「スーパーマリオオデッセイ」は、マリオに飽きつつあった人こそ、ぜひプレイすべきゲームだ――というお話(前編)


 「スーパーマリオオデッセイ」は、抜群に面白いです!

 ここは個人で書いているサイトなので、ギャラもらって書く商業サイト用の原稿では絶対に書かないことを書いてしまいますが、「昔からマリオに親しんできたけれど、じつは最近、マリオをプレイしていないんだよなぁ……」という人は、けっこう多いと思うのですよ。

 マリオといえば任天堂の看板ソフトで、どれもぴかぴかに磨かれた完成度だし、だからプレイすれば面白いんだけど、かつてのような新鮮な驚きがなくなってきたように思うんだよなぁ……と、ちょっと醒めた気持ちになってしまった結果、このシリーズから離れていった人、けっこういるんじゃないかな、と思っているんですね。

 でも、そういう人たちこそ、ぜひ今回の「スーパーマリオオデッセイ」はプレイしてもらいたいなぁ、と強く願っています。

 これは、本当にひさしぶりの「すっげぇ新鮮なマリオ」なんですよ。長期シリーズ作の宿命として、じわじわとマンネリ化という蟻地獄にハマりかけていたマリオシリーズは、今回の「オデッセイ」で鮮やかに復活しました。これをプレイしないなんて、あまりにもったいないですってば。



 とにかく、今回から取り入れられた「キャプチャー」というアイディアが、抜群に素晴らしいのですよ。

 マリオが敵キャラに帽子を投げつけると、その敵キャラに「乗り移れる」ようになる――というところまでは、テレビCMなどを見て知っている方も多いでしょう。

 でも、百聞は一見に如かずであり、そして百見は1プレイに如かずです。実際にプレイしてみると、このアイディアが持つ秀逸さに、じわじわと気付いていくことでしょう。

 たとえば、厄介な敵キャラとして、ハンマーを投げてくるハンマーブロスというヤツがいますよね? ファミコン時代のマリオにも登場する古参キャラ。厄介な敵の代表格です。

 これまでならば、こういった厄介な敵キャラは、「げげ。嫌な奴がいるぞ……」とネガティブな気持ちにさせられる存在でした。これはマリオに限った話ではなく、アクションゲームの敵キャラというのは、みんな同じ気持ちにさせる存在だったりします。彼らはプレイヤーの進行を妨げる障害であり、プレイヤーを苦しめる壁であり、できれば会いたくなかったなぁ……という感情をプレイヤーにもたらすからですね。



 だから、マリオシリーズのプレイ経験がある方は、かつてハンマーブロスと出会ったとき、まずは相手の攻撃が届かないところで立ち止まり、そしてタイミングを見計らって前進することを決意したら、できるかぎり素早く敵キャラの脇を駆け抜けるか、あるいはすれ違いざまに攻撃し、やっつけようとしたはずです。

 「ハンマーブロスは厄介な敵キャラだから、できるかぎりハンマーブスの近くにいる時間を減らそう」という行動を、無意識のうちに選んでしまうのですね。

 つまり、マリオシリーズというのは、プレイヤーを「厄介な敵には、できるかぎり近づきたくない」という心理へと、無意識のうちに導いていくような、そういう構造のゲームだった、ということです。苦戦させられた敵キャラを見ては、「ほんと、こいつ嫌いだぜ……(笑)」とつぶやきたくなるようなゲーム、と言い換えてもいいでしょう。

 こうして「こいつ嫌いだぜ……」と思わせつつ、でもチャレンジしたくなる気持ちにさせるバランス調整が絶妙だったからこそ、マリオシリーズは世界中で愛される人気シリーズになったわけですが、そのフォーマットから脱却できなかったため、マンネリ化を感じる人を生んでしまったのも、たぶん事実なのだろうな、と、わたしは思っています。




 でも、だからこそ、「スーパーマリオオデッセイ」は凄いゲームだぜ! と何度でも力説したいんですよね。

 プレイしてみると、わかります。たとえば、ゲーム内で初めてハンマーブロスと出会ったとき、「わーい。会いたかったぜー」と、めちゃくちゃポジティブな気持ちになってくるんですよ。これまでのマリオとは、まるで違う感情が湧き上がってくるんです。

 だって、ハンマーブロスに乗り移れば、今度はこっちがハンマーを投げて敵を蹴散らせるようになりますからね。やりたい放題になれます。「キャプチャー」という能力を持つ今回のマリオにとって、ハンマーブロスのような厄介な敵キャラは、厄介な敵であるからこそ、むしろ魅力的な存在へと変貌しているんです。

 今回のマリオはライフ制。3回ダメージを受けないかぎり大丈夫です。なので一発や二発、ハンマーをくらっても問題ありません。この安心感があるためか、どんな厄介な敵キャラがいようとも、投げた帽子が届く距離まで一気に接近したくなるんです。がんがん突進したくなるんです。

 ほんと、こんなにも、どんどん敵に接近したくなるアクションゲームって、そうそう出会えるもんじゃないですよ。すごく新鮮です。



 なので、もしかすると、マリオシリーズに慣れている人ほど、最初は戸惑うのかもしれません。

 いままでの癖で、ついつい「敵キャラに近づかないでいよう」という心理が働いてしまい、なるべく敵キャラに近づかないようプレイしてしまうんですよね。そんな気分でプレイすると、なんというか、プレイ感覚は「これまでと同じマリオシリーズ」のように感じることでしょう。

 正直にいうと、わたしも、そうでした。

 でも、次第に、あれ? これって、どんどん敵に接近すればいいゲームなのでは? と気付きます。そして、これまでのマリオシリーズとは、まったく逆のゲームじゃん!  どんどん敵キャラに乗り移って、どんどん新しいアクションを楽しんじゃえばいいんだ! と、気持ちが切り替わった瞬間から、めちゃくちゃポジティブな気分になっていくんですね。

 ここからが、このゲームは本番です。ハード名にあやかるわけではないですが、自分の心の中のスイッチが切り替わった瞬間から、このゲーム、急激に面白くなってきます。この感覚、ぜひとも体験してほしいなぁ。



 「オデッセイ」には、砂の国、森の国、都市の国……などなど、さまざまな個性ある国(ワールド)が待っています。

 それぞれの国には、その気候、風土、地形に応じて、さまざまな敵キャラがいます。これらの敵キャラにどんどん乗り移り、その能力を使ってマップを攻略していく――というのが、「オデッセイ」というゲームの基本的な流れです。

 ゲームを進めていくだけなら、最低限の「キャプチャー」をするだけでOK。「次はここに行けばいいよ」という目印のようなものが、つねに表示されているので、ほぼ迷うことはありません。次から次へと、新しい国へと渡り歩いていけるはずです。

 ただ、それぞれの国にしばらく滞在して、隠されている「ムーン」をたくさん集めよう……と考え始めると、さまざまな敵キャラに乗り移り、その能力を生かすことで、マップの隅々まで攻略していくゲームへと変貌します。(これはクリア後の楽しみにとっておいて、ストーリーを先へ進めてしまっても、もちろん問題ありません)

 パタパタ(羽根のついたカメ)に乗り移れば空を飛べるようになり、ハナチャン(長~いイモムシのようなヤツね)に乗り移れば、マリオのジャンプ力では届かないような遠い場所まで体を伸ばして渡れるようになり、バブル(火の玉)に乗り移れば、なんと溶岩の海をざぶざぶと進んでいくことも可能になります。こうしてマリオの行動範囲が、ぐぐっ、と広がっていって、

 「あんなところにムーンがあるのか……でもマリオのジャンプでは絶対に届かないぞ……どの敵キャラに乗り移ればいいんだ……?」

 と悩み出すような、上質な謎解きゲームへと変貌する、みたいな感覚ですね。これもまた、ほんとに面白いんですよ。



 さてさて。

 ここは商業媒体じゃないので、クライマックスについても触れてしまいましょう。その内容を書くのはマナー違反でしょうけれど、ラスボスがクッパであることくらいは明かしても、それはマリオシリーズのお約束ですし、ネタバレにはならないでしょうから。

 ほんと、今回のクッパ戦は素晴らしいですよ。ぜひ体験してほしいなぁ、と心から思います。その最終決戦と、そこから始まるエンディングまでのアクション、そして「種族こそ違えと、ピーチ姫に惚れているクッパとマリオという2人の男と、ピーチ姫との関係性」を描いたラストシーンにいたるまでの一連の流れは、すべてのマリオシリーズの中でも白眉の出来栄え。感動的ですらあります。

 わたし、この一連のシーンを体験し、いまやテレビでもおなじみのヒャダインさんが、かつてニコニコ動画で人気を獲得していくきっかけのひとつとなった「とある動画」を、ふと思い出したりしました。――と蛇足気味に書くことで、この文章を締めくくりたいと思います。



 というわけで。

 ここまでは「よくあるタイプの紹介文」でゲームについて語ってみましたが、いかがでしょう。なんか面白そうなゲームだなぁ……と、すこしでも思っていただけたら、嬉しいかぎりです。

 ただ、これだけでは、「スーパーマリオオデッセイ」の魅力の、その半分も語れてないよなぁ、というのが正直な気分だったりもします。「オデッセイ」って、ある種の"狂気"のようなものが、ちらちらと顔を出してくるゲームでもあるからです。それについても語らないと、このゲームの正体がつかめないよなぁ……と、わたしは思っているのです。

 なので、もうすこし「オデッセイ」について語ることにします。長くなるので。いったんここで分割します。



(この項・続きます)

 

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野安ゆきお

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