「マリオカート8 デラックス」の"オンラインでの距離感"は、やはり抜群だなぁ――という話


 Nintendo Switch「マリオカート8デラックス」のオンライン対戦を、ちょくちょく楽しんでおります。週末、日本時間の夕方ちょい前にプレイすると、時差の関係上、ヨーロッパの人とアメリカの人が混在する、ごちゃまぜ感のあるメンツでのレースになり、なんか楽しいです。

 先日、猛烈に上手いアイルランド人と何レースか同組になりました。その鮮やかさな走りっぷりには見惚れてしまいました。なにしろ必死に追いかけていると、予期せぬところにバナナが出現するのですよ。もちろん、いきなり出現したわけではなく、「アイテムのルーレットが止まって、一瞬だけそちらに視線を移すタイミング」を見計らうかのようにコース上に置かれていたため、こちらとしては、視界の外から突然バナナが出てきたような感覚に襲われたのです。一気に走りが乱され、そのアイルランド人には悠々と逃げ切られました。ほんと、ただただ「上手いなぁ……」と感心するしかありませんでした。

 そして、こういう経験こそが、わたしがオンライン対戦に期待する醍醐味なんだよなぁ……と再確認した次第です。

 わたしたちは、なにひとつ言葉を交わしたわけではないけれど、彼が(彼女かもしれませんが)仕掛けてきたトラップの意図を、わたしは明快に理解しました。やるなぁこいつ、と思ったわけです。相手も「くくく。ひっかかったね」と微笑んだかもしれません。こうして、もう二度と同じレースを走ることがないかもしれない人と、わたしは、たしかにコミュニケーションをとったのです。

 そしてわたしは、彼とレースをしたことにより、このコースの、この位置にバナナを置くと、「そこそこ上手い人が、ひっかりやすい」というテクニックを会得したわけです。いつの日か、わたしがこのコースでトップを快走する機会があったら、同じ場所にバナナを置いたりするのでしょう。

 こうして、上手い人からそうでない人たちに向けて、いろんなテクニックが伝わっていく。これこそがオンラインでゲームを楽しむとき、わたしが期待する醍醐味なんだよなぁ、と、わたしは思うのです。



 ゲームがオンライン化したときに、「みんなで同じ世界を冒険する」というスタイルが、ゲームの未来の姿だ――といった風潮で語られることがありました。みんなで交流し、コミュニケーションをとりながらゲームするのって楽しいよね、という風潮といいますか。

 だけど、わたし、この考え方には、あまり賛同していません。

 世の中には、「みんなと過ごす」ことによって気力を充電するタイプと、「ひとりで過ごす」ことによって気力を充電するタイプがいる、と聞いたことがあります。これは外交的か内向的か、という分類とは無関係であるらしく、外交的であっても「ひとりで過ごすことで元気になる」人もいれば、内向的であっても「人と過ごすことで元気になる」人もいるらしいです。

 わたしは、たぶん「ひとりで過ごすことで充電するタイプ」でありまして、独身時代の休みの日、誰とも会話することなく土日を過ごすのは苦痛でもなんでもなく、ひたすら読書に没頭することを楽しみ、それによって元気をチャージしていました。

 わたしにとって、ゲームも、読書と同じ位置づけの娯楽です。プレイすることで元気をチャージするためのものです。――なぁんて書くと大げさな物言いになってしまいますが、でもまあ、趣味ってそういうことですよね。元気になるための趣味に没頭するのです。もっとも、わたしの場合、それを仕事にしてしまったわけですが(笑)。

 いずれにせよ、わたしは元気になるためにも、「せっかくゲームするんなら、ひとりで過ごしたい」タイプの人なのです。濃密なコミュニケーションはとりたくないんです。こういうタイプの人、けっこういるんじゃないかなぁ。



 そんなわたしにとって、「マリオカート8 デラックス」のオンライン対戦は、ちょうどいいんです。

 ゲームというのは、自分が上達していくことを楽しむ娯楽だ、と言い換えることができます。上手くなればなるほど楽しくなるし、そうして上達する過程そのもののが楽しいものになるよう、ゲームというものは設計されています。これはテレビゲームに限らず、スポーツもそうですし、将棋や囲碁などのボードゲームも同様ですね。

 でも、ひとりでゲームをプレイしているだけだと、上達するのって難しいんですよね。完全な自己流でスポーツに取り込むより、誰か上手い人と教えてもらったり、ちゃんとスクールで学びながら取り組んだ方が、上達のスピードは速くなるのと同じことです。

 だから、ゲームを上達する楽しさを味わうためにも、わたしは「誰かに教わったほうがいいよなぁ」と思いつつも、でも濃密なコミュニケーションはしたくないわけで、チャットなどで会話をするようなゲームは避けておりまして、なんとも面倒くさいゲーマーなのですね。

 なので「マリオカート8 デラックス」のオンラインの距離感くらいが、いちばん心地いいのですよ。

 一期一会で出会い、レースをするだけでいい。会話などの濃密なコミュニケーションはとらなくていい。ただ一緒にレースするだけで、「こんなテクニックがあるのか」と学習できる。たくさんレースをすればするほど上達していく。楽しくなっていく。そこが素晴らしいなぁ、と思うのです。



 そんなわけで、これからも、ちくちくと「マリオカート8 デラックス」のオンライン対戦を楽しむ予定です。

 もしかすると、今後、この文章を読んでいる方と、ネット空間を介して対戦プレイをするのかもしれません。とくに会話することはなく、だから濃密なコミュニケーションをとることもありませんが、ぜひとも「互いに、まだ知らなかったテクニックを伝え合う」という、なんとも微妙なコミュニケーションを楽しめたらいいなぁ、と期待しております。

 ちなみに、わたしは「のやすくん」という名で、ときどき「せかいのみんなと」に出没しています。もしかしたら、どこかのコースでお会いしましょう。



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