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神戸からのデジタルヘルスレポート #2 (MyFitnessPal/Smart Patients/Wellframe/flexible pass/Maria Health)

先週から始めた「神戸からのデジタルヘルスレポート」。
第1回はnote編集部のおすすめにも載せていただきました。やったー!

今回はその第2回です。noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)

それでは第2回、いざ!

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1. MyFitnessPal:フードDB×食事管理サービス

企業名:MyFitnessPal
URL:https://www.myfitnesspal.com/
設立年・所在地:2005年・米ボルチモア
直近ラウンド:M&A (アンダーアーマー社が2015年に買収)
調達金額:$475mで買収

日本だとあすけんだったりライフパレット(mediaid)だったりがある食事管理系サービス。そのはしりがMyFitnessPalです。

1,100万件を超える食事のデータベースを持ち、体重だったり1日に必要な栄養素だったりの目標を設定してトラッキングしていきます。ログイン前でもデータベースで検索ができて面白い。マクドナルドのエグチひとつでタンパク質22gとれますよ!

2015年にアンダーアーマーに買収されたこともあり、現在はトレーニングメニューそれぞれによる消費カロリーやオンラインショップとの連携、メンバー同士のフォーラムも開かれています。Youtubeにもムキムキお兄さんお姉さんたちによるMyfitnessPal使い方説明動画がたくさん上がっていて、アンダーアーマーコミュニティにがっつりハマったんだろうなぁと想像します。

アプリをDLするとバーコードをスキャンするだけで食品データが取得できたり、Apple HealthやFitbitなど50以上のアプリケーションとのデータ連携もできます。便利。

NIKEを始めスポーツウェア・ギアブランドもどんどんデジタルの領域を強化しており、アンダーアーマーの社長は「Connected Fitness」の重要性を訴えています。米国のフィットネスサブスクリプションスタートアップ・Pelotonの成長を見てもこの流れは続いていくんだろうなぁと思います。
(NikeのHouse of Innovation、NYに続き上海にもできたようなのでぜひいってみたい...!)

2. Smart Patients:オンライン患者会支援

企業名:Smart Patients
URL:www.smartpatients.com/
設立年・所在地:1995年(as the Association of Cancer Online Resources)・サンフランシスコ
直近ラウンド:Seed(2013年6月)
調達金額:$100k

病気は誰にとってもつらいもの。いま様々な疾患の患者さんにヒアリングを重ねていますが、みな「誰かに相談したい」「自分の闘病体験を残しておきたい」とおっしゃいます。普段周りに相談をしたりしない人、無口な人でも、病気のことについては誰かに吐き出したいと。じゃないと不安で辛いから、と。

そんな思いを叶えてくれるのが患者やその家族のためのオンラインコミュニティを提供するSmart Patientsです。サービスとして、疾患ごとのコミュニティ闘病記のシェアのような支え合いに加えて、全米での治験プログラム紹介も行っています。

創業者の2人はGoogleの元チーフヘルスストラテジストと癌のオンラインリソース協会(ACOR)の創設者。彼らは医療における次のブレイクスルーは、「医療行為を受ける患者のネットワークから生み出された知識を活用すること」であると述べています。

癌等の病気の宣告は衝撃的で、治療や診断の中でさまざなストレスを経験します。国立がん研究センターは、ガンと診断された患者が1年以内に自殺するリスクは、診断されていない人の約20倍であるという調査報告を行っています。

日本ではまだまだ患者会のような組織が中心になっていて、デジタル領域で患者同士が支えあうようなサービスは少なくとも私が知る範囲ではありません。わたしとしても是非チャレンジしてみたい領域の一つでひっそりプロダクト考えています。

3. Wellframe:在宅ケア支援プラットフォーム

企業名:Wellframe
URL:www.wellframe.com/
設立年・所在地:2011年・ボストン
直近ラウンド:シリーズB(2017年7月)
調達金額:$25.2m

創業者であるJacob Sattelmairはハーバードとオックスフォード大学で学んだ超がつく程のエリートで、パブリックヘルスの専門家・研究者です。創業前にはRunKeeperでのProduct ManagerやDossia(世界初・最大のPHR事業者)でのリサーチ/戦略部門でのディレクターを務めていました。
2011年にWellframeを創業した彼が選んだサービス開発領域は、患者さんの在宅ケア支援です。

Wellframeは医療者が立てた退院後・在宅期間中のケアプランを基に、日々行うべきチェックリストを作成します。

・何を食べるべきで、何を避けるべきか
・どのような運動をどの程度すべきか
・どのような自覚症状があるのか
・いつどの薬を飲むべきか

さらに、患者の疾患や生活環境ごとに教育動画も提供します。
入力された患者ごとのデータは医療機関・医療者の画面では集計されて表示され、次回の来院時の問診などに活用されます。気になる症状があれば、医療者側からメッセージや電話を通じて患者に介入することもできます。
データ解析という視点で、AI・機械学習の活用にも積極的です。この記事が面白かった...!! 末尾にあるインタビューも素敵。

2017年にシリーズBの調達をして以来ごりごりと事業を進めており、18年5月にはHarvard PilgrimがWellframeの導入を発表、19年4月には循環器系ソリューションでBoston Scientificと提携しました。
職場としてもいい感じのようで、Boston Business Journalが選ぶ2019 Best Places to Workにも選ばれています。

私が前職で中心となって取り組んでいたのも、がんや心不全患者の在宅ケア支援でした。抗がん剤投与後の副作用管理、リウマチや骨粗鬆症等の自己注射薬剤の投薬サポート、生活習慣病患者のコントロール改善のための食事・運動チェック。患者支援の課題は、病院の外にたくさんあるといまも考えています。

「治療・ケアは病院の中で行われるもので何かあったら来院してください」だけではなく、デジタルツールを使って医療者・患者ともにベネフィットが得られる世界が実現されていくといいなぁと思っています。
Wellframe、ビジョンに共感できる大好きなプロダクトのうちの一つです。

4. flexible pass:施設横断フィットネス利用アプリ

企業名:flexible pass
URL:www.flexiblepass.com
設立年・所在地:2017年・ミャンマー/ヤンゴン
直近ラウンド:Series A?(2018年10月)
調達金額:$100k~

第1回から続いてアジアのデジタルヘルスも。またミャンマーです。

ヤンゴンのジムやフィットネスセンター、ホテルなどと提携しており、アプリ経由で提携しているヨガや水泳、ボクシングなど19分野のフィットネスクラスを予約することができます。よくあるジムメニューだけではなく、ボクシングや屋内スカイダイビング、ロッククライミング等も提供していて良さげ。

55社のパートナーと、80箇所以上で利用可能とのこと。一時期グリーがやっていたLespasみたいな感じでしょうか。(Lespasぜひ再開してほしい...儲からなそうだけど...)

17年6月のサービス開始以降、利用者は1,000人を超え、予約件数は累計で1万件以上に達しています。これまでは首都・ヤンゴンでの展開でしたが、19年中には第2の都市マンダレーでのサービス開始を予定しており、さらにマッサージやスパなど美容分野へと参入することを表明しています。

創業者のSully Bholatは2017年にシリコンバレー発のスタートアップアクセラレータ・Founders Instituteのヤンゴン・チャプターを卒業しflexible passを創業。ベルリンで開催されたthe Westerwelle Young Founders Programmeに参加したりしながら、月次で20%の成長を遂げているようで。すごい。

5月末に配信されたSully Bholatのインタビューが↑で、ミャンマーのフィットネス市場についても概観できてよさげ。国が豊かになるにしたがってフィットネス市場も伸びていくだろうし、まさにいま、という事業なのかもしれません。

5. Maria Health:オンライン健康/医療保険比較

企業名:Maria Health
URL:mariahealth.ph/
設立年・所在地:2015年・フィリピン
直近ラウンド:Seed(2019年5月)
調達金額:$1m

最後はフィリピンでのInsureTech Startupを。

フィリピンの保険市場はその他のASEAN諸国と比べても小さく、このレポートによると、1人あたりの保険料はマレーシアの1/20以下、タイの1/10以下の水準とのこと(22ドル/人・年)。一方で葬儀保険や学資保険などのマクロ保険商品の浸透度は20%を超えており、こちらはASEAN屈指の水準。
生活に直結している領域だけに、調べれば調べるほどいろいろでてきそう。

Maria Healthは個々人向けに最適な保険プランの選定や、中小企業向けに最適なHMO(会員制医療組織)の選定を支援するサービスを提供しています。MediCardやPhiCareなど大手の保険会社や各種クリニック・代理店と提携し、申請者の属性に合わせて最適な保険商品をぱっと提示すると。

Is Maria Health a broker or a new insurance provider?(Maria Healthは保険のブローカー?それとも保険商品の提供者)というQ&Aには、

Maria Health is not a broker or a new insurance provider. We’re an online sales platform that allows you to easily shop & compare health insurance plans from major HMO providers in the country.

ですよと。あくまで中立的にいろんな保険商品を比較してぱっと契約できるプラットフォームと説明しています。

いくつかの保険商品はPrepaid Plan/Maria's Recommendationとして示されていて、信頼あるブランドを確立できればこういうのも売れていくんだろうなぁと。

創業者のVincent Lauはカリフォルニア大学バークレー校を卒業後、Accentureのコンサルタントとしてキャリアを開始。その後Cisco Systemsやいくつかのスタートアップでプロダクトマネージャーとして勤務した後、2015年にMaria Healthを創業しています。

「フィリピンの全人口の4%しか適切なヘルスケアサービスを享受できておらず、保険に関する情報も複雑でかつ情報取得にやたら時間がかかる。この状況をなんとかしないと!」

そんな思いから始まったMaria Health、先月いよいよシード資金$1mを調達して、成長を加速させていくところ。この資金はフィリピン国内での中小企業向け保険市場での事業開発に利用していくとのことです。

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気づいたら5,000字近くに...

こんな感じで、第2回でした。ぜひまた第3回もお楽しみに!
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by Cobe Associeインターンチーム(多田、藤田、森元、松田、橋爪、大場)+田中


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