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プレゼントシーズンに思う「一番難しくて、一番嬉しい贈り物」

誕生日、進学や卒業、転職。プレゼントを贈る、贈られる機会はいろいろあります。クリスマスもその一つでしょう。

プレゼントを選ぶ時間は楽しいもの。ただ、その中でも一番悩むのは本を贈るときです。そもそも親しい間柄でないと本は選ばないのですが、親しかったとしても、本はためらってしまいます。プレゼントなんだし、自分の好きな本を贈ればいい、とも思いますが、相手が普段どんな本を読むのか、どんな読書歴を持つのか……それが分からないと選ぶのは大変です。気づけば、最近は姪や甥にしか贈っていませんでした。

そういう逡巡があるのを知っているから、本をもらうのは嬉しい。そんなことを思ったのは、先日ある社内会議で隣の編集部、ギズモード・ジャパン編集長の尾田さんが『石を売る』の話をしたからです。

「たまに僕は、つげ義春の『石を売る』になっていないか、って自問するんですよ」

参加していたメンバー一同、まさか漫画家・作家のつげ義春の名前をここで聞くとは思っていなかったはずですが、私はそのたとえを秀逸だと思いました。

『石を売る』は、一言でいえば「川原で拾った何の価値もない石を、特別な石だと言って高値で売る」というシュールな漫画。自分たちが生み出すコンテンツが「川原の石」ではないか、独りよがりではないか……という問いでした。

私がこの話と出合ったのは高校生のとき。私も親しくしていた母の友人から、進学祝いとして贈られた『無能の人』に収録されていたのです。
なぜこの漫画?と思いながらも読み、全く手に取ったことのないタイプの漫画だったことでそのストーリーは心のどこかに刻まれていました。

贈ってくれた彼女の思いをいま改めて想像します。こうして幾年経ってもいろいろな思いが巡る。本を贈るって貴重で尊いなあと思いました。

(2023.12.07)

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