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エラーレスに変えてください

昨年の10月に第二子の女の子が生まれ、彼は兄になった。出産と入院で1週間弱も母親である私と離れて寝起きするのは初めての経験だった。私の入院中は夫の産育休暇がぴったり重なったことと母が手伝いにきてくれていたこともあって、息子もそれほど困った変化はなかった。退院後も小さな小さな赤ちゃんにそおっと触れてみたり、様子を伺うように接して可愛がってくれていたので、少し安心していた。
母が帰郷し、娘の1ヶ月健診も終わり、夫の育休もそろそろ終わるかと言う頃、事件が起こった。もうそれは事件というほかなかった。初めて、1ヶ月になったばかりの娘も連れて、2人子連れで児童館に遊びに行った時のこと。ちょっと目を離した隙に(ママ友が赤ちゃん覗きに話しかけてくれたり、ベビーベッドに寝かせたりしてる間に)、自分より小さな子を引き倒したり、同い年の子の顔を掴みかかったり、また別の子の髪を引っ張ったり、取り憑かれたように乱暴なことをあっちでもこっちでも。娘をパパに任せて、2人で遊びに来たときにはなかった荒れっぷりで、その度に謝りながら引き離すも、事態を飲み込めず、終いには親の自分が半泣きになって、涙目で児童館を後にすることになった。
それからというもの、外に遊びに行く度に、目を狙い顔に手が出る様になってしまい、どう対応すべきなのかわからないまま、叱りつけ、場所を変えるということしかできずにいた。途方に暮れ、療育センターに相談の電話をしたものの、来所相談は2ヶ月待ちだった。子どもの発達成長に不安を感じている人は数多くいる。

その療育センターでの相談日、少し緊張にながらも私はとても楽しみにしていた。きっと知らなきゃいけないことを教えてくれるだろうと思っていたからだ。

当日行われた新型K式発達診断検査で、息子は「1年くらい手指の使い方が遅れている、学び方が狭い」という指摘を受けた。そういった性質から育てにくさを感じられた部分もあるでしょう、と。初めての場所で初めて会う人相手に少しでも向き合ってテストを受けられただけでもホッとしていた一方で、客観的にこう評価してもらうとショックな反面腑に落ちた様な安堵感もあった。
そこで、臨床心理士の方から最近頻発する他害行動についての対応方法として「エラーレスに変える」ということを教えてもらった。
これは、とにかく「怒らなくていいです。ダメ、って言わないでください」ということ。
具体的にどうするかというと
1.まず相手に謝る
2.移動する
3.どういう気持ちがあったのか、共感して言葉にする
4.好ましい行為を伝える

それぞれの対応にどういう意味があるのかというと
1.親が謝っていることを見せることで、「ごめんなさい」というべきタイミングを知る。
2.状況を変えて、気持ちの切り替えを促す。
3.親が理解して受け入れていることを示すと同時に、感情に言葉をつけてあげることで理性的な思考を助ける。
4.教わっていないことはできないの発想で、どんなことをすればいいのか教える。

そして、「10回に1回うまくできたら、オッケーです!」と付け加えてくれた。
いつもうまくいくわけない、1回でもできたら親である自分を認めてあげてくださいってことだった。この話を聞いたとき、怒らなくていいんだということで随分気が楽になった。それでも、これまで「してはいけないこと」を子どもがしてしまった時に「ダメ!」と言うことが当たり前の様に考えてしまっていた以上、このエラーレスの働きかけに自分自身を切り替えることがかなり困難だった。

それは、「なぜ、「ダメ!」を言ってはいけないのか?」この理由をしっかり考えられていなかったから。子どもが「する事」がいかにダメかをこんこんと言い聞かせる事にどれだけの悪影響があるのか。親が、自分が、言ってしまいがちな「なんでこんなことするの!」という言葉が、子供に「やって欲しくないこと」を「やらせてしまっている」という事にまだ気づいていなかった。



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