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神戸からのデジタルヘルスレポート #9 (MyHealthTeams/ HealthMyne/Lifetrack Medical Systems/3Derm/Synopsis Healthcare)

第9回です!
今回も元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます!

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1. MyHealthTeams:慢性疾患の患者コミュニティ

企業名:MyHealthTeams
URL:www.myhealthteams.com
設立年・所在地:2012年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Series C ($7.3m、2017年6月)
調達金額:$17.4m (CVSHealth、500 Startupsなど)

慢性疾患の患者コミュニティを運営しています。
患者さんは無料でこのサービスに登録可能で、面白いのは既存のコミュニティに参加していくのではなく、他のアカウントを「My Team」に登録していくこと。あくまで自分の疾患を中心として、近い症状や家族背景を持つ人をコミュニティに巻き込んでいくと。

33の疾患について200万人以上の参加者がおり、既に1千万以上の会話履歴が蓄積されていると。すごい。

こういう企業のマネタイズはやっぱり臨床試験(Clinical Trials)まわりです。どこに、どんな疾患を持つ、どんなステージの患者さんがいるかが一発でわかるわけなので、製薬会社・CROなんかが行う臨床試験の参加率をぐっと上げられる。さらに患者さんは(未承認だけど)効くかもしれない薬を試せる。わかりやすくみんなに利する形が実現できる。

500 StartupsがSeed Roundに参加しているんですが、直近のSeries Cでも500 Startupsの名前が...こんな後ろのステージで投資することもあるんやなぁ。

Co-Founder 2人の起業原体験。

Mary Ray personally lost a family member to a three-decade battle with multiple sclerosis, has had friends who’ve battled cancer, who won, and lost.
She’s seen her colleagues juggle work schedules to be caregivers to spouses, parents or their children facing a chronic condition. Through the experiences of her friends and family, she’s come to empathize with the loneliness they have experienced, while managing life with a chronic illness. This is what drove her and Eric Peacock to co-found MyHealthTeams.
Together they are causing a tectonic shift in healthcare from a physician- and pharmaceutical-driven industry, to a consumer-driven one.

日本でも医療従事者のリソースをどう配分するかが大きな論点になっているので、患者・家族同士で助け合えるところは助け合っていく、そんな姿勢やそれをサポートするツールが求められるのかもしれませんね。

2. HealthMyne:癌領域・意志の意思決定支援ツール

企業名:HealthMyne
URL:www.healthmyne.com
設立年・所在地:2013年・ウィスコンシン/マディソン
直近ラウンド:Series B($xxm)
調達金額:$26.4m

放射線科医・がん治療に関わる医師に対して、臨床現場での意思決定を支援するプラットフォーム(Quantitative Imaging Decision Support/QIDS)を運営している企業です。EMRやPACSなどから得られた画像情報などをHealthMyneのプラットフォームに取り込むことで意思決定のワークフローを明示し、がん治療の効果判定や治療方針の決定などをさっとスムーズに行うことを支援しています。基本となっているCancer Screening Moduleでは、画像を取り込むと自動でがんの部位のサイズを取り込むことができ、過去から現在までの癌のサイズなどを経時的に確認できるので明示的に確認できます。

そこにさらにIncidental Findings ModuleやTumor Conference Module、Report Moduleなどが組み合わさることでさらにこのプラットフォームを活用することができるようになります。

RSNA(The Radiological Society of North America:北米放射線学会)の2018にもかなり大きめのブースを出していたようで、CEOのArvind Subramanianをはじめとして顧客候補の声までPR動画として残しています。

3. Lifetrack Medical Systems:放射線科医向け医療情報DB

企業名:Lifetrack Medical Systems
URL:lifetrackmed.com/
設立年・所在地:2012年・シンガポール
直近ラウンド:SeriesA(2019年4月、$5.2m)
調達金額:$5.7m(Philips Venture Capital Fund、UOB Ventureなど)

こちらも放射線科医向け。

癌領域や整形外科などの領域では画像診断が患者のアウトカムを向上させる上で重要なツールになっているものの、すべての施設に画像診断に優れた医療従事者がいるわけではない中で、「地理的に離れた場所でも画像をうまいこと共有できればお互いの知見を活かせるのでは?」と考えたのがこのスタートアップ、Lifetrack Medical Systemsです。

個々の患者の情報・画像は分散型医療情報データベースとして登録され、診断に係る放射線科医や放射線技師は病院にいなくとも画像を閲覧し、内容を確認することができます。

2012年の設立以降、現在は12カ国(米国、フィリピン、インドネシア、インド、バングラディシュ、ナイジェリア、ベトナム等)で合計67万人以上の患者が登録されているとのこと。
米国ではFDA 510(k)と2つの特許を、さらにCE/ANVISAマークを取得しておりグローバルでどこにでも出ていける体制を整えています。

Founder & CEOのDr. Eric Schulze、ぴかぴかのご経歴。UCBで分子生物学を優等な成績で卒業したのちUCSDでMD-PhD programに参加。その後医師としての研修をHarvard’s Massachusetts General Hospital (MGH)で実施。
この企業を設立したのも、アジアにおける新興国での放射線治療の質を高めるために戦う、とのこと。かっこいい。。。。

4. 3Derm:皮膚画像診断サービス

企業名:3Derm Systems
URL:3derm.com
設立年・所在地:2012年・ボストン
直近ラウンド:Series A(2016年7月、$1.7m)
調達金額:$3.5m(Healthbox、MassChallenge、Sky Venteures Groupなど)

さらに今度は皮膚科の画像診断に。

スマホライクなシンプルな端末で患部を撮影するだけで、自動的に状態データとして検知します。中に診断アルゴリズムを組み込むこともできるため、疑われる疾患とその対処法をぱっと確認することが可能です

更にその画像に対して専門家が遠隔で診断を行うサービスも提供していて、自動診断なんて信じないぜ!という医師でも活用したくなるサービスとなっています。

会社の基礎技術はCEO & Co-FounderのLiz AsaiがYale Medical SchoolでPIとして行っていた研究で、そのタイトルは「Investigating the Usability of a Handheld 3D Dermatoscope」まさにこの3Dermど真ん中ですね。一緒に創業したのはCS分野の専門家でStanford skin cancer labなどに勤務していた
Elliot Swart。まさにベスト、という感じの組み合わせ...!!

会社Webにある、

We're a team of technologists, healthcare experts, and entrepreneurs on a mission to improve access to healthcare.

という紹介がシンプルながらに素敵でした:-) こういうチームが作れると強いだろうなぁ。

5. Synopsis Healthcare:手術前患者情報プラットフォーム

企業名:Synopsis Healthcare
URL:www.synopsishealthcare.com
設立年・所在地:ロンドン
直近ラウンド:Series A(£500k
調達金額:£500k(Nesta Impact Investmentなど)

最後は、術前評価に用いるための患者情報や麻酔情報などをデジタルに集約することで医療体験を向上させようとするイギリスのスタートアップ、Synopsis Healthcareです。

イギリスにおいても多くの医療従事者が外科手術の実施可能判断評価や術後のリハビリ計画管理などに紙資料を用いており、その作成や管理には相当のコストが掛かります。結果として術前の評価だけで医療者は平均で3.5時間を消費しており、大きな医療リソースの浪費につながっていたと。
さらに、最大52%の外科手術が術前評価の結果によりキャンセルになっていることからも、もしその評価が事前に行えていたとすると、医療者個人や病院全体、保険制度としてもより効率的な運営ができるのではないか。
そんな仮説をSynopsisは持っています。

Synopsisの製品は
・Home:術前、患者が自宅にいる状態でもPRO関連のアセスメントを可能にする
・iQ:術前評価の自動化ツールで、患者個々人のリスクを特定する
・CHART:手術中の動画を解析することで術後のケアを最適化する
の3つで成り立っており、CEマークは既に取得済みで英国におけるデータ管理の認証であるMHRAにも登録を済ませています。

DigitalHealth.Londonの卒業生でもある同社。
欧州発デジタルヘルス企業の雄となるのでしょうか...!!

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こんな感じで、第9回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)

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