「いっさい いっさいろん」の歌詞

 「いっさい いっさいろん」
 いっさい いっさいろん、一切達磨いっさいだるま皿眼さらまなこ
 いららんが一切ろんで一切達磨の皿眼。
 いっさらもっさら一唐人いっとうじんが、いっちりもんめ十三反じゅうさんたん、一匁が十三反。
 あちゃさん、こちゃさん袖振りぞめかん、なんかんぱん

 桂二葉かつらにようさんの(? 米二さん門下の若手用の?)出囃子でばやしに使われている曲です。
 二葉さんの落語はもちろん素敵ですけど出囃子のインパクトも凄すぎて、私も歌いたい! 勢い込んで検索したものの以前の私には見つけられませんでした。それが先日、偶然、見つかりましたので、記録しておきます。きっと他にも歌いたい人がいる、はず。

 参考にさせてもらったのは以下の動画です。
 ・生演奏でない場合は、多分これが実際に出囃子として使われているような気がします。未確認ですが。四派花形・若手寄席お囃子衆さん
 ・三味線指導?の動画。このコメント欄のかたから歌詞の本を教わりました。三味線と遊ぼうさん
 ・そして圓生さんのバージョン。ふつうに真面目に歌っておられるだけなのに何でか微笑ましい。なかたにさん

 歌詞の出典は『歌舞伎音楽集成 江戸編』より、です。著者は杵屋栄左衛門さん。1976年に芸能発行所から出版。私は大阪府立図書館の中之島分館に見せてもらいました。
 古い唄だし本も古いし、たぶん著作権とかいろいろ大丈夫と思いますが、どこかから注意されたら削除しますのでご了解のほどを。

 いやもう、出だしから、陽気なんだか陰気なんだかわからん低音で始まって、とにかく不穏な感じが癖になる魅力で、何とも言えん名曲なのです。そして何よりエンドレスで歌える! 最近の私はずっとこれ! 自転車キコキコこぎながらぷつぷつ唸っている人がいたら、それはたぶん私です……。

 著者の杵屋さんによると、「唐人飴屋の唄と思う」、「何やら意味のあるような詞を並べて唐人語になぞらえた」とのことです。〈唐人〉は具体的に中国・インドの人を指すわけでなく、ざっくり〈外国の人っぽい〉〈異国風の〉の括りで、まあ、いい加減な、派手で奇天烈な異世界風を指すようです。唐人飴屋は、派手な身なりに唄と踊りで目を惹いて飴を売るという、子ども相手の商売だったそうで――って、これ、子ども相手の唄なの?!
 歌詞も唐人語を意識していて、いららんがとか、いっさらもっさらなんてよく分からないし、一切とか達磨とか、ぱっと聞くと仏教に縁がありそうでいて後半は反物たんもの・着物の話で、結局意味は分からない。……これが子ども相手の唄なのか……。

 ちなみに杵屋さんの著書にはあと2曲、〈唐人飴屋の唄から歌舞伎音楽に取り入れられて残っているもの〉が紹介されています(「花のとんきょじま」と「どんちゃどんちゃ」)。本書は歌舞伎音楽の譜面集なので三味線が弾けてこそ味わい尽くせるはずですが、弾けない私は歌詞を見ただけ。でもそれでもなかなかにムチャクチャでそそられます。「どんちゃどんちゃ」のぽこぽこにゃぽこぽこにゃなんて、いったい何を思っての唐人語なのか……。

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