「東京ゲームショウ2016」雑感

 今年も東京ゲームショウ2016に通っていました。

 一回目のゲームショウから、欠かさず足を運んでいる者として、例年と比べたとき、今年はどのようなゲームショウだったのか――という感想(注:ただの感想なので、細部は正しくないかもしれません)を、いくつか書いておきます。


1・男性コンパニオンが登場した!

 ゲームショウといえば、露出多めの女性コンパニオンがずらりと並んでいるのが例年の風景なのですが、今年、ついに男性コンパニオンが登場しました。

 男性コンパニオンがいたのは、SIE(ソニー)さんのブース。ホテルのベルボーイ系の清潔な衣装の、さわやか系男子がたくさんいました。女性来場者がゲームを試遊するとき、すっ、と男性コンパニオンが寄って来てゲームの説明をしてくれるのです。

 ゲームは「男の子の遊び」という固定観念があったためか、ゲームショウは「男の子に喜んでもらう」ために、各社ともに女性コンパニオンを大量に用意してきたわけですが、ついに時代が変わりつつあるのかもしれません。

 数年前から作られた、女子向け恋愛ゲームを集めた「ロマンスコーナー」も、かつては物珍しさから取材が殺到したものだけれど、今年は、ただの一コーナーとして、ごく普通に存在していましたし、ほんと、時代は変わりつつありますね。いい方向に。


2・壁際に座り込む人が激減した

 午後になったあたりから、壁際などに座り込む人がたくさんいる――という光景は東京ゲームショウの風物詩みたいなもの。もっとも、これは「ゲーム関連の展示イベント」では世界中で起きる現象であり、東京ゲームショウ独自のものではありませんけれど。

 でも、今年のゲームショウは、こういった人たちが激減したのです。

 これはフードコート(食べ物を提供する場所)の場所が、メイン会場であるホール1~8に隣接している「幕張イベントホール」に移動していたためです。この判断をした運営側は大ファインプレーですね。2階にある、およそ4000席も解放されたため、食事をする人のみならず、イベントやステージなどの開始時間までちょっと時間を潰したい人が、イベントホールの座席で休めるようになったのです。

 このためメイン会場の壁際に座り込む人が激減し、つまりメイン会場の通路での移動がスムーズになりました。来場者のわりに、会場の混雑度が地獄にならなかったのは、このためでしょう。


3・平均年齢が上がった

 明快なデータは持っていませんが、第一回目のゲームショウから、すべてのゲームショウに顔を出している者としては、ここ数年、「メイン会場にいる来場者の年齢が上がった」ことを強く実感しています。

 とりわけ今年は「親子で訪れる人たち」が少なかったのが気になりました。

 もちろん、これは「ファミリーコーナー」と呼ばれる、中学生以下(とその保護者のみ)が入れるエリアが充実し、「通常のエリアよりも、待ち時間が短くゲームが遊べる」ため、家族連れで訪れる人たちがそちらに集中したという理由もあるのですが、それでもメイン会場に家族連れの姿が少なかったのは、ものすごく気がかりです。

 もしかすると、みんなでゲームを楽しむようなファミリー層を、みんな「ポケモンGO」に吸い取られていたのかもしれませんね。

 ゲームショウは、ゲームは全世代が楽しめる娯楽だ! ゲームは大人も楽しめるものにしなくては! と長年、頑張ってきたわけですが、ついに時代が逆転したのかもしれません。これからのゲームショウは「ちゃんと、子供にも愛されなくては」という方向性への努力が必要になりそうな、そんな予感がします。


4・ニンテンドー3DSが激減した

 ゲームを試遊するためには、最長120分もの待ち時間があり、長い行列が作られます。ひと昔前までは、その待ち時間にニンテンドー3DS(を初めとする携帯ゲーム機)をプレイしている人が目立ちましたが、今年はめっきりと減りました。

 手に何かを持っている人も、その大半はスマホでした。そういう時代なのでしょう。

 ホールの2Fにあった、すれ違い通信をするためのスペ―ス「赤の広場」「青の広場」も、今年は消滅していました。ゲームショウで、友達と通信して遊んでいる姿がたくさんある――といった光景は、過去のものなりつつあるようです。




 以上、個人的な感想でした。

 世間的には「ついにVRに大きな注目が集まった」みたいな方向の記事が多いのかもしれませんが、あまり気にしなくていいと思います。バーチャル・リアリティなゲームが、大衆に広く普及するとすれば、それは、もっともっと先の話です。

 いまは、視覚とか聴覚とか、そういうものを完全に外界から遮断し、プレイヤーをゲーム世界に没入させる形でゲームが作られていますが、これは黎明期だからなのだと思います。最終的には「自分がいるリアル世界も把握できて、なおかつゲーム世界も把握できる」みたいな形へと収束するはずです。

 VRの技術は、現実と非現実を、プレイヤーに同時に提示する。だからこそ面白い! ――みたいなゲームとして決着すると思いますよ。VRが大衆化するのは、そんなゲームが実現したときでしょう。



 最後に、もうひとつ補足。

 ゲームショウでは、それぞれのブースにステージが用意され、さまざまなイベントが行われるわけですが、わたしが個人的にもっとも感心したのは、ソニーのブースで行われた「ソニーとスクエニのゲーム対決イベント」でした。

 これは両社の社長が、自社スタッフ5人とチームを組んで戦うゲーム対抗戦です。ずてに2回行われていて、ニコ動などで好評だったため、3回目の決戦はゲームショウのステージ上という大舞台で実現したようです。

 これが、抜群に面白かったのですよ。

 ゲームをスポーツとしてとらえる「eSPORTS」という考え方がありまして、これは世界的には巨大なムーブメントになっていて、巨額の賞金が用意されるゲーム大会も開催されていて、ゲームだけで食っているトッププロも存在します。日本では、あまり話題になっていないんですけどね。(わたし、これは宗教的な理由によるものだろうと分析しているのですが、これについて話すは長くなるので省略します)

 そもそもeSPORTSには、大きな欠点がありまして、それは頂点を込めるような凄腕のゲーマーたちの対決が、「そのゲームを知らない人」にしてみると、見ていても面白くないことなんです。プレイヤーが凄腕になり過ぎると、それこそコンマ0数秒のという短い時間での駆け引きが勝敗を決したりするので、「どこが凄いのか、よくわからなくなる」んです。eSPORTSは、ゲームそのものが世界的に普及して、そのゲームの頂点を決める戦いが面白がれる人が増えないと、大衆向けエンタメとして成立しないんですね。



 でも、ソニーとスクエニの対決は、誰もが楽しめる抜群のエンタメでした。

 なぜか? 両チームともに「社長がプレイヤーとして参加している」からです。「さほどゲームが上手くない人」がいるため、ゲームに詳しくない人も、社長(が操作するキャラ)の動きをみていると、ゲームの流れ(どっちが優勢か? みたいなこと)が理解できちゃうんですよ。

 年末あたりによくある、芸能人とスポーツのトップ選手との対決番組みたいなものですね。運動神経がいい芸能人が奮闘しても、まるでトップ選手に歯が立たない姿を見て、誰もが、そのスポーツの凄さを実感できるようになります。そして「うまくない人」が混ざることで、大衆が楽しめるコンテンツになるわけです。

 この対決も同じです。いざゲームが始まると、びゅんびゅんと画面を飛び回って戦っている人たちの中で、あきらかに「動きが遅い人」がいるんですよ。「あ、このキャラが社長だ」とわかるんです。これは両社ともに、動きが遅くてもいいキャラ(いわゆる守備型のキャラ)を社長に担当させているためで、ゆえに社長が「防御壁」あるいは「人柱」になって若い社員を守る、という展開になったりして、しかも実況の声が、そんな社長の奮闘を中心に観客を煽るのですよ。これにより、ただのゲーム対決が、誰もが楽しめる抜群のエンタメになった次第です。

 そうか。こういう形にすると、ゲームの対決はテレビ番組としても成立するかもしれないなぁ……と強く思いました。ゲームが上手くない人(大御所の芸能人とか)と、ゲームが凄腕の若手芸人あたりがチームを組んで対決すれば、なかなか面白いんじゃないかなぁ。日本でeSPORTSを普及させたいなら、こういうところから始めるのがいいような、そんな気がしました。 

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