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大成 弘子さんの語る、人を活かし、組織を良くする「ピープルアナリティクス」入門

今回はナレッジコモンズのイベントに参加しています。

講師のプロフィールがこちらです。

大成 弘子 氏
人事、HRといった、働く人々を対象にした分析およびコンサルティング業務を行う。
最近では、人工知能や機械学習を用いた発展的なピープルアナリティクスについて研究中。
『データサイエンティスト養成読本』『データサイエンティスト養成読本ビジネス活用編』など執筆。

講演内容は以下の通り。

HR(人材)に関するテクノロジーもかなり進化し、様々なデータが取れるようになってきました。それと同時に、勘や経験に頼るだけでなく、データも活用して、最適な人材採用や登用・配置を行う企業も増えてきました。

"平成最後の"ナレッジコモンズは、人材戦略に関するデータを分析する「ピープルアナリティクス」を、分野最前線で活躍中の 大成弘子 さんにご登壇いただき、ピープルアナリティクスとは何か、実践するためにどうすればいいか、などなど、じっくりお話いただきます。

※そもそも「ピープルアナリティクスってなに?」という方もまだまだいらっしゃるでしょうから、当日はみなさんにピープルアナリティクスを体験していただく予定です。経営者・組織のリーダー・人事の方のご参加をお待ち申し上げます。

では、書き起こしていきます。

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専門領域はネットワーク科学(特に人間関係)と深層学習(特に自然言語処理)です。去年から松尾先生のところで勉強してたりもしています。さて、少し雑談をします。深センに行ってきたのですが、丸の内のようなビル街でショーをしていたんです。プロジェクションマッピングかな、と思ったんですが、LEDマッピングだったんですよ。これには本当に驚かされました。

中国と日本について何が言いたいか、というと、中国には「強い結束力、団結力」があったんです。逆説的にはむしろ日本人ネットワークが「個別化・孤独化」しているんですよ。英語を学びにきたから、ということで、日本人同士で喋らないようにしていたりする人も多い中、中国は、チャイナタウンなどを作ってつながっている。

日本復興のキーワードは「リ・コネクト」だと個人的には考えています。日本は圧倒的な高齢社会になっている。これは不可避。クリエイティブの3段階として、ネサンス(誕生)>イノベーション(進化)>リノベーション(再興)の3つです。今の日本はイノベーションからリノベーションにならないといけないが、できていない状態。シェアリングエコノミーが最近流行っているが、リユースによって発生したものである。カスタマーサクセスもよく聞くが、連続的なつながりによるビジネスになる。売り切り型とサブスクリプション型の違いがここにある。世の中が少しずつ変わりはじめています。

ピープルアナリティクスとは?

人に関する分析です。スポーツ、人事、医療など全てですね。最初に誕生したのは映画にもなった「マネーボール」です。野球の弱小チームが統計を駆使して、強いチームになっていく作品です。その後、「職場の人間科学」が爆発的に売れて、Googleがピープルアナリストという言葉を作りました。その頃、ペンシルベニア大学でピープルアナリティクス講座ができ、今に至っています。

ペンシルベニア大学の定義はat workと書かれていて、Googleはyour people、PwCも人材マネジメントと書いている。つまり、人事文脈の話が多くなっています。

人事分析、HRM、タレントマネジメント、ヒューマンキャピタルアナリティクスなどは同義語です。

私の定義は「働く人々を幸せにする解析」です。そもそも人事は「社員を幸福にする仕事」だと思っています。幸福を無視すると犯人探しになる、という話があります。人がやめるのは現場のせいだ、あいつは能力がないからみんな困る、採用できないのは人事のせいだ。こういうことが起きると、犯人にされた人は退職したり鬱になったりします。犯人探しにならない分析をするというのが非常に重要です。

では幸福とは?

Happy:気分、感情といった短いスパンでの心理状態
Well-being:豊かな人生
Positive Psychology:心理学のアプローチ
Happiness and well-being:学術領域でのアプローチ

など様々があります。面白い研究を紹介します。「幸福は伝播する」というものです。1020名のネットワークがあり、友人・配偶者・兄弟姉妹で構成されていたときに、幸せな人がくっついていて、不幸な人は端っこのほうにいるということなんですね。不幸な人は不幸な人どうしでつながるわけではなく、毛糸がとれるように消えていくと言われています。これが自殺とか鬱とかなんですね。

出典:つながり 社会的ネットワークの驚くべき力 ニコラス・A・クリスタキス, ジェイムズ・H・ファウラー他

幸福な社員はパフォーマンスが高い。幸福な社員は生産性は31%高いんだそうです。幸福な社員が1人いるだけで、店舗の売上が高いとも言われています。コンビニで楽しく働いている人がいると、なんとなく利益が上がっちゃう、みたいな話ですね。ハーバードビジネスレビューによると。

幸福のホルモン・オキシトシンの話。「トラストファクター」という本にあるんですが、以下のようなものです。

TRUST FACTOR トラスト・ファクター~最強の組織をつくる新しいマネジメント 単行本(ソフトカバー) – 2017/11/30 ポール J・ザック Paul J. Zak (著),

期待する、というのがマネジメントでいかに重要かがわかります。また「十分なオープン化」がされているだけで、モチベーションが上がるということなんですね。

一貫した小さな幸福の継続が大事です。宝くじがあたるより毎日ご飯がおいしいな、と思えるほうが幸福なんですね。では、組織における小さな幸福とはなんでしょうか。これは一過性と継続性にわけることができます。

褒めるというのは、ギリギリセーフで、上から下への流れが存在しています。上司が部下を褒めると部下は嬉しいです。ただ、その部下はまた褒めて欲しくて、上司しか見なくなります。賞賛はしていいけど、褒めてはいけない、と言われています。

HR Analyticsというのは一過性のデータを扱い、People Analyticsは継続性のデータを扱うことになります。

生産性が高いチームはどっちでしょうか?チームAとチームBで比べてみましょう。

チームAは常に連携が取れている。チームBはマネージャー以外との連携はしていない組織。

実はこれ、組織の形によって違うんです。チームAは営業に向いていて、チームBはエンジニアチームに向いています。チームAはむしろリモートワークとかが向かない傾向にあります。では、以下の場合、どの支店の業績が良いでしょうか。

これ正解は支店1です。支店2は分断されているので、コミュニケーションが取れていないです。支店3はタイトなコミュニケーションを取りすぎています。また、外れている3人は新人なのですが、彼らも中に入れていません。

支店2の「分断」ですが、1階と2階の違いでした。コミュニケーションの量が減っていた理由はそのあたりだったんですね。また、職種ごとに分断されているとお互いの良さを活かしきれなかったりします。

社内ネットワークが強い上司は強い?

社内ネットワークが強い上司を持つ部下は通常よりも7%エンゲージメントが高く、部下のほうが高い場合は離職率が50%になる、というマイクロソフトの研究もあります。

(会場爆笑)

これは「あいつに聞いてみなよ」ができるからですね。

感謝データ分析

会社内で感謝しあっている言葉のデータ(オンライン上でのオープンなやりとりデータ)を分析しました。形態素度解析をかけて、ワードランキングをとりました。エンゲージメントの高さ・低さでやっても「ありがとう」が1位でした。

感謝されていてもエンゲージメントは無相関でした。

感謝の共起ネットワーク

エンゲージメントが高い社員は「ありがとう」に理由をつけていたんです。これめちゃくちゃ面白いですよね。

さて、「ありがとう」、と言われると女性はイラっとします。言っておけばいいだろう、という感じがするわけですね。プロセスを褒めてほしいのに、結果しかみてないじゃん、という感じですね。味噌汁ありがとう、ではなくて、作ってくれたのを想像するとすごく嬉しいよ、のほうがいいわけですね。

ボキャブラリー豊かな上司はいい部下を育てる

言葉の平均情報エントロピーと、部下の平均エンゲージメントを調べたところ、相関関係だったんですね。大きい会社だと評価コメントを書いたりするんですが、人が多すぎて最後テンプレっぽくなっちゃったりするんですよ。これをやるとやっぱりエンゲージメントが低くなるんです。

いろんな言葉で、伝えるのがすごく重要ということなんですね。

ピープルアナリィクスがPoC止まりにならないために

実は幸福についての不都合な真実がいくつかあります。

不都合な真実1)人は幸福になるように生きているけど、幸福になるようにデザインされていないんです。

よかれと思ったことが間違っちゃう、ってことがあるんです。

不都合な真実2)常識的に考えられている幸福になる方法は1960年代に作られて枯れている。

「マシュマロテスト」、「暴力的なゲームは子供が害」、「グリット(やり続ける能力)」とか。こういうのは全部論文で否定されています。

さて、報酬と喜びの関係をみていきましょう。大人は、報酬が高ければ、高いほど、喜びが高い。子供は全部喜んでいた。

(会場爆笑)

20,30代の場合、小さい報酬だとがっかりされてマイナスになるんですね。年功序列で若い人の給与は低くて、とかをやってしまうと、この問題が表面化するわけです。

不都合な真実3)時代は変化している。

人生50年時代は働くしかなかった。人生80年時代は働く、学ぶ、休む。人生100年時代は、春夏秋冬。春は子供、夏は若者。秋はアクティブシニア、冬は死を見つめています。秋は、これまで人類史上存在しなかったんですね。世の中に春、夏、冬のデータはあっても、秋だけがないんです。秋のデータだけを獲得していけば、絶対に成功するわけですね。

では、この3つを捉えた上でピープルアナリティクスをしないといけません。

明日からはじめるピープルアナリティクス

まず、幸福という主観的なものを測定しないといけません。アンケート、脳の血流量、笑筋の動き、画像認識などの方法があります。

この中だとアンケートがまず手軽ですね。信頼性のあるアンケートを再利用するのが大事です。論文とかでなんども使われているものが良いでしょう。かつ、回答者の負担が少ないアンケートにすることが大事です。

例えば、ハッピーですか、って聞くだけとかはダメですよね。それに回答数50問とかじゃダメですよね。

Q12(キュートゥエルブ)
米国の調査会社ギャラップが開発した従業員エンゲージメントに関する12問のアンケート

eNPS
米国の大手ベインが提唱した従業員のロイヤルティ可視化指標。たった2問で測定する。

おすすめはQ12です。eNPSの質問は、6までが批判者です。日本の場合、アメリカと幸福の考え方が違うんですね。アメリカは10から下げていくのですが、日本だと5から考えるんです。そのため、NPSが日本に適用しづらいというものがあります。また、推奨者-批判者になるわけですが、これは数学的にばらつきを全く考慮していないんですね。

(1)50%-40%=10%
(2)20%-10%=10%

この2つの場合、eNPSは同じ10%として評価することになるわけですね。Q12が日経新聞に掲載されていたりします。「熱意ある社員が6%・・・」みたいな記事ですね。

Q1:職場で自分が何を期待されているのかを知っている
Q2:仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている
Q3:職場で最も得意なことをする機会を毎日与えられている
Q4:この7日間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした
Q5:上司または職場の誰かが、自分をひとりの人間として気にかけてくれているようだ
Q6:職場の誰かが自分の成長を促してくれる
Q7:職場で自分の意見が尊重されているようだ
Q8:会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる
Q9:職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている
Q10:職場に親友がいる
Q11:この6カ月のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた
Q12:この1年のうちに、仕事について学び、成長する機会があった

という12問です。世界平均は3.6。3.8以上だとよくて、3.3以下だとまずい、と言われています。

さらに会社の原動力がわかります。経営者、マネージャー、社員がいたときのことを考えます。3者にわけたときに因子分析をすることができます。

今日からはじめる社内の相性診断

ダニエル・ネトルの「パーソナリティーを科学する」という本があります。12問のたった短かい質問で分析できます。例えば、外向性、神経質傾向、誠実性、調和性、開放性などのビッグファイブがわかります。最近、注目されているのは誠実性。セルフマネジメント能力がわかるからですね。

相性診断は、異質性が高い上司・部下がわかったり、同質性が高い上司・部下もわかったりします。同質性が高いと相性が良いと言われています。異質性が高い上司・部下だった場合も、クリエイティブに走る場合と喧嘩になる場合にわかれたりします。

パーソナリティーマッピングで 5次元を2次元に圧縮して表示することができます。近いもの同士をグルーピングし、ネーミングすることで関係性がイメージしやすくなります。

一番相性が悪いのは、誠実性が高く神経質傾向が低いマネージャーと、誠実性が低く神経質傾向が高い部下は相性が悪いんですね。こういう上司は「なんでおまえ仕事できないの」、って言ってしまうんですね。でも、神経質傾向が高い人は通常より過敏に反応してしまうんです。

バラバラだと多様性があり、一箇所だと同じような人が多いということになります。イノベーションの場合は多様性を重視し、スピード重視の場合は一箇所の方が良いでしょう。

これを応用すると配置転換とかに活用できます。ここまでは大変でも相性診断までは動物占いっぽくやってみるとよいでしょう。

まとめ

・幸福という視座を持て
・いまある常識を疑え
・時代の大きな変化を捉えよ
・確率思考から複雑思考へ

複雑な現象を複雑なまま捉えることが大事。人に関してはまさにそう。どうもありがとうございました。


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窪田望

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