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32歳、樹木医。3人の子育てをしながら、 パワフルに活躍するし続ける秘訣とは 〈株式会社木風〉

笑顔の奥に秘める、樹木を守ることへの熱い想い、揺るがない信念と柔軟性

“樹木医”という職業を聞いたことがあるだろうか?木も生き物であり、人や動物と同じようにケガをするし、病気にもなる。それを診断、治療して管理する仕事だ。女性樹木医事務所である株式会社木風で、会社設立時から社長の右腕として様々な事業を立ち上げ成長させてきた片岡さん。小さな3人の子どもを抱えながら、国内外の案件に多忙を極めている。笑顔を絶やさない彼女の話ぶりは、常に明るく前向きだ。そんな彼女に現在の仕事の魅力を訊ねた。

仕事も家庭もどちらも大事。両立に向け、固定概念から脱却

片岡さんが樹木医になるきっかけは2013年のこと。当時1歳になる長男を抱え、女性樹木医として活躍していた後藤瑞穂さん(木風の現社長)の門戸を叩いたのだ。しばらくの試用期間を経て、一緒に株式会社木風を立ち上げる決意をしたという。

業務を拡大し第一戦で活躍しながら、プライベートでは2014年と2016年に子どもを出産。2016年にはご主人の仕事の都合で、茨城県つくば市へ引っ越すことになった。友人はおらず、祖父母の手を借りることもできない環境だ。

「家庭の事情で転居しなければならないことを社長に伝える際、申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。ところが社長は、どうしたら働きやすく、仕事がより改善するかということだけを考えていました。」

そんな社長の考えに触れ、片岡さんの迷いも吹き飛んだという。

「はっと思う瞬間がありましたね。会社の目標は、”樹木のチカラで、社会を豊かで美しくすること”、”日本一の樹木医の会社にすること”です。どこに住むか、育児とどう両立するかは十分解決できる課題だと気付きました。」

片岡さんの引越しをきっかけに、本格的な在宅ワークスタイルが確立されたという。クラウド上でデータを管理し、スマホから常に確認できるようにした。スタッフ全員の自宅にはPC、スマホ、プリンタを用意して仕事ができる環境を整え、現場や営業先にも毎日直行・直帰という独自のスタイルを確立した。

スペシャリストになるための決断と覚悟

もともと樹木や林業に関心があった片岡さんは大学卒業後、(株)住友林業に総合職として入社。彼女はこれまでの研究や活動から、「樹木を守りたいのであれば、経済を動かさないといけない」と強く思うようになっていたという。

「住友林業は周囲にも大変恵まれ、福利厚生もよく、やりがいのある仕事でした。ただ、ちょうど長男が産まれた頃に夫が大学院へ進学したんです。夫は医者なのですが、現場で働きながら社会課題を見つけては研究し、実務を通じて課題を解決しようとする人で。その姿を隣で見ていて、すごいな!と思いましたね。そんな彼の影響もあって、家庭を守りながら女性として一生働き続けるためにも、普通にサラリーマンを続けていてはだめかもしれない。誰にも負けないような資格と専門性を持ちたいと思うようになりました。」

そこから一念発起、樹木医を目指してキャリアチェンジすることとなった。当時の彼女は、樹木や植物の現場経験もなければ樹木医の資格もなく、さらには赤ちゃんも抱えている状態だ。そんな自分を受け入れてくれた社長に対し、今でも感謝していると微笑んだ。

樹木医として新たなる挑戦。精力的に動き続ける秘訣とは

木風で働き始めた片岡さんだが、小さな子どもを抱えながらの新しい仕事に苦戦したという。

「最初の頃は、もうそれは大変でした。特に子どもが病気の時にお客様や取引先にご迷惑をおかけすることが本当に申し訳なくて。子どもと家で泣く日もありました。
でも社長は、『子供は病気になるのが当たり前なんだから気にしなくていい。私たちは自然相手の仕事で、天候や生育不良などで予定通りにならないしトラブルはつきもの。そうやって強くなればいいんだよ。』と言ってくれて。忘れられませんね。心の底から励まされました。」

社長の励ましに彼女の悩みは振り切れた。そして、合格率20%という難関の樹木医試験に2017年に見事一発合格を果たすとともに、業務もさらに発展・拡大していくこととなった。
民間や公共の樹木の診断・治療・管理業務や樹木医になりたい人を応援する受験対策講座、樹木治療に必要な資材の開発・販売。さらに、技術者として研究活動も行い、2018年の樹木医学会では、3本のポスター発表を実施し学会誌での投稿も受理されたのだそう。現在は海外の案件にも注力し、近く現地法人を立ち上げるという。彼女のこの精力的に活動する源はどこにあるのか。

「私は24歳で結婚して、25歳で長男を産みました。27歳で転職、30歳で樹木医に合格。31歳で自宅を新築する決断をしました。振り返ってみると、早い段階でライフステージの転機を消化できたことで、安心して仕事に没頭できている気がします。」

バイタリティの源泉は誰かのために働くことへの喜び

業界をトップスピードで走り、キャリアを確実に築いている彼女の生き方は、これから働く女性たちの励みになるだろう。

「社長に、『お客さまのご依頼に対する答えは、はい、かYESしかない。』と冗談で言われたことがありますが、今思うとなんだか本当にそういう気がします。どうすれば目標達成できるかのみを考えるんです。そういう癖をつける。どうしてもダメなものは、さっぱり切り替えた方が、生きやすいかなと思います。」

常に笑顔で話す彼女。小さな体で3人の子どもを育てながらハードワークをこなす、そのバイタリティはどこから来るのか。

「仕事があること、そして自分が必要とされていることを単純にありがたく思います。それと、最近気が付いたのですが、私、結構忘れっぽいんです。トラブルや辛いこともそれなりにあるのですが、一つのプロジェクトが終わって、誰かから感謝されたりやり遂げた達成感を得られたりすると、過去の苦労を忘れちゃうタイプですね(笑)。それが、ここまでやってこられた秘訣かもしれません。」

最後に、これから働く女性たちへのアドバイスを聞いた。

「小さなことにこだわりすぎないことですね。人生の軸みたいなものは、ざっくりと一つで十分です。私にとっては、”樹木”がキーワードでした。あとは、周囲への感謝と敬意を忘れないことです。相手に少しでも喜んでもらえるよう、人よりちょっとプラスして頑張れば家族も仲間も必ず助けてくれるはずです。」

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