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神戸からのデジタルヘルスレポート #特別編(イスラエル)

今回は特別回です!
7月3日(水)神戸・ポートアイランドで開催された「イスラエル・デジタルヘルスセミナー 2019 神戸」でスタートアップ9社のピッチがありましたので参加してきました!
(いい感じに仕事が落ち着いてよかった...)

イスラエルというと、軍事研究をベースにしたセキュリティや自動運転関連技術なんかが有名ですが、デジタルヘルスも結構アツい領域だったりします。
当日イスラエル政府の方のプレゼンテーションによると、2018年時点で450社のデジタルヘルス関連スタートアップがいるとのこと。
その内訳としては、

・疾患領域としては、Cardiology(45社)を中心に、Neurology、Rehabilitation、Diabetes、Respiratoryなどの領域でもそれぞれ20~30社存在

・事業分野としてはAI(77社)、Patients Remote Monitoring(224社)、Telemdicine(73社)、Hospital Efficiency(83社)などが中心 ※たぶんここは複数カウントあり

のような感じ。

Medtronic x IBM, Roche x GE等のような大企業同士のコラボレーションも起きているし、ヘルステック系のアクセラレーションプログラム()もいくつも立ち上がっていて、デジタルヘルスの盛り上がりが正直まだまだな日本としては羨ましい限り。

イスラエル国内のデジタルヘルス市場は$300m規模で、かつMinistory of HealthやIsrael Innovation Authorityなどの行政が19~23年の5年間で$275mをデジタルヘルス領域に投資するとのこと。今後さらに成長していくのか...
Newsweekが選ぶTop 10 Best Hospitalの一つに選ばれているSheba Medical Centerもイスラエル国内にあるため、国内での臨床知見を基に海外に持っていくこともあるぞと。

バイオテックを含めたライフサイエンス領域が強いのかと思っていたら、デジタルヘルスもこんなにやっているんだと驚きでした。
今回登壇した9社はどれもなかなか興味深い企業だったので、少し深ぼって紹介しようと思います!
それぞれピッチベースでのラフメモ程度なので、内容のバリデートができていない部分もありますが、いいや!出しちゃえ!の気概で公開します。
(同時通訳機なしで飛び込んだ結果ヘブライ語訛り英語に苦戦しました...)

それでは、どうぞ!
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1. 2Gether:音楽でアルツハイマーケアを

2018年設立、社員7名、資本金$350k、売上$100k

自分の祖母に対して良いケアを提供したい、というのが原体験で、この事業を開始したとのこと。
アルツハイマーの治療に音楽が有効だと考え、24/7で対応可能なセラピストとのオンラインチャットに加え、個々のユーザーに合わせたパーソナライズ音楽を提供。

115施設、3千以上の患者、42都市以上で展開しており、BPSD(認知症に伴う行動・心理症状)に関する臨床試験も実施中とのこと。

各音楽や動画をみたときの感情をテキストや写真として残しておくことが可能で、家族も含めてそれらを振り返って治療に活かしたり。「音楽・動画を活用した抗認知症コミュニケーションセラピーツール」と謳っていました。

プレゼンをされていたCEOさんが、なんと明日がご自身の結婚式ということで、プレゼンが終わるやいなや関空に急いで向かわれていました!
Happy Wedding!

2. BeaconCure:医療当局申請自動化

2016年設立、社員7名、資本金$2m、売上高$350k

"Accelerating Regulatory Approval Using Text Analytics"のビジョンの下、NLPとデータサイエンス技術を融合し、医薬品や医療機器に係る規制当局向け申請支援プログラムを開発しています。

医薬品や医療機器を規制当局(FDAなど)に申請する際の、臨床試験実施以降のLPLV以降のDBL/Final Study Reportまでの9/27weeksをターゲットとして、データ分析やテキスト解析の力でこれらの期間を短縮することを目指す。現状数週間かかっているプロセスを数時間へと大幅に短縮。安全性、有効性、ファーマコビジランス、CMC、ラベリングなど、各レポートを完成させるための時間、コストを削減するとのこと。

実施項目を明確にし、スピーディな申請を可能にすることでEarly Product Launch/Reduction in the Manual Laborの二つが提供価値だと。明確。ファイザーのリピトールを例に出して、1ヶ月早く市場に投入できれば$1bの収入増が見込めるはずだった、とのこと。また、試験設計や提出資料の不足などの人為的なミスにより21%の臨床試験がFailしているという現状を指摘し、それらのをなくすことは必要な知見を世界に提示することにもつながると、

現状はAirtableのようなTable形式で示す形でしたが、5年以内には試験完了に伴って自動で申請が完了する世界を目指すとのことでした。CEOは製薬会社の出身で、創業チームはMBAとデータサイエンス・NLPのPhD持ちと強めのバックグラウンド。

ファイザーのグローバルR&Dチームのヘッドなどがアドバイザーとして参画

3. Beecardia:循環器・呼吸器領域の患者状態把握システム

2008年設立、社員15名、資本金・売上高は非公開

30年に及ぶ医療機器関連のハードウェア・ソフトウェアの開発経験があるチームが提供する、循環器・呼吸器領域での患者状態把握システムを提供しています。センサーとしてはECG/電子聴診器、肺活量計などと連携、早期診断や慢性疾患モニタリングに活用されています。特に、心疾患やCOPD等の呼吸器系疾患のモニタリングへの活用が多いよーと。

データ管理などはすべてクラウドベースにしており、サーバーやコールセンターなどのデプロイコストを低減。デバイスも3rd party製を積極的に活用しており、低予算でのシステム構築を可能にしています。

強みとして挙げられていた領域の幅は広く、センサー開発、疾患検知のアルゴリズム、スマートフォンデータの解析など後半に渡ります。

既にウクライナでは行政と連携して、移動式のナースステーションとかかりつけ医師、大規模病院と連携し農村地域での遠隔医療プログラムを実現しているとのこと。"Make it happen"させている感じが最高でした。

イスラエル感あふれる英語でした...!!


4. Biobeat:ヘルスケアフォーカス・ウェアラブル

2016年設立、社員15名、売上高$2m、資本金は非公開

血圧、心拍数、酸素飽和度等のバイタルサインを非侵襲で測定するウェアラブルデバイスとして、Biobeat watch(腕時計型)とBiobeat patch(使い捨てパッチ型)の2つを開発。前者は介護施設や遠隔医療に、後者は病院内でのモニタリングソリューションとして提供されています。両者ともに既にFDA、CEマーク双方を取得しており、既に市場展開されているようです。

Biobeat Watchの方は1回の充電で3日まで使用可能、Bluetoothでデータ転送。測定項目としては、血圧、平均動脈圧、心拍、呼吸数、酸素飽和度、新係数、心拍変動、発汗、体温、運動量、睡眠の質、カロリーなど。
スマートフォンアプリで各種データ確認を可能に。コンシューマーアプリも別途開発しており、介護施設・遠隔医療モニタリング向けにデータゲートウェイなども準備しているとのこと。

一方、Biobeat patchについてははめ込み型のデザインで1回の充電で5日間使用可能な使用可能型。集中治療式を模したデザインで、複数の患者を一括管理することが可能。クラウド上でトレンド分析を行うことも可能で、こちらは医療機関向けのようです。

AmgenやBARGAなどと協業しており、インフルエンザや心疾患、職場のストレス計測などの領域でプログラムを実施しており、エビデンスづくりにも熱心。素晴らしい。

Q&Aで「Apple watchと何が違うの?」という質問が飛んだんですが、「Apple watchとは計測している項目の幅が断然違うのだよ!あっちはConsumer向けで、こっちは医療・ヘルスケア領域だよ!」とおっしゃっていました。なるほどね。しかし、現在は医療領域にフォーカスしているけど、これからは消費者向けも考えているよ("実際に色んなメーカーから声がかかっているよ")

更に面白いのは、「ECGを測らなくていいなら体のどこに貼り付けても使えるし、なんなら動物でもいけるんやで!」と。靴の中やヘルメットの内部、耳の周りまで。おもしろいなぁ。いろんな展開がありそうです。

投影資料を日本語で準備されていて、熱心さがすごいなと!海外の方、日本語の中でも細いフォントを使いがちだなぁと思っているんですがなんでなんだろう...


5. ELfi-Tech:指につける小型センサーで循環器系データ補足・不整脈検知

2016年、12名、資本金$396k、売上高$912k

レーザー(mDLS)を利用したセンサーにより、血圧や心拍、hemodynamic parameteを計測・可視化するシステムを提供。組み込んだデバイスは指につけられるほどセンサー自体は小型化されており、システム自宅でのケアや遠隔治療などに活用可能。

特に不整脈(arrythmia)の発見・評価においては、ECGデバイスと同様に機能することが検証されており、過去村田製作所と連携して建設現場での作業者安全モニタリングシステムを開発した実績もあります。

光信号から重要な生理学的パラメータを抽出するアルゴリズム開発に強みがあり、カスタマイズされたセンサー・プロダクトの提供とそれに伴うライセンシングを通じて収益を上げているとのことでした。

プレゼンターの方が指にこのセンサーを付けて登場したのでおー!っとなりましたです。

6. Neteera:"Contact Free Sensor" 非接触デバイスで睡眠データ計測

2014年、36名、資本金・売上高ともに非公開

睡眠時にはウェアラブルやケーブルなどの装着が困難な中で、睡眠中でも負担なく使えるセンサーを開発したのが同社。マイクロレベルでの振動を皮膚から収集する遠隔センサーです。センサー自体は45mm*45mm*15mmと小型で、ウェアラブル端末を付ける必要もないし、ケーブル付きの端末を使うこともありません。離れたところにあるセンサーから、遠隔でデータを勝手に摂取してくれるからです。

122GHzの高周波レーダーセンサーと解析アルゴリズムを掛け合わせて、心拍数(Heart Rate)、呼吸(Respiration Rate)、心拍変動(Heat Rate Variability)などを計測することが現状可能。さらに今後、Motion Detection/Pulse Wave Velocity/Bio-ID/Temperatureなどを計測できるように進化させていく予定という話でした。遠隔でここまで履かれたらすごいぞ...

このセンサーを通じて睡眠中のストレスや注意力レベルなどを測定することが可能だと。さらに上記のデータモニタリング機能を生かして、在宅・入院中の患者モニタリングや臨床試験中のモニタリングにも活用できます。
既に13の特許を取得しているしており、2019年2月にFDAに対する申請を開始、2020年1Qより販売開始予定とのことで期待大...!!

さらに自動車の運転手管理システムにも展開を考えており、こちらでも提携を広げていると。すでにソニーやデンソーなども顧客となっており、Contact Free領域で強みを発揮していくよーと。


7. Sternum:IoT/医療機器をもっとセキュアに

2018年設立、社員7名、資本金$3.4m、売上高非公開

IoT・医療機器に対してリアルタイムのon-deviceセキュリティシステムを提供。インシュリンポンプやペースメーカーなどを始め、生命維持に関わるデバイスもセキュリティによる防御が必要だが、現状はExploit領域に脆弱性があると。

Sternumのプロダクトでは、3rd Party製の部品も含めてセキュリティを高めることが可能だと。オンデバイスで同社製品を組み込むことで、Real-time IoT/Device Monitoringが可能になり、USB/Bluetooth/WiFiなど経由でのマルウェア感染やサイバー攻撃を防止するとのこと。

チームにはサーバーセキュリティの攻撃/防御の専門家が揃っており、現状3つの攻撃探知アルゴリズムを特許申請しているとのこと。このシステムを組み込むことで、製品自体の高付加価値化を実現します!とおっしゃっていました。

サイバーセキュリティ、やっぱりイスラエルが本丸なんですね...!! 女性のプレゼンターだったのですが、軍の力を感じました...!!

8. Uniper Care:"Personalized Peloton for Seniors"

2016年、18名、資本金非公開、売上高$550k

個人的に9社の中で一番刺さった企業。

"Virtual Senior Community"  "AI-powered virtual senior living community"をキーワードにピッチをされていました。

米国の人口を考えても、向こう6年で75歳以上の人口は30%以上増加するなかで、社会保障面・各家計負担を考えると自宅でのケアが最も安価で安心できる選択肢であることを強調した上で、自宅での時間の過ごし方に問題があると。↓がびっくりしたデータ。なんと。

米国の高齢者は、平均して8時間/日を、TVの前で一人で過ごしている。

そこに必要なのはシニア同士のコミュニティであると提案。
テレビやPCディスプレイを通じてリハビリ動画やケアメニューを提示。強度別の運動のの実施時間や通話時の音声データ解析などを通じて対象者の健康維持に必要なメニューをリコメンドしつつ、かつつながるべき他のユーザーをリコメンドすることでコミュニティ化を支援すると。
元々は自宅での利用を想定していたものの、現状はケアホームや施設などでも活用されている。

エンゲージメントの数字も素晴らしく、現状69%のユーザーがWeeklyでアクティブ。一人あたり平均で30分/日も活動。91%のユーザーが自身の友人に紹介。アウトカムとしては、25%孤独感減少、28%の打つ減少、Perceived healthに至っては78%で改善。素晴らしい...

最近ユニコーンになったスタートアップに寄せて、"Personalized Peloton for Seniors"とメッセージ出ししていたのはなるほどでした。

わたしもこういうのやりたい!やろう!

9. WideMed Technologies:自動睡眠解析システム

2014年、10名、資本金、売上高ともに非公開

2004年から睡眠計測の事業を行っており、睡眠計測のハードウェアセンサーキットと、解析用のソフトウェアを合わせて提供。自宅で機器を受け取ってテストをすると自動的にデータ解析が行われ、登録したメールアドレス向けにレポートが届く仕掛け。

素晴らしいのはその実績で、既に50万人以上の分析実績があり、NASAの宇宙飛行士の睡眠テストでも導入されており、米国最大級の睡眠研究施設でも同社のプロダクトが使われていると。

日本でも会社を立ち上げてシステムを販売していきたいと語っていらっしゃって、聞き手側にいた何社かは早速終わりの懇親会でアプローチを掛けていたとかなんとか...

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以上、本日参加した「イスラエル・デジタルヘルスセミナー 2019 神戸」のスタートアップピッチレポートでした!

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