良さそうな場合は提携先のレディースクリニックを受診できます。現在は3つの病院を紹介していますが順次拡大中とのことです。

日本医療政策機構の調査によると、日本で婦人科系疾患を抱える働く女性の年間の医療費支出と生産性損失の合計は、少なくとも6.37兆円にのぼるんだとか。ホルモンを検査することで、女性が自身の身体の状態を知り、生き方の選択肢を増やすことをVitalogue Healthは目指しているとのこと。

検査のラインナップは以下の2種類です↓

Women's Fertility Check（¥28,600）
妊娠に関わる8つのホルモン検査で排卵機能・卵巣予備能・甲状腺機能を測定

Menopause Check（¥16,500）
更年期に関連する4つのホルモン検査で排卵機能・甲状腺機能を測定

多少の不調や将来の妊娠に対する不安があっても、時間が合わなかったり気持ち的に先送りしてしまったりと病院にはなかなか行きづらいものです。また、サービスと同内容のホルモン検査は病院で受けると保険適用外なので費用が高額だったり、そもそも自分で選んで受けることはできなかったりするそう。
ちょっとした症状に病気が隠れているのでは？とネットの知識だけで不安を抱えるよりも1度検査を受けるが易し、かもしれません。

リーダーシップチームメンバーはCEO長谷川氏、産婦人科専門医の前田医師、超分子化学・分析化学専門の足立氏の3名です。ご自身がパートナーとのお子さんを諦めたり、体調を崩されたりした経験から、自分で研究してホルモン検査キットを創ったのが同社だそう。

---------

いかがでしたでしょうか？マガジン内の他のデジタルヘルス記事も、ぜひお手すきで見てみてください。

お知らせ1: リサーチ・情報収集に関する本を出しました！

お知らせ2: 毎週読んだ記事や考えていることなどを配信するニュースレターをしています。無料です。ぜひ登録してみてください。

お知らせ3: リサーチ力など、コンサルタント的スキル向上のためのコミュニティを運営しています。ぜひご参加ください！