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どうしようもなく、お酒がすきだ。

趣味はなんですかと聞かれることが、長いこと苦痛だった。

映画、読書、Netflix、音楽、山登り、キャンプ、自転車、ダイビング、釣り…

どれもやったことはあるけれど、趣味といえるほどのものではない。その魅力やたのしさについて、熱く語れるものが何もない自分が、からっぽな人間に思えた。

話題を広げようとしてくれた質問に対して、貢献できないこともつらい。ボソボソと「特にないんですよね・・・」とこたえるのが、いつも申し訳なかった。

お酒だけは、ずっとすきだった。健康診断の前日と風邪をひいたとき以外は、だいたい毎日お酒お飲んでいるのも昔から。でも、お酒や食べることを自分の趣味だと思えたことはなかった。

お酒も料理もうんちくを語れるほどのものはないし、美食家なわけでもない。おいしいお店にさほど詳しくもない。ただお酒の味がすきで、おいしいものを食べると幸せ、というだけだった。

いわゆる推しという存在もない。

まわりは誰もが自分のすきなものをもっていて、かっこよかった。

豊島園のなんでもない焼き鳥屋さん

そんなある日、だれかに言われた。

「何にもこだわりがないのに、飲酒に関するノウハウと解像度だけ異常に高いね」

そうだっけ?と思った。

何にもこだわりがないのはその通り。こだわりがないからフットワーク軽くいられるし、なんでもたのしめる。これはもはや、長所だと思うことにしている。

飲酒にこだわりって、何かあるんだっけ?と考えてみて、びっくりした。妙なこだわりがめちゃくちゃあった。なんで今まで気づかなかったんだろうと、不思議に思うほどあった。

お酒にいれる氷は絶対にコンビニの硬いゴロゴロ氷でないと嫌だし、割る炭酸が弱い居酒屋は悲しいし、ビールでもなんでもできればグラスはジョッキじゃなくて薄めがいい。食べ物とお酒の流れを考えるのもだいすきだ。

1杯目はビールではじめたいから、1品目はビールに合うけどお腹にたまらないつまみがいい。お刺し身を食べるなら2杯目からは日本酒。でもお刺し身の次にもつ煮やアジフライがくるなら、日本酒と平行しておいしい焼酎のソーダ割を手元に置いておきたい。でもこのお店の焼酎ラインナップだとハイボールのほうがいいかも…

居酒屋にいる間中、ずっとメニューをみて、そんなことばかり考えている。みんなそうなのかと思っていたら、どうやら違うらしい。

なるほど。わたしはお酒や食べ物そのものというより、日常の中でいかにお酒をおいしくたのしむか、その全体にとてもこだわっている。

これが趣味なのかもしれないと思うようになった。

友だちとはじめたpodcastでも、気がつくと飲酒のことを話している。(そういえば今はpodcastが趣味に加わった!)

雑談は得意なほうではないのに、このテーマならいくらでも話せることに気がついた。


飲酒が趣味だと自覚してからは、料理がさらにすきになった。旬なものは家でやりたくなる。

最近は白子の昆布焼きをやりたくて、バーナーを買った。

バーナーで白子にボーーーっと火をあてて焦げ目をつくる。
食べる。おいしい。


冬は当然おでん。焼酎のソーダ割り。


秋は柿とイチジクとモッツァレラと春菊のサラダ。きのことれんこんとルッコラのソテー。ナチュールの白ワイン。


とある夏の日の作り置きは、多種類のナムルとクスクスのサラダとサルサと手作りラー油。こんなメニューの作り置き、おしゃれなinsta作り置きアカウントではみない。全部ただのつまみじゃないか。

こういう夏のつまみは、キンミヤもクラフトジンもいい。


唐突に赤えびの塩辛。たまには日本酒もいいよね。


ピータン豆腐もすき。ピータンはストックしてある。肉味噌もつくる。ハイボール。


春は山菜の天ぷらにはまった。お蕎麦と一緒に日本酒。ワインもいい。


ガレットなんかもいい。ワインがあう。


ホットサンドもよかった。意外だけどワインがとってもあう。


ラム餃子をつくるために、皮から手作りもした。ラム肉にはクラフトジン。


料理の話もいくらでもできてしまう。podcastでは話しすぎていて、一時封印しようとしたくらい。そんなに料理上手なわけではないけれど、つくっている時間がだいすきだ。


こうなってくると、器にもこだわらずにはいられない。今年はあたらしい器をたくさん買って、さらに毎日がたのしくなった。


思いあまって、自分で1日居酒屋まで開く始末。


お酒をすきになって、そのすき度は趣味レベルなんだと気がついて、たのしみ方の幅がものすごく広がった。

個人でたのしむだけだったものが、おすすめを発信したり、お店を開いてすきなものを味わってもらう場をつくったり、新しい人とつながる機会にもなった。

これを書いている今日も、わたしと同じように食べたり飲んだりすることがだいすきな人たちと飲みに行く。

料理やお酒の味よりも、わいわいおしゃべりすることが目的の飲み会ももちろんだいすき。

でも、次の料理は何にしようか、この料理ならこのお酒が合うんじゃないかと、一緒に悩んでたのしめる人と飲むのは何よりも幸せだ。

はじめて行くお店だけど、ずっとたのしみにしていた。どんな料理と出会えるんだろう。何を飲もう。

家でもやってみたいと思える発見があるといいな。

ああ、今日もわたしは、どうしようもなくお酒がすきだ。

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