「ゼルダ」日記・その2 ~寂寥感の漂うハイラルの地へ~


 やっと、カカリコ村に到着しましたー。

 つまり、まだまだゲームの序盤ですが、いやはや、すごいゲームですわ。プレイしていると、これまで経験したことのない感覚が胸に去来してきます。この感覚を描写するにあたり、もっとも適した日本語はなんだろう? と、つい考え込んでしまうほどです。

 寂寥感……かな?

 広大な世界の真ん中に立ったとき、「人間って、ちっぽけだなぁ」なんて呟いたりするときの、あの感覚に近いかもしれません。

 テレビゲームで、こんな感覚に襲われることがあるなんて、思ってもみませんでした。しかも、まだ序盤も序盤のはずだというのに。ほんと、凄まじいゲームですわ。



 いま、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」のプレイ時間は、およそ4時間といったところです。

 わたし、ゲームに関する仕事をして、そろそろ30年たちます。だから、このくらいのプレイ時間を経た段階で、「他の平均的なプレイヤーよりも、自分はゆっくりプレイしているな」とか、「他の人よりも、ちょっと急ぎ足でプレイしているだろうな」とか、そんな想像ができるようになるんです。

 これは職業病みたいなもんです。「平均的なプレイ」をイメージできなければ、ゲームの記事なんか書けませんからね。平均的なプレイヤー像をイメージできるからこそ、どんな情報を書けば多くの人に喜んでもらえるのか? それが、わかるようになるわけですし。



 なのに、今回の「ゼルダ」は、お手上げです。

 正直に言います。自分以外のプレイヤーが、どんなプレイをしているのか、わたしには、まったく想像できません。「平均的なプレイ」が、どんなものなのか、まったくイメージできないんです。

 というか、わたしは最初の大地でのミッションを終え、ついに広い広いハイラルの地に足を踏み出す権利をゲットしているわけで、つまり「ちゃんと手順を踏んで、ゲームを着々と攻略している」ことは間違いないというのに、その手順が本当に正しかったのかどうか、それすら自信がありません。

 なんか、自分は変な手順を踏んでいるんじゃないか? 妙なルートを歩いてしまったんじゃないか? そんな不安感のようなものが、ずっと胸の奥にあるんです。

 たぶん、こんな気持ちになっているのは、わたしだけじゃないような気がします。今回の「ゼルダ」をプレイしている人は、みんな、そうなんじゃないかなぁ。



 しかも、目の前に広がるのは、遠い昔に滅んでしまった建物の遺跡が残るだけの、広い広いハイラルの地です。

 そこを、添乗員もガイドもないまま、言葉の通じない外国の地を一人旅していて、見知らぬ路地に迷い込んでしまって、「だいたい方角は合ってるから、このままでいい……んだよね?」と不安を抱えながら歩を進めていくときのような、そんな気分で進んでいくのです。

 だから、なんか、ずっと寂しいんです。

 なのに、楽しいんですよ。

 なのに、面白いんですよ。

 こんな気持ちになるゲーム、わたしは経験したことがありません。

 だから、通常のゲームを説明するときには、めったに使われない用語である――「寂寥感」という言葉で、その雰囲気を説明することにした次第です。いやはや、ほんと、とんでもないゲームですわ。


(今日はここまで。この日記、まだ続きます)


(注)この日記は、「プレイ中、わたし自身がどう感じたか? どんなことを思ったか?」を記録することを主目的としていますので、プレイを進めていくうちに感想は変わっていくと思います。ご了承ください。 

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