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なぜいまリサーチ事業なのか

先週プレスリリースをした通り、スポットリサーチ事業を始めました。
ありがたいことにさっそくお話をいただき、この週末から2件動き始めています。
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超短納期で外資コンサル品質のリサーチを提供する「特急スポットリサーチ」の提供を開始しました!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000041314.html
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Cobe Associeはプロジェクトデザインカンパニーと謳っていて、リサーチそのものは提供している機能の一つでしかありません。
そんな中でなんでこの事業なの?と自分なりに考えたことを書いておきます。

答えはある。問いがない。そんな時代に。

元・WIRED編集長の若林恵さんの『さよなら未来』の中に、このような一節が出てきます。この本、昨年読んだものの中で一番たくさん付箋を貼った本でした。

 サイモンのコトバを逆から読めば、あらゆる情報がやみくもにアーカイブ化されていく世界は、あらゆる情報が説明や分類できないものとなっていく世界だ、ということでもあろう。20世紀の世界には、それを支える大きな枠組みとして例えば国家、たとえば宗教、たとえば科学といったものが存在した。枠組みは、説明や分類を可能にする。サイモンはそこから微妙にはみ出したものをあえて選び出し、アーカイブ化することで「枠組み」では語れない世界を露わにしていく。
 東日本大震災の際に養老孟司が、「答えは全て目の前にある。わたしたちが知らないのは「問い」のほうだ」といったことを書いていたのを思い出す。震災を前に「問い」を失ったように、ぼくらはサイモンの作品を前に「問い」を失う。答えは、それ、として極めて具体的に、そこ、にあるにもかかわらず、ぼくらは、それを理解するための正しい問いを見いだせない。答えを探すことよりも、それはおそらくはるかに苦しい状況だろう。そして21世紀という時代が抱える問題には、常にこの苦しさがまとわりついている。

若林恵『さよなら未来――エディターズ・クロニクル 2010-2017』p124

私はこの一節に、新鮮な驚きを感じました。

学校教育ではずっと、問いを提示されて、それに云々と悩みながらなんとか答えを出していく(そして殆どの場合間違う)ということを繰り返す。
しかし日々生きていく中で、向き合う世界は既に存在していて、それをどんな切り口で見つめるのか、そこが問われているシーンのほうが圧倒的に多い。それはつまり、目の前にある大量のデータ・答えから、自分なりの切り口・問いをもって適切なものを選び取っていく、というプロセスです。

答えは全て目の前にある。しかし、問いがない。

なんと苦しい世界か。

調査会社・IDC Japanの予測によれば、全世界で発生するデータの量は、2025年には2016年比でおよそ10倍になる163ゼッタバイト(163兆ギガバイト)にまで増えるとされています。一方で、人間の脳の容量は4テラバイト(4千ギガバイト)。勝負になりません。

この時代、というか人間に対して普遍的に求められているのは「世界と向き合うための問いを構築する力だ」と私は信じています。

問いを大切にする人をつくる

この文章の頭で書いたとおり、先週Cobe Associeとしてリサーチ事業を公にリリースしています。

この事業は、会社の成長のためというより、関わってくれるスタッフや顧客の「問いを構築する力を高めることに貢献したい」という想いから始めました。
(成長のためではない、と言い切れる会社運営をできているのは大変ありがたいこと...)

私は新卒でBoston Consulting Groupというコンサルティング会社に入ったのですが、そこでリサーチ力を徹底的に鍛えられました。そこでの学びは、「よいプロジェクトの背景には必ず明確な問題意識やビジョンがあるのと同じく、よいリサーチの背景には必ずよい問いがある」ということ。そして、世の中の調査・リサーチといわれるものの9割くらいは、ふわっとした問いのもとに切り取られた事実・データが載っているだけで、ほとんど何にも使えない。
(お客さんから「これうち主催で過去にやったアンケートなんですが分析してくれませんか?」とデータを渡されることがあるんですが、何の示唆も出ないことがほとんどです。)

一人でも多くの人が良い問いをもって世界に向き合うことを支援したい。
それは仕事だけではなく、日常生活にも役立つはずだ。
そう信じています。

わたしが会社の拠点をおいているのが、デザイン都市・神戸。
デザインの基本は、生活者や実際のユースケース・利用される環境を丁寧に観察することにあります。
そのときにも、正しく良い問いを持つことは、必ず必要になります。

神戸という街全体のムーブメントとして、「問いの重視」ということを広げていけるといいんなぁと思いっています。去年、こんな記事も書きました。

いずれにしても、まだ走り始めたところです。
会社としても自分としても結果を出して、胸を張って「問いでしょ!」といれるように、日々邁進していきます。

最後に、WIREDを創刊したKevin Kellyが『<インターネット>の次に来るもの』の”QUESTIONING”という章で述べた文章を。

良い質問とは、正しい答えを求めるものではない。
良い質問とは、すぐには答えが見つからない。
良い質問とは、現在の答えに挑むものだ。
良い質問とは、ひとたび聞くとすぐに答えが知りたくなるが、その質問を聞くまではそれについて考えても見なかったようなものだ。
良い質問とは、思考の新しい領域を作り出すものだ。
良い質問とは、その答えの枠組自体を変えてしまうものだ。
良い質問とは、科学やテクノロジーやアートや政治やビジネスにおけるイノベーションの種になるものだ。
良い質問とは、探針であり、「もし~だったら」というシナリオを調べるものだ。
良い質問とは、ばかげたものでも答えが明白なものでもなく、知られていることと知られていないことの狭間にあるものだ。
良い質問とは、予想もしない質問だ。
良い質問とは、教養のある人の証だ。
良い質問とは、さらに他の良い質問をたくさん生み出すものだ。
良い質問とは、マシンな最後までできないかもしれないものだ。
良い質問とは、人間だからこそできるものだ。


ケヴィン・ケリー『<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則』 p380-381

も一つ最後に。神戸拠点で事業に協力してくれているインターンも募集しています。いま大阪・京都から参加してくれている方が多く、「神戸の若人よいざ...」と。

みなみなさま、これからもどうぞよろしくおねがいします:-)

応援ありがとうございます!