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【votefor】実録!都知事選ドキュメント 〜東京都知事選挙投開票前、怒涛の3週間の裏側に迫る!〜

「速報です、本日投開票の東京都知事選挙、現職の小池ゆり子氏、当選確実です。」

2020年7月5日午後8時、それぞれの家のテレビやスマホから流れる開票速報に皆が注目する。「おお〜。」「だよね〜。」「やっぱり強いな〜。」画面越しにポツポツと漏れる声とやりきった達成感に包まれる。画面の向こうでは緑の勝負スーツを着込んだ小池知事の勝利宣言が始まる。

異例づくめの選挙だった。
新型コロナウイルスの感染拡大によって都民にとっても不安だらけの中始まった選挙戦。告示日には史上最多22人の立候補者が出馬を表明し、現職の小池知事の4年間の都政への評価と、喫緊のコロナ対策の方向性、そして来年に延期された東京五輪・パラリンピックの開催の可否が主な争点となった。

小池知事は連日都のコロナ対策に追われ、終わってみればおなじみの街頭演説はトータルで0時間。対する新人候補たちも密を回避し、感染対策を万全に整えての遊説を余儀なくされ、それぞれの支持が十分に浸透したとは言い切れないのが本音ではないか。結果、300万票以上を獲得した小池氏が他を圧倒して勝利した。


このドキュメントは、そんな異例づくしの都知事選期間中、私たちNO YOUTH NO JAPANが、今回の選挙プロジェクトにおいて、どのようにストーリーを作り、インスタライブを企画し、取材して記事を書き、そして投票日を迎えたのか、その裏側に迫った直前3週間の奮闘の記録である。

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あ と 3 週 間 し か な い ! !

時計の針をちょうど3週間前、6月14日に戻す。

この日、このプロジェクトのリーダーでもあるもも(能條桃子)によって参加予定メンバーが集められ、オンラインでキックオフ会議が行われた。それぞれがこの都知事選を通してやりたいこと、現状のリソースでできることなどを出し合い、全体としての方向性を決める。来たる衆議院選挙も意識し、テーマは「インスタの最大活用、さらにフォロワーを伸ばす!」と決定された。

ここから各チームに分かれての作業が始まる。チームInstagram(選挙の教科書ストーリー、インスタライブ)、記事、パブリックビューイングに大きく分かれることになった。リーダーのももは都知事選プロジェクトをこう振り返る。

「短すぎたとは思う(笑)もっと早く始められればよかったんだけど。NYNJとしては参院選以来の大きな選挙だった。参院選の時は始まったばかりであまりまとまってなかったけど、今回は自分の知らないところでもちゃんとプロジェクトが動いていて色々できたな、という実感はあるかな。」(もも)

〜2週間前〜政治をクールに!公開討論の新たなスタイル、インスタライブ

選挙戦が佳境に入る中行われた、環境団体Fridays for Future Tokyo、人権団体Human Rights Now Japan、そして藤原詩織さんとのインスタライブは、今回のプロジェクトを象徴するイベントに。

代表のももが都知事選についてどのような観点で候補者を見ているのか、若者の選挙に対する意識などについてInstagramを通じて語り合い、様々な入り口でフォロワーの関心を得ることを狙った選挙プロジェクトでは初の試み。インスタライブ企画班のリーダーであるなおは、企画の意図と工夫したことについて、こう振り返る。

代表のももが都知事選についてどのような観点で候補者を見ているのか、若者の選挙に対する意識などについてInstagramを通じて語り合い、様々な入り口でフォロワーの関心を得ることを狙った選挙プロジェクトでは初の試み。インスタライブ企画班のリーダーであるなおは、企画の意図と工夫したことについて、こう振り返る。

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「今までインスタライブは声をかけてもらってやるという感じだったけど、同世代で頑張っている人の声を聞けるのが楽しくて、選挙プロジェクトでもやってみたいとなったのが最初だった。インスタライブで実際に喋ってもらうことで、取り上げたテーマに親近感を感じてもらえると思ったかな。当日は事前に打ち合わせもしたりして、興味を持ってもらえる内容を一緒に作っていくことを意識しました。藤原詩織さんとのインスタライブも実現できて、シリーズ化できたのはよかった!」(なお)

プロジェクトの大黒柱!マンパワーを導入して作り上げた自信作「選挙の教科書」

今回の都知事選プロジェクトでメインとなった「選挙の教科書」。

Instagramのストーリーで開票日までの1週間、毎日発信し続けた。候補者22人全員の主張をまとめ、争点を整理し、ストーリーのレイアウトを考える。どうしたら選挙に興味の無い人を振り向かせることができるのか、中立を保ちながら紹介することができるのか。作成に参加したありさ、ゆみ、けんしゅう、ぐらと、デザインチームのよしかつの5人に聞いた。

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「ニュースを見るだけじゃない選挙への関わりができて楽しかったです。候補者が多かったこともあって、情報を得るのが大変で、なんで立候補してるのかよくわからない人もいました。都知事選は個人の経歴や人柄が注目されると思うんですけど、経歴がわからない人もいて、その辺はまとめるのが難しかったですね。」(けんしゅう)

「単純に楽しかった!関西に住んでいて自分に投票権の無い選挙だったのに、こんなに気になった選挙は無いよね(笑)選挙の教科書では『選挙とは』の最初の部分を担当してて、参院選の時のものを参考にして作りました。でも国政選挙と地方選挙で少しずつ違うところもあって、その違いを反映させてアップデートできたと思う!作るときは自分が見てわかりやすいように心がけたかな。」(ゆみ)

「私は“投票するなら知っておくべき知識”を『知ってるよね』の前提で載せないように意識してた!初めて投票する人もいると思うから、そこでハードルをあげるのは違うと思ってて、『知ろう!』というきっかけに早いも遅いも無いし、難しすぎない選挙の教科書を作ることを心がけました。」(ありさ)

「『もっと(内容を)練って伝えたかった』というのが正直なところです…。一方、自分で調べて考えることこそ民主主義に参加することなんだなとじんわり思ったり、自分の小さなアクションがほんの少しでも違いを生むことになったと感じられたり、嬉しい発見もありました!親しい方に自分がNYNJの選挙の教科書を作ってるんだ!と話したらその方の友人にシェアしてくれて活動に共感してくれたそうなんです…」(ぐら)

候補者として、ではなく「人」として。本人がシェアしたくなるようなイラストを。


「前回の参院選のときはとにかく似せようと頑張っていたんだけど、今回は第一に『かわいい!』って思ってもらえるようにイラストを描きました。候補者について何も知らない人にとっては、いくら似せて描いても誰だかわからない。ならば『かわいい』を入り口にして興味を持ってもらえるきっかけを増やした方がいいんじゃないかって。もちろん興味の入り口は人によって違うと思うし、イラストは写真よりも主観が入ってしまうという点はあるけど、全部説明しきらない分、余白が生まれて自分でもシェアしたくなるようなイラストにできたんじゃないかと思う。」(よしかつ)

〜1週間前〜シェア効果は絶大!?「投票しよう!」ポストとBuzzFeedJapanとのコラボポスト(ちか)

毎月作成しているBuzzFeed JapanとコラボしたInstagramのポストも、NO YOUTH NO JAPANでおなじみの「投票しよう」アイコンを使った都知事選ポストに。(ポストはこちら)NO YOUTH NO JAPANが始まって1年を前に、今一度原点に立ち返り、私たちのコンセプトと、投票に行くことの意味を届けたい。そんな想いもこもったポストをリーダーとして作成したちかは、このポストに込められた想いをこう話す。

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「いつもは月投稿をまとめる感じで作っているけど、今回は都知事選とNO YOUTH NO JAPANの1周年もあったのでそれにフォーカスしたね。でも都知事選は地方選挙とも捉えることができるし、ポスト1枚目に大々的に打ち出せるわけでもなかったから、前回の参院選でたくさんシェアされた「投票しよう!」が書かれた投票用紙を手に持ったイラストで行こう!となったんだよね。結果的に2枚目の都知事選お知らせポストもあってよかったと思う!」(ちか)

ワードクラウドを使って意識調査!「都知事選直前緊急アンケート!」

記事チームでは、ストーリーでInstagramのフォロワーが気になる争点をアンケート形式で調査し、そのデータをワードクラウドという手法を使ってどの争点が注目されているのかまとめ、それをもとに記事に起こすことを試みた。アンケートを行う上でフォロワーの性別や興味の偏りなど、データを収集する時点では懸念も少なからずあったものの、若い世代が考えていることの傾向を表すという点では一定の意味を感じた。記事は選挙ドットコムの記事サイトにて公開されている。(記事はこちら

nynj_2007_東京都知事選挙-選ドサムネ

そしてついに都知事選投開票日、7月5日を迎える。

デンマークの若者にインスパイアされた、開票速報のパブリックビューイング

開票番組が始まる30分前から、選挙プロジェクトのメンバーを中心にオンラインでつなぎ、NHK速報のパブリックビューイングを行った。こちらも今回が初めての試み。どう実施したらみんなが楽しめるか、企画に携わったのん、なおに聞いた。

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「デンマークに留学していたNYNJの立ち上げメンバー(もも、ちか、なお、ゆうか)が現地で、投開票日に学生が集まってお酒とかを飲みながら開票速報のPVをお祭りみたいにしていたのを見て、『やりたい!』って言ってたことをオンラインで実現してみたという感じかな。こういうのやったことなくてどうやれば楽しくできるのか最初はわからなかった…国政選挙と違ってすぐに結果がわかっちゃうから開票番組が始まる20時に見はじめても面白くないと思って、少し前から始めて開票前のみんなの意見を聞けるクイズや模擬投票をやってみた。実際どうだったかみんなに聞いてみたいな。」(のん)

「選挙結果にモヤモヤする気持ちを共有する機会にできたり、他の人の考えを聞けたことで、結果に前向きになれた。結果が出た後にブレイクアウトルームに分かれて感想を言い合う時間を設けたことで、1人で気持ちを抱えなくてよいのが発見だった」(なお)


選挙結果は前述の通り。コロナ禍の選挙戦は、現職小池氏の圧勝に幕を閉じた。この怒涛の3週間を振り返って、また来たる衆院選に向けて、今メンバーたちが思うこと。

「今までをなぞるだけじゃ大きなムーブメントにはならないと思っている。NYNJが選挙や政治を発信する目的に立ち返ってアクションを考えていくことが大事。選挙や政治が大事なことだとは思ってるけど自分から発信するまでもないと思う人が気軽にシェアできるように、インスタを使って発信してることは意識していきたいな。自分たちだけではできないことを実現させるために仲間を増やして、日々の活動を充実させていきたいよね!」(もも)

「たくさんの人に『NYNJ見とけば大丈夫』って安心して思ってもらえたり、頼ってもらえるような雰囲気までつくれたらいいなぁと思っている。そのためにはインスタはあくまで入り口で、そこからどう次のステップにガイドできるのかということも考えていきたいね。オンラインだけじゃなくてオフラインの部分でもアプローチしたい。おしゃれなカフェの中にも掲示できるようなポスターを作って、政治や社会への入り口を増やしたり。普段の身のまわりの空間や、そこでの体験を通した雰囲気づくりに貢献していきたいと思っているよ。」(よしかつ)

「実は私まだNYNJ始めてからは1回も自分で投票にいく機会がないんだよね(笑)。でも自分がやったことで都民の友達が投票に行ってくれたから意味はあったと思う。3週間は短かったけど、衆院選の足がかりになるようなメディア取材も増えたし、ポストのシェアやインプレッションも増えて、だんだんInstagramとしての影響力を持ててきてると感じた。衆院選では、選挙の前後3日くらいでみんなのストーリーがNYNJのポストやストーリーのシェアになるのを見たいな〜!!でも今回の都知事選ではInstagramに止まらず、衆院選でもビジョンとしてできることがこんなにもあるんだとわかったから、それを活かしていきたいね。」(ちか)

未だ遠い道のり、それでも生きたい社会の実現のために。

前回の参院選よりもさらにたくさんの熱量を注いで進めた今回の都知事選プロジェクト。しかし蓋を開けてみれば投票率は振るわず。

コロナの影響で外出を控えた人が増えたと考えられる一方で、若者の投票率50%にはまだまだ遠い道のりが続いていることを実感させられた。今回の都知事選で実践し、見えてきた課題をどう生かしていくのか、投票に行かない大多数に目的を持って投票に行ってもらうようにするために、何をすべきなのか。

わたしたちの生きたい社会をつくるために、模索は続く。

番外編〜都知事選振り返りイベントリポート〜

都知事選終了後約1ヶ月半が経った8月16日、NYNJの内部オンラインイベントとして行われた「都知事選振り返りイベント」に参加した。

都知事選についてのリサーチやNYNJの競合調査、都民約100人に向けて行ったアンケート結果の共有、選挙に行かなかった人に対してのインタビューの公表、それを元に選挙に行かなかった人にどうアプローチをしていくかのワークショップを行うなど、丹念に練られた充実の内容だった。

イベントチームを中心に、様々なデータを使って都知事選を多面的に分析。都民100人に聞いたアンケートでは、投票に行かなかった人の情報を詳しく分析し、行かない理由にも様々なものがあることを知ることができた。そこから、NYNJがアプローチしていくべき層の再確認、またアプローチが難しい層に振り向いてもらうためにはどんな方法が友好的か、少人数のワークショップで実際のペルソナに当てはめて考えた。

都知事選振り返りイベント (2)

今回のイベントでの分析を来たる衆院選に生かし、NYNJとして選挙をどう発信していくのか、イベントを統括したゆみはこう振り返る。

「NYNJの今後の活動に生かすために、どのデータを調べるのが良いのかをみんなで検討したり、インタビューやアンケートを一人でも多くの都民の方に協力してもらうのが大変だったな。その分、当日みんなが(zoomの)チャットでデータを見ながら盛り上がってくれたのは嬉しかった!投票日から1カ月たった今でもメンバーとワイワイ都知事選の話ができて、『選挙ってこうやって楽しめるんだ〜』と嬉しくなりました。『みんなが選挙にワクワクする社会』に少し近づいたかもしれない、とも思えるイベントになったと思います!」(ゆみ)



NO YOUTH NO JAPANのInstagramの投稿を続けるためのデザイナーさんへの依頼料と活動の運営経費にさせていただきます!