野安の電子遊戯工房 ~「2-0は危険なスコア」撲滅委員会の発足を希望する~
日本はワールドカップのベスト16で敗退しました。
この結果には「よくやった」という声もあるでしょうし、選手たちは実力をフルに発揮してくれたことは間違いないのですが、もったいなかったなぁ、と思ってしまうのも事実です。
ハリルさんの解任以降、サッカー協会会長自らが「厳しいグループだから~」といった予防線を張るようになりましたし、なぜかメディアによる報道も「日本は厳しい」といった方向で統一されたのですが、抽選会直後のブックるメーカーによる勝ち抜け予想では、日本はグループの2~3番手であり、40~50%くらいの確率で抜けるだろうと予想されていたのですから、ベスト16に進めたのは、じつは驚くような結果ではないんですよね。
そうすれば、対戦相手はイングランドもしくはベルギーと予想されていて、どちらも日本と相性がいいタイプであるため、あわよくばベスト8も狙える――という、めったにないほど恵まれたグループだったのです。ここでベスト8を逃したのはもったいないなぁ、という声をあげても許されるでしょう。
でもベスト16で散ってしまったのだから、まだまだ「何かが足りなかった」ということです。それを探し、克服するための挑戦を、これから日本はスタートさせることになるのでしょう。
では、何が足りなかったのでしょうか。
技術的なこととか、戦術的なこととか、いろいろな要素が考えられるとは思うのですが、わたし、いちばん足りなかったのは「2-0は危険なスコア」という言葉を撲滅できなかったことじゃないかな、と思うのです。
日本では「2-0は危険なスコア」という言葉が流布していて、とりわけテレビ中継でよく使われているのですが、ぶっちゃけ、スタジアムで試合を見ているわたしは、そう思ったことがありません。1-0よりも、2-0のほうが安全に決まってますからね。
サッカーは、ひょんな不運から失点してしまうことがあるスポーツです。ボールがピンボールのように跳ね返って、なぜか敵FWの前にこぼれてしまうなんてことが、ときおり起きてしまいます。とくにミスをしていないのに、失点してしまうことがあるのですね。だから1点差では安心できず、追加点を取って2点差にしたときに、ようやく安心できるのです。これで不運で負けることはなくなった。安全になったぞと。
最終予選の、ワールドカップ出場を決めたオーストラリア戦でも、井手口がゴールを決めて2-0にした時点で、「よし。これで決まりだ!」とスタジアム全体が安堵しました。あのときBBCの中継では「日本がゲームを殺した(kill the game)」と解説していました。これでとどめだ、といったニュアンスですね。このことからもわかるように、トップレベルのチーム同士の戦いでは、2-0というのは安全圏に入ったことを意味するのです。
なのに、日本では「2-0は危険なスコア」という言葉が有名で、なぜか2-0になると不安な気持ちになる人がいて、それが伝播するかのように選手たちが浮足立ってしまい、プレーがチグハグになることがあります。
これは不思議な現象です。だって、ワールドカップの、日本以外の試合を見ているとわかりますが、2-0になったら、どの国の選手も、そのプレーは一気に落ち着いたものになっていくのですよ。これで安全圏だ。アンラッキーな失点があったとしても、2-1で逃げ切れるぞ――とばかりに、冷静さを取り戻していくのです。
なのに日本だけが、2-0になったらチグハグになるということは、「2-0は危険なスコア」という言葉があって、その言葉に引きずられてしまう――という現象が起きているような気がするのですが、いかがでしょうか。
血液型占いみたいなものかもしれません。もともと「A型は慎重」などといった統計的・科学的なデータは存在しないのに、そういう言葉が流布してから何十年もたった結果、A型の人は「自分は慎重なタイプだ」と思っている人が多くなってしまった、みたいなことですね。
だったら、2-0になってもプレーがチグハグしたものにならないよう、「2-0は危険なスコア」という言葉そのものを撲滅してしまえばいいと思うのですよ。
アナウンサーが「2-0は危険なスコアとよく言われますが~」と口にしたら、すぐさま解説者は「そういう人もいますが、2-0は1-0よりも安全です。世界トップレベルの国では、それが常識です。だから、そんな言葉に惑わされることなくプレーしなくてはいけません」と言い返すようなところから、まずは始めるといいんじゃないかなぁ。
こうして、いつの日か、若い選手たちが「え? 昔は、2-0は危険なスコア、なんていう言葉があったんですか? なんですかそれ。オカルトですか? 意味わかんないですよね」みたいなメンタリティーになったとき、日本は、ベルギーに2-0でリードしたら、そのまま当たり前のように逃げ切れるような、つまりはワールドカップでベスト8を狙える国になるんじゃないかと、そんなことを思っている昨今です。
さて。長いこと連日更新してきた当コラムですが、昨日、ついに更新が途絶えてしまいました。すみません。ワールドカップが面白すぎて、いつも眠いのが、その要因です。
下書きまでは書いてある回を、いくつか用意しているので、どこかで「1日に2本アップする」ことで、これまでのペースに追いつく予定でいます。それまでは、アップする日付と、コラムの最後に記した日付がズレたままになりまが、ご了承ください。
(2018/07/06)
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