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神戸からのデジタルヘルスレポート #6 (Enzyme/docquity/Clarus Care/flow/Bisu)

Cobe Associe代表の田中です。
平和な休日ですね、、三連休は尊い。

神戸からのデジタルヘルスレポート、今回はその第6回です。
今回も元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます!

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1. Enzyme:FDA承認向け品質管理・申請自動化

企業名:Enzyme
URL:www.enzyme.com/
設立年・所在地:2016年、サンフランシスコ
直近ラウンド:Seed(2017年10月)
調達金額:$2m(Rock Health等

FDA(Food and Drug Administration、アメリカ食品医薬品局)は米国における医療品、医薬品規制を担当している期間です。米国で医療機器やお薬を販売するためにはFDAの認証が必要で、その審査プロセスは複雑、提出すべき資料も多岐にわたります。FDAの審査だけで3年近くかかることも。製薬会社や医療機器の会社で当該業務に関わる人の負担は推して知るべし...

「FDA 申請」などでググると、申請サポートを行ってくれるコンサルティング会社がたくさん出てきます。こういう会社がノウハウを持っている秘伝のタレ的な内容を、サービスとしてパッケージ化しちゃおう!というのがEnzymeがやっていること。

Enzymeのサービスは、上記のFDAプロセスにおける試験デザインのコントロールや提出すべき資料の管理などはもちろん、申請企業におけるコンプライアンスや監査対応、社員トレーニングなどの必要モジュール化されたパッケージを提供しています。FDAが求める品質管理システム(QMS)をおまとめソリューションでだしちゃいます、と。
画面イメージを見ると、JIRAのConfluenceみたいだなと思いました。

そうかと思ったらJIRAやGitHubからのデータインポートにも対応しているらしいです。そのデータをいい感じに処理してFDAに。かと思ったら欧州のCEにも対応していると。すごい。

CEO & Co-founderのJared SeehaferはAbbottやMedtronicで製品開発を担当しており、同じくMedtronicやBoston ScientificでFDA対応・監査等を実施していたJacob GrahamとともにEnzymeを創業。様々なポジションを募集しているようで、真っ直ぐな採用欄の書き方に高感度↑です。給与と株の私方、必要な技術や経験などを書いていてわかりやすい。

プロセス管理、ミス低減のためにデジタルを使うの、本流という感じがして好きです。2017年にY CombinatorとRockHealthのプログラムに参加していらいあまりニュースが出ていないようですが、日本でも使うと一気に効率化できそうな企業がかなりありそうで、こです。日本でも使うと一気に効率化できそうな企業がかなりありそうで、個人的にウォッチしていきたい企業の一つです。

2. Docquity:東南アジア最大の医師専用SNS

企業名:Docquity
URL:docquity.com/
設立年・所在地:2017年、シンガポール
直近ラウンド:Series B(2019年3月、$11m)
調達金額:$12.2m(伊藤忠 等

医療の複雑度は増しています。
疾患に関する知見は日々アップデートされ、新薬もどんどん出てきていますし、外科技術も日進月歩で、求められる専門性も高まっています。

シンガポールを拠点としているDocquityは、そんな医師の学び合いを支援するサービスです。10万人以上の医師が登録しており、10万件以上の臨床経験がシェア・議論されているとのこと。活発...

そんなDocquityは伊藤忠商事が今年3月にSeries Bラウンドに参加しており、そのプレスリリースからいくつか注目ポイントをピックアップしてみます。

最も普及が進んでいるインドネシアでは50%以上の医師が会員となっており、フィリピン、マレーシア、タイの計4か国でサービス提供を開始
1症例あたり平均5つ以上の意見を、普段では相談できる機会のない専門医から集めることが可能

さらに、アプリ内での学習が医師免許更新のために必要なポイント獲得に利用できる、というのはユーザー獲得・グロースにめちゃめちゃ効いていそうだなと感じました。シンガポールのCME(Continuing Medical Education)プログラムでは、すべての医師が2年間で50point(Core point 10ポイント含む)以上を獲得せねばならず、そのために学会発表や医学誌への投稿、施設単位でのレクチャーなどに参加しなくてはなりません。アプリを使った学習で少しでも物理的な拘束時間を減らせるとしたら、医師にとっての利用インセンティブはさぞ大きいだろうなと。

通常のCMEセミナーに参加する場合と比較すると受講料は無償、時間は14分の1となり、費用と時間の観点から多忙な医師の負担を軽減

めっちゃいい。日本でもメドピアが同様の医師同士の経験共有などをやっていますが、↑のような時間/費用の観点でいうとどうなんでしょうね...

3. Clarus Care:開業時間外コミュニケーション円滑化

企業名:Clarus Care
URL:claruscare.com/
設立年・所在地:2013年、テネシー州・ブレントウッド
直近ラウンド:Series A?(2015年12月、$4m)
調達金額:$4.9m(Altitude Ventures等

クリニックや病院が空いているのは基本日中です。しかし早朝や夜間に体調変化が起きたときなど、医療者に電話しなきゃ!というときがありますよね。そこでかけてみると「空いているのは9~17時です」という自動音声が返ってきたり、あるいはずっと呼び出し音が続いたり。。
患者さんに急変が起きていたりすると大変なんですが、それを恐れて医師の携帯電話番号を教えたりしたら小さなことでも電話がかかってきて収集がつかず。メールでもいいのかもしれませんが、緊急時には使えません。さて、どうしたものか。

Clarus Careはそんな病院の時間外コミュニケーションをスマートにしてくれるツールの一つ。医療機関がこのサービスを導入すると、患者さんからの電話は音声として記録され医療者のアプリ上に通知が到着。それに対してテキストSMSで戻すこともできるし、本当の緊急時には非通知設定の電話をかけられる。急ぎでなければ無視することも可能。
これらの情報はすべてクラウドにも管理されていてあとからでも確認可能で、かつ記録を電子カルテに取り込むこともできるので保険の請求のためにも活用できる。シームレス。素晴らしい。

文章だけになるとどうしても状況がつかみにくいものなんですが、声色だったり話すテンポまで伝わってくるので、緊急度や状況を推し量るためにはやっぱり音声がいいんでしょうね。

前職で医療介護従事者と患者・家族まで巻き込んだテキストチャットサービスに取り組んでいましたが、やっぱり音声の良さってあるんだよなぁとつくづく感じていました。手軽になったとはいえ、リウマチ患者さんなど、文字を打つのが大変な患者さんもいますし。

匿名のコールや、緊急ではないコールの処理など、医療者のモチベーションや事情をよく考慮しているサービスだなと感じました。
同様のサービス、日本でも需要がっつりありそう。日本の代理店をしたいです(力強く)

4. flow:うつ病治療デバイス開発

企業名:Flow Neuroscience
URL:flowneuroscience.com/wp2/
設立年・所在地:2016年・スウェーデン
直近ラウンド:Seed (2018年1月、$1.1m)
調達金額:$1.1mKhosla Ventures等

うつ病治療のためのデバイスです。CE認証を取得しており、EU(含む イギリス)でうつ病治療のために利用することが可能です。

うつ病患者は左前頭皮質(left frontal cortex)の活動が弱っている傾向があることから、微弱な電気信号を当該領域に流すことで活性化を図る、というのがそのメカニズムです。1日に30分程度、それを2~5週間継続して↑の画像にあるデバイスを用いて治療をするようです。近未来感ある。

デバイスに合わせたアプリも提供しており、睡眠や食事、運動に関するアドバイスもこの中で提供しています。UIもきれい。さすがスウェーデン企業。

今年のCESでも、デジタルヘルスの一つのテーマとして「デジタル治療薬」が挙げられていました。副作用懸念も少なく、中枢神経系や生活習慣病などの領域ではこういうサービスがどんどん出てくるでしょうね。

創業者の一人、Daniel Manssonは臨床心理士で数々の治験にも関わってきたようです。もうひとりの創業者で神経科学の専門家・Erik RehとはストックホルムのKTH Royal Institute of Technologyで2012年にともに働いた経験があり、2016年に満を持してこのFlowを始めたと。チームの写真もむちゃクール。

日本ではまだ買えないみたい。是非試してみたいデバイスです!

5. BISU:尿検査デバイスを用いた健康チェック

企業名:BISU
URL:www.bisu.bio/
設立年・所在地:2015年、東京
直近ラウンド:Seed(2019年2月、$220k)
調達金額:$550k(SOSV等

こちらもデバイス系。しかも日本企業です。

Every day 7bn people flush terabytes of health data down the toilet.
(日々、70億人もの人が何テラバイトにも及ぶヘルスデータをトイレに流しています)

そんな言葉で紹介が始まる同社が提供するのは、数滴の尿を用いて健康状態を把握するためのサービスを提供しているBisuです。数滴の尿を通して、

・BHB & AcAc(ケトン体):糖質・脂質などの代謝状態
・尿pH:感染症/糖尿病などのチェック

などを中心に、今後は酸化ストレスやタンパク質摂取量、電解質の状態なども明示できるようにしていくとのこと。

これらの結果をアプリで管理し、経過を見つつ食事や運動などのアドバイスを行います。手軽にできるのであれば素敵。

サイマックスさん含めてこの領域で頑張っているスタートアップ多いんですね!確かに毎日データを捨てているのと一緒なので、いいUXでデータ補足できるといいなぁ。

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こんな感じで、第6回でした。
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