野安の電子遊戯工房 ~ニンテンドー3DSが獲得した最大の知見とは~
ニンテンドー3DSについて、語っておきましょう。
発売は2011年2月。つまり後継機が発表されないまま、ついに8年目に突入したことになります。これまでのゲームビジネスの歴史を踏まえると、かなり異例の状態といっていいでしょう。
世界的ヒット商品となったニンテンドーDSでさえ、その発売が2004年11月ですから、その6年3か月後には後継機となるニンテンドー3DSが発売されています。8年目に突入した3DSが、ゲーム史上まれにみる長寿マシンであることがわかります。
でね。
このゲーム機の悪口を言う人も、ときどき見かけます。どんなゲーム機でも「これ、好きじゃないんだよねー」と感じる人はいますし、だから悪口を言われることはあるのですが、ニンテンドー3DSって、他のゲーム機では見られないタイプの、ちょっと独特の悪口が浴びせられることがあるように観察されるのです。
「3DSって失敗作だよね。だって2DSというゲーム機を出しちゃってるじゃん。任天堂自身が3DSを自己否定しちゃったよね」
みたいなヤツですね。
うーむ。その意見を全面的に否定するつもりはないし、ちょっとだけ同意する気持ちもあるんだけど、でもまあ、全世界で7000万台以上を売り上げたゲーム機を「失敗作」と言ってしまうのは、いくらなんでも豪快すぎる意見だよな、と笑い飛ばしていいのでしょう。
というか、3DSというマシンは、けして「失敗作」などではなく、ゲーム史上類を見ない「実験作」だったのだ! と位置付けるといいんじゃないかと思うんですよ。たしかに、途中で、最大の特徴である3D描画機能を削除したバージョンを出しちゃったわけですが、そんな過程も含めて、ゲームの進化を模索する歴史の中で、これは世の中に出すべきだったマシンだったと評価すべきなんじゃないかなぁと。
つまりですね。
ニンテンドー3DSって、わたしたちに、ものすごーく大事な知見を与えてくれたゲーム機だったよなぁ、と位置付けたほうがいいと思うんです。
その知見とは、
・画面を3Dにすると、すごく面白くなるゲームがある!
・だけど、画面を3Dにすることで面白くなるゲームのアイディアは、けっこう限られている
ってことです。たしかに、画面が3Dになることで迫力が出たり、深みが出たり、あるいは「これまでにないタイプのゲーム」が作られたりと、そのメリットは大きかったわけですからね。
でも、いざ多くのクリエイターが挑戦したみた結果、「3Dにすることで、明らかに面白くなる!」というアイディアは、たぶん、当初に予想していたよりも多くなかったんですよ。あれ? このくらいの数しかなかったのか――と、いざ多くのクリエイターがゲームを作ってみた結果、そんな事実にぶち当たったんじゃないかなぁ。
これは映画と同じかもしれません。「アバター」のように、3Dだからこその深みのある空間によって魅力が格段に上がる映画もあるけれど、かといって、これって3Dなってるけど、むしろ見づらいなぁ、これなら2Dのままでもいいよ、という映画もたくさん作られて、その結果「こういうタイプの映画は3D化すると素晴らしくなるけど、すべての映画が3Dにする必要はないよね」――みたいなところに、映画ファンの気持ちは着地したわけです。
テレビゲームも、ニンテンドー3DSが全世界でヒットしたことにより、映画とまったく同じ知見を得る結果になったんだと思うのです。そして「こっちの道を突き進んでも、あんまり大きな鉱脈はないな」みたいな結論に行きついたのです。そんな知見を得られたことが、ニンテンドー3DSというゲーム機が成し遂げた、もっとも大切な功績なんじゃないかな、と、わたしは思うのですが、いかがでしょう。
さて。
だからこそ、ニンテンドー3DSには、いまのところ、その後継機のうわさがまったく上がっていないのかもしれません。
「画面を3Dにする」という道の先に鉱脈がなさそうなことがわかった今、ならば画面は2Dでいいわけですから、「きれいな画面のゲームを持ち運びたい」という需要はNintendo Switchに譲り渡し、「かんたんなゲームを気軽に持ち運びたい」という需要はスマホアプリを開発することで満たしていく、みたいなところに着地したのかなぁ――と、そんなことを想像している昨今です。
そんなことを考えていくと、そうか、だから本来ならばニンテンドー3DSの後継機のうわさが立ち始めるべきタイミングで、任天堂はスマホアプリ市場に乗り込んできたのかもなぁ――なんてことに思い至ったりもするんですよね。
いやまあ、このあたりはわたしの想像にすぎないので、本当かどうかは、まったくわかりませんけどね。
ゲームビジネスの未来は予測不能です。なので、いきなりニンテンドー3DSの後継機が発表されたりしても、わたしを責めたりしないでくださいね。わたしは、ほんと、なにひとつ確かな情報は持っていませんので(笑)。
(2018/05/28)
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