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映画『超人ロック』公開40周年記念上映

池袋・新文芸坐で開催された『超人ロック』公開40周年記念上映に出かけました。なんと本編終了後に、ゲストを招いてのトークショー付き。

▲ 劇場用のキービジュアルは原作者の描き下ろし

 『超人ロック』は、漫画家・聖悠紀さんがライフワークのように、連載誌を変えながら長年描き続けていた作品。聖さんは晩年、病に侵されて闘病を続けながらも漫画を描いていたが、22年10月に惜しまれながら他界。今回は聖さん没後、初めての上映ということもあり、追悼の意味もある。全国の多くのシネコンがデジタル上映になり、フィルム作品がかけられない所も出てきている中、新文芸坐はフィルム対応しているため、貴重な35㎜フィルムでの上映だった。デジタルに比べて映像がややアンダー(暗め)に感じたが、画面のガタつきはなく、フィルムチェンジのパンチ穴(※画面右上に7秒間隔で現れる黒い丸。デジタルデータの上映に伴いなくなったので知らない人もいるかも)が懐かしい。

 80年代はアニメブームで、テレビ作品は勿論のこと、劇場用作品もジャンジャン制作された。『超人ロック』と同じ1984年には、ざっと挙げても以下の映画が封切られている。
綿の国星』2月公開
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』2月公開
風の谷のナウシカ』3月公開
SF新世紀レンズマン』7月公開
超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』7月公開
『超人ロック』は、徳間グループと博報堂が本腰を入れた話題作『ナウシカ』とぶつかっていたので、ちょっと松竹は旗色が悪かったと思う。
映画のストーリーは、聖さんの原作『魔女の世紀』をベースにしている

▲ 『超人ロック 魔女の世紀』単行本表紙

 ちょうど『超人ロック』単行本の発売が相次いでいた頃、16巻の初版に「アニメ映画化決定!」の帯が巻かれ、19巻発売の頃は「封切り迫る!!」になっている。漫画の単行本が370円って安いね。今は倍額ぐらいだ。

▲  単行本は少年画報社のHIT COMICSというレーベルで発売された。『銀河鉄道999』も同様
▲ 大雪の中、ビニール合羽を着て『RAINBOW BRIDGE』を唄うミッチ(堀江美都子)

 映画公開に向けて2月26日、新宿アルタ前広場で「松竹映画 超人ロック 完成記念 2・26 アニメ・クーデター」なるイベントが開催された。新文芸坐の上映でスクリーン投影した素材と同じで恐縮だが、これしか写真が現存してないのだ、すまん。

▲ ステージ中央は河内淳一(STR!X)と堀江美都子

 原版のネガは昨年(2023年)末に発掘。紙焼き(プリント)しか残っていない写真と思い込んでいたので、偶然オリジナルのネガが見つかって自分でもビックリした。今回デジタルデータ化して、大きく引き伸ばした後で気が付いたのだが、写真の左端「超人ロック」の””の文字のあたりに横顔が写ってる男性は、原作者の聖 悠紀さんではないかな?
 40周年上映イベントで登壇して下さったSTR!Xヴォーカルの河内淳一さんが、この当日のことをよく覚えていらして驚いた。確かに凄い大雪だった。普通、屋外のイベントは悪天候だと中止になるものだが、よく決行したよなぁ。河内さんが「体感ですけど1万人ぐらい集まっていました」と話していた。1万人は流石にあのエリアには集まれないだろうが、それでもこの雪で、かなりのギャラリーがいたのだ。……俺もな!(笑)

今回の40周年記念上映は、ゲストの河内さんが映画主題歌『星のストレンジャー』を歌唱した。

▲ 写真撮影のサービスあり! ロックな河内さん格好いいぜ!!

 『星のストレンジャー』はもともとバラード系のグッと来る曲だが、ナマで聴くとさらに最高。映画上映が終わったあとの余韻があるだけに、期待を上回るパフォーマンスでした。通例、ウン十年ぶりにオリジナル歌手が懐メロを歌うと、声が変わっていたり、唄い方に変な癖がついてしまったり(いわゆる独自アレンジ)で、嗚呼やっぱり当時のイメージと随分違うなぁと落胆することもある。しかし今回は84年当時のオリジナルカラオケを元に、同じキーで声がかすれることもなく、しっかりと歌い上げて原曲と比べても遜色ない歌唱だったと思う。河内さん曰く、人前でこの曲を歌うのは公開前の新宿アルタ広場と今回のみという話なので、その2回とも立ち会った俺様ちゃん凄い。

▲ プロレス愛好家のリュウ(安原義人)が着ているのは、アントニオ猪木の闘魂ガウン

 さて、映画本編だが。”なんとなく”という流れで挿入される女性キャラのシャワーシーン、突然の乳首! このシーンに乳首必要? と思いつつも、何故か服が破れて乳首が露出。美女のヌードシーンと、隙あらば乳首、これぞまさに80年代アニメだよ。メインヒロインのジェシカ(潘恵子)だけでなく、敵側のクールなコーネリア(藤田淑子)も、シャワーと乳首の大サービス。そして画面全体が背景動画で動く辺りも、ああ80年代アニメ…という絵作り。
 『超人ロック』はその後もOVAが数本制作され、アニメーションの技術が進んだ後年の方が作画も画面密度も良く出来ているだろう。が、本作はやはり1984年の空気感のあるフィルムであり、やはりこの時代でなければ見られなかった映像になり得ている。アニメブームの真っ只中の、あの時代に産まれた『ロック』だからこそ、いま見直す価値も意味もあるのだ。
 ハイテンポな近年のテレビアニメを見慣れてしまうと、妙に芝居の間がもっさりしているというか、いや全体的に間延びした感じがして、編集なり演出で、もっと展開は早く出来るんじゃないか? 2時間も必要かな? などと思ってしまうが、こうした尺の長さにも、アニメブーム期の長編作品らしさがあるのかも。改めて観ても、面白くて良く出来てるな~と感じたのでした。

▲ 当時の前売鑑賞券の半券。私物です

『超人ロック』
■原作:聖悠紀(「超人ロック 魔女の世紀」より)
■監督:福富博
■脚本:大和屋竺
■キャラクターデザイン:聖悠紀、白梅進
■作画監督:白梅進
■美術監督:金箱良成
■レイアウト:木上益治
■音楽:淡海悟郎
■監修:聖悠紀
■製作:日本アニメーション、松竹、松竹映画
©聖 悠紀/日本アニメーション・松竹