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神戸からのデジタルヘルスレポート #108(子供・青少年①)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今年は年末まで全20回で、昨年2022年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信予定です!

今回は全20回のうち5回目、テーマは「子供・青少年①」を取り上げていきます。


1. Summer Health:小児遠隔医療

企業名:Summer Health
URL:https://www.summerhealth.com
設立年・所在地:2022年・ニューヨーク(米国)
直近ラウンド:$7.5M
調達金額:Seed

Summer Healthは、テキストメッセージを送信することで、15分以内に認定小児科専門医から回答を得られる、子育て中の大人のための相談サービスを提供しています。

このサービスは、創業者であるDaSilvaさんご自身の子育ての経験から着想されています。DaSilvaさんは、次男を妊娠中に後18カ月の息子がベッドから転落するという事態が発生しました。夫が心配してER(救急)に連れていったところ、転落した息子の状況は、5時間後に何の問題もないことが分かったといいます。しかし、その受診によって$2,500の請求が発生。その際、ERまで受診しなくとも、その時の状況を即座に医療専門家に相談できれば、重症かどうかの区別がつき、ここませ時間的コストおよび医療コストを発生させなくて済んだかもしれない、と思い至ったことが今回のサービス開発のきっかけだったそうです。子育て中の保護者の医療ケアの心身的負担を軽減できないか、といった出発点から15分以内、24時間いつでも、といったサービス内容に繋がっているそうです。

また、このような小児遠隔医療サービスは、現場の小児科医にとっても負担軽減につながると期待されているそうです。他の診療科医に比べ、小児科医は燃え尽き症候群(バーンアウト)になる割合が高いそうです。マッキンゼーの調査では、なんと小児科医の60%以上が、過度かつ長期にわたる感情的、身体的、精神的ストレスから生じる疲労から、燃え尽き症候群(バーンアウト)を経験している、と述べています。

<サービス内容>

  1. 保護者とお子様について、簡単なプロフィール登録

  2. 授乳、睡眠、栄養、症状等、保護者は問診票に記入(オンライン上のテキストメッセージ)

  3. 緊急性のある状態かどうか、状況に応じたアドバイス等を15分以内に小児専門医より回答 ※州によって可能な場合は医師は処方箋を書いたり、検査結果を送る/読む、を提供

<特徴>

  • 予約不要で、24時間いつでも専門家に繋がることかできる

  • 月額$20で、無制限に複数の専門医に相談できる

  • 自己負担や想定外の手数料はかからない(医療機関で受診だと、$30~45、保険適用外の場合はさらに高額)

より広く保護者に利用いただくために、特にメディケイド制度で生まれた子供(米国全体の41%)の両親にSummer Healthを認知および利用してもらえるようにすること、これが同社の喫緊の課題感だそうです。

2. Fort Health:子供用メンタルヘルスケア

企業名:Fort Health
URL:https://www.forthealth.com/
設立年・所在地:2022年・ニューヨーク(米国)
直近ラウンド:Venture - Series Unkown
調達金額:$8.8M

Fort Healthは、子どもおよび未成年向けに遠隔メンタルヘルスケアサービスを提供している企業です。デジタルメンタルヘルスケアクリニックとして、オンライン上でケアを受けられるサービス設計となっています。

現在、5人に1人の子どもがメンタルヘルスに苦しんでるそうですが、その50%(半数)はケアを受けられていない状況だそうです。特に、LGBQ+ の10代の若者は特に行動的健康状態の影響を受けており、半数以上がメンタルヘルス不良を経験し、22%が自殺未遂をしているそうです。しかし、実際に医療機関でメンタルヘルスケアを受ける際には、以下のような課題があるそうです。

  • 平均待ち時間3.5時間

  • 高額な自己負担費用

  • 一貫性のない品質(行動療法の20%のみ科学的根拠に基づいているもの)

上記背景から、子どものメンタルヘルスケア体制に危機感を持った米国の起業家たちが次々と新たにサービスを展開し始めているそうで、Fort Healthも、そのひとつだそうです。

<サービス内容>
Fort Healthは、デジタルメンタルヘルスケアクリニックとして、小児科医・精神科医・保護者・支払者(保険者)を繋ぎ、オンライン上で患者である子どもに対し必要なケアを設計し、提供しています。

小児科医:90秒以内に精神科医へ直接紹介。7日以内の治療および精神科の予約が行える 親、介護者:コーチングで子どものケアサポートの方法を学べる。
医療提供者、セラピスト:Child Mind Instituteによって開発された科学的根拠に基づいたケアトレーニング
支払者(保険者):臨床的に検証された根拠に基づく、的を絞ったケア

出所:https://www.forthealth.com/

3. Zorro-Flow:新生児体外採尿装置

企業名:Zorro-Flow
URL:https://www.zorro-flow.com/
設立年・所在地:2022年・バーミンガム
直近ラウンド:Seed
調達金額:$300K

Zorro-Flowは、小さな子供でも安全かつ効果的に使用できるように設計された新生児用体外採尿装置です。このデバイスは、尿の量と尿のサンプリングを継続的に測定でき、安全で快適、かつ使いやすいシステムとして提供されています。この製品は、UAB小児科学部の教授兼アラバマ小児急性腎臓学小児・乳児センター所長のDavid Askenaziによって研究・開発されているものです。

出所:https://www.uab.edu/reporter/people/achievements/item/9285-problem-to-product-building-zorroflow-to-help-babies-thrive

<なぜ新生児の尿を調べる必要があるのか?>
尿の生成量を知ることで、臓器の灌流や静脈内輸液(必要な摂取水分量)など、身体の状態と必要なケアについて検討しやすくなります。急性腎障害(AKI)の場合、尿量や尿量の不足が死亡率の指標となる可能性があり、AKIの約27%は新生児の血清クレアチニンによって検出されず、後に慢性腎臓病の可能性が高るリスクを有しています。
しかしながら、新生児や幼児に現在用いられている尿採取方法であるカテーテルによる採取方法では、能動が小さいため見つけにくいことから、痛みや尿が便と混合したり、必要な量を十分に採取できない等の課題があります。この課題から、尿路感染症を引き起こすリスクもあり、もし発症した場合にはカテーテルを除去する必要があり、採尿自体が困難となるそうです。

上記のような課題を解消するために開発されたのが、今回のZorroFlowです。新生児の腎疾患に課題感を持っていた創業者であるDavid Askenaziが率いるチームによって、どんな小さな幼児でも尿を測定、採取、検査できる新生児用体外採尿装置が開発されました。
現在、本製品は特許取得の段階にあり、今後FDAの承認に進んでいく予定だそうです。

出所:https://www.zorro-flow.com/about

4. Paperbox Health:子どもの発達障害・学習障害

企業名:Paperbox Health
URL:https://paperbox.health
設立年・所在地:2022年・トリノ(イタリア)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:€82.5K

Paperbox Healthは、小児認知障害・発達障害の早期発見と予防介入を効果的に行うためのデジタルソリューションを提供しています。ゲーム形式でのテストによって、子供の認知機能を測定し、発達障害の兆候があると認識された場合には、個別カスタマイズされた専門家のセッション等を組み入れていく、といった内容となっています。

出所:https://www.facebook.com/Paperbox.Health/

子どもの認知機能の問題は5人に1人が発生しているといわれているそうです。しかしながら、その大多数、約70%は診断を受けることが遅くなってしまい、十分な治療を受けられず、発覚した時には治療費が増加してしまったり、学校の成績が悪い状態による精神的な負担を感じる等、悩まされるケースが生じます。早期に子どもの認知機能を診断し、早期介入を可能とすることでこのような課題を解決しようと開発されたのが、本サービスとなります。

<サービス内容>
事前審査:DSA*のビデオゲームによる早期発見のためのスクリーニング
事前相談:専門家との初回30分間のオンラインミーティング
オンラインセッション:同社認定の専門家・セラピストによる45分間のオンラインセッション(対象年齢5歳~)
*DSA=神経の伝達や細胞の生死、骨格と筋力に基づく運動といった、異なるレベルの各システムごとに要素間の影響を分析するのではなく、異なる要素やレベルからなる複数のサブシステムが相互作用しながら、「時間とともに絶えず変化する」ダイナミックシステムの振る舞いを分析し、変化のメカニズムを探ること。

参考資料

同社は、イタリアにおけるデジタルヘルステクノロジーにおけるスタートアップ企業の5社としても選出されています。イタリアでの期待の高さが伺えますね。

5. Mindful Gurukul:ティーンズ向けメンタルサポート

企業名:Mindful Gurukul
URL:https://mindfulgurukul.com/
設立年・所在地:2022年・ムンバイ(インド)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Mindful Gurukulは、10代向けに、自己学習(独学)に集中し学習効果を高めるためのデジタルソリューションを提供しています。神経心理学の分野で10年間の豊富な経験を持つ Chirag Jain博士と Darshana Jain博士によって設立。自己学習におけるストレスや不安、集中できない等のメンタル面における負担を軽減させ、10代の若者の学習に関するメンタルサポートを行います。
サービス内容については動画もございます。以下もどうぞ!

<本サービスが対象とするペインとソリューション>
自己学習における課題として掲げているのが、以下の3点です。

  1. セルフラーニングはつまらない

  2. 気が散る(集中できない)

  3. 勉強中に感じるストレスや不安

出所:https://d1fdloi71mui9q.cloudfront.net/0iJ7FYqLSkskAf1QQhTG_Skitii IIT.pdf

上記問題3点に対し、本サービスでは以下の3つのソリューションを提供する、と紹介されています。

  1. 多肢選択式(MCQ形式)ライブゲーム&ソーシャルメディアの要素を組み合わせ※あきさせない、集中させる

  2. 1から勉強パターンを追跡し、注意力散漫レベルをチェック

  3. 2をもとに、個別のソリューションを設計し提供(マインドフルネス)

出所:https://d1fdloi71mui9q.cloudfront.net/0iJ7FYqLSkskAf1QQhTG_Skitii IIT.pdf

以下が、本サービス(スマホアプリ)の利用プロセスです。上述のように、多肢選択式(MCQ形式)ライブゲーム&ソーシャルメディアの要素を組み合わせた設計となっており、この内容をもとに、個別に自己学習による効果が望ましい方法を提案してくれるそうです。学習効果が上がったとする効果を得られた率が91%とかなり高確率を記録しているそうです。(参考

出所:https://d1fdloi71mui9q.cloudfront.net/0iJ7FYqLSkskAf1QQhTG_Skitii IIT.pdf

本アプリの登録方法は動画もございますので、興味がある方はリンク先よりどうぞご覧ください。

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