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『 データとガイドラインから読み解く今行うべきSEO 』サイバーエージェント SEOラボ 研究室長 京都大学経済学研究科 研究員 木村 賢さん

今回の内容は以下の通りです。

検索エンジンは検索者のニーズとウェブのトレンドに合わせて進化しています。SEOにはそれに合わせて変化しなければならないことと変えるべきではないことが存在します。当セッションでは、Googleの品質評価ガイドラインや検索エンジンで上位表示されるウェブサイトの傾向、ユーザーが好むウェブサイトの傾向を踏まえて、どのような対策を立てていくべきなのか検討していきたいと思います。

そもそもユーザーのためのコンテンツって何なのか、そこを考えていきましょう。

自己紹介ですが、サイバーエージェントのSEOラボ研究室室長をやっています。アメブロのSEOなどをやっていました。プロフィールとしては以下の通りです。

2003年サイバーエージェントに入社。 SEO事業を立ち上げ大手航空会社、バイクメーカー等多くのサイトのコンサルティングを行う。 2013年にメディア部門へ異動しインハウスSEOチームの立ち上げアメブロ等の自社メディアのSEOを担当。 2012年より京都大学経済学研究科とユーザーに好まれるコンテンツやウェブサイト構造の研究に取り組む。CSS Nite,Web担当者Forumミーティング,GoogleDance(Tokyo,Osaka,Zurich)等講演。著書に「たくさん読まれるアメブロの書き方(技術評論社)」「海外カンファレンスの歩き方(翔泳社)」。Google Advanced Hosting Meetupメンバー。

先週日曜に自宅に設置した懸垂マシンでマシンごと落ちて腰を強打し、骨盤を亀裂骨折しています。落ちる、というのは、SEO上縁起が悪いのですが、オチのない話をしていこうと思います。

(会場爆笑)

データから見る現在の検索結果の特徴

intent別に検索を見ていきましょう。intentは意図のことです。買うため、行くため、やるため、知るためなんて分類できたりしますね。左であればあるほど、Transactionalで右であればあるほどInformationalと呼ばれたりします。

エアコンというキーワードはTransactionalなんです。ヨドバシなど・・・。ここは大手ばっかりなんです。

Informationalクエリーとして「Facebook 退会」を見ていくと、小さい会社も出てくるんです。

 - 検索Intentごとに500クエリーを抽出
 - 500クエリの順位&URLを取得
 - 各URLにおける様々なサイトを分析

サイト/ページや運営者を構成する要素などについては、サイト/ドメイン全体・ページ・運営者のデータを取っていきます。whoisを見たりして、アノニマスになっていないかチェックしました。

また、サイト/ページに集まる外部の要因として、被リンク数やSNSのリンクなどをチェックしていきます。SNSはno followになるので、リンクにはなりません。ですが、「メンション」として定義します。

サイト/ページにおけるユーザー行動についてはSimilerWebAPIを元に抽出しました。

これらの要素やランキングの関係をTransactionalクエリとInformationalクエリを調べていき、箱ひげ図にしていきました。

LPの文字数については、TransactionalクエリとInformationalクエリどちらもコンテンツボリュームについては優位性があることがわかりました。では、キーワード数についてはどうでしょう。キーワードについても多い方が上がりやすい結果になりました。これは率・数ともに同じ傾向にありました。

次は直帰率です。Informationalなクエリーは上位にいるもののほうが直帰率が高かったんです。「換気扇 掃除」に関してすごくいい情報を得たらどうしますか?すぐ換気扇を掃除するんですよね。次は「洗濯機 掃除」についての他の記事を見たりしないですよね?

一方、Transactionalについては、直帰率が下がりやすくなります。これは回遊して購入につながるからですね。

滞在時間はどうでしょうか。Informationalなクエリーはちょっとだけ高いんです。1ページに留まっている時間がないんですね。Transactionalは滞在時間は長い時間のものが優位でした。

では、被リンクについて考えましょう。InformationalなLPへの被リンクは、上位に集まっていました。しかし、Transactionalは違ったりするんです。被リンクが上位に集まっていなかったりします。例えば、アマゾンの商品ページにリンクを貼る人はなかなかいないですよね。

一方で、ドメイン単位での被リンクについて、Informationalなクエリーはそんなに相関がないんです。でも、Transactionalの場合は大きく影響がありました。どのキーワードかによって被リンク戦略も変わるんですね。

サイテーションについては、Informationalはあまり相関しませんでした。Transactionalは大きく影響しました。言い換えると、Transactionalなクエリーは”有名なサイト”でなければ上がっていないんですね。例えば、Amazonとかですね。有名なサイトじゃないとサイテーションは増えないからですね。

一方で運営者実態確認についてはどうでしょうか。実はInformationalもTransactionalも、上位表示になっているところはキチンとされていました。

Informational、TransactionalともにPageSpeedInsightは70点以上が多かったです。

Informationalクエリーキーワードがテーマのページ数が何個あるか、これは大きく相関していました。Transactionalはよりこの傾向が強いんですね。有利なことは間違いないが、Transactionalの方が強いんですね。

Google品質評価ガイドライン

では、なぜそうなるのか。Google品質評価ガイドラインを見ていきましょう。ガイドラインの結果がテスト結果になってアルゴリズムに組み込まれていると言われています。品質ガイドラインで特に注意するポイントは以下の通り。

1.Googleの考える高品質なコンテンツ(E-A-T、メインコンテンツボリューム、運営者情報、クリエイターの評判が良い)

2.NeedsMet(モバイルユーザーの検索を的確に捉えているか)

YMYLの領域は高いE-A-Tを求めなさい、というのが一つの基準です。お金や医療に関することだけではなく、ショッピングサイトもそうなんですね。Transactionalは高いE-A-Tが求められます。

E-A-Tはサイテーションで調べていく

オンラインコンテンツでのメンション指名検索の数とかになります。そのため、この分野は大手に勝ちづらいんですね。

 - TransactionalはE-A-Tを必要とする
 - Transactionalはサイテーションを必要とする
 - Transactionalは大手しか上がりづらい

この状況を踏まえて何をすればいいでしょうか?

今取り組むべきSEO

大手サイトしか勝てないTransactionalではなく、中小サイトはInformationalのことを考えた方がいいでしょう。Informationalの戦い方は、検索者の知りたいことに対して、十分なボリュームを確保したコンテンツを作成するのが良いでしょう。

札幌ラーメンと検索した時に、札幌ラーメン 早朝というキーワードを見つけたりします。その上で競合よりコンテンツ量を大きくする、みたいな戦い方をする会社が多いですね。

これやると、「そもそも、札幌ラーメンとは?」みたいなことになっちゃうわけですね。昔のキュレーションサイトは、コンテンツボリュームを高めていたんですが、オリジナル要素を上げるのが、今はあがりやすいんですね。

「おすすめの札幌ラーメン55選」みたいなものも今落ちやすいです。あまり上がらないんですね。観光地について考えるときは、「定番」「穴場」「子連れ」みたいな切り口もあります。また、「観光地 おすすめ」もあれば「観光地 おすすめできない」みたいな作り方もあります。このようにユニットで戦うと勝ちやすかったりします。

Informationalクエリーの戦い方

ある時、「鎌倉 卵焼き おざわ」でずっと一位のサイトがありました。誰がどう見ても、ひとめで見てなんのコンテンツなのか、すぐにわかるようなコンテンツになっています。すぐにわかる、と違う、と思って出るということはあまりありません。

情報コンテンツは読了を目指すのが大事です。ヒートマップを見て、読了率の高さを見ていきましょう。ボトルネックの調査をし、見出しや画像の改善をし、コンテンツ改善をするのが良いでしょう。

サービスサイトとコーポレートサイトは必ずリンクさせ、運営者がしっかりしていることを示しましょう。

PageSpeedInsightについては実際に見ていくと、高得点なところばかりです。そのため、今後は遅いと落ちやすいということはあるかと思います。JSまわりの改善をしてなるべく早くするようにしましょう。

発リンクを設置するとどうなるでしょうか。品質ガイドラインの中でもコンセンサスという言葉が18回も登場します。リンクによって根拠を主張するというのが重要です。権威ある論文などに出すと実はランキングが上がりやすいんですね。

被リンクについては、期待を超えるコンテンツ・SNS活用・ADなど色々ありますが、簡単ではないので、地道にやるしかないところになります。

Transactionalクエリーの戦い方

業界地位が高いこと
取扱件数が大きいこと

この2つが重要なんですね。でも、SNSで有名にするのは無理ですよね。過去これに成功したのはトリバコくらい。なぜできたかというと、CM打ったからです。

有名な企業はサイテーションのつき方が最初から違うんですね。

では、取扱件数が大きいことなんですが、これはどうやってGoogleが認識するんでしょうか。冷蔵庫が1万種類あったとします。クローラーはまず「このサイトは冷蔵庫が1万種類あるぞ」、と考えます。一方で3件だとどうでしょうか。クローラー&インデックス改善はトピックの厚さを伝えるのが非常に重要です。

大規模サイトの場合、クロールバジェットを意識する必要があります。1日の間、このくらいの数しかクロールできないというものがあるんです。限られたクロールの中でどうクロールしてもらうか、が大事です。

必要なURLだけGooglebotに発見させ、クロールさせるかが大事です。商品Aと商品A'のサイトがほとんど同じ、なんてことがあったとき、これってクロールしてもらっても無駄ですよね。薄っぺらいコンテンツはクローラーを回さないほうがいいんですね。

1)クロールさせないページを決める
2)クロールさせないページのクロールブロックをする
のがむしろ大事なんですね。

さらに、該当ページへのリンクの場合はno followを作ったり、robot.txtでdisallowしたりします。

さらにクロール優先度高、中、低、みたいに分類します。高いところはRSSでプッシュします。中はサイトマップに掲載します。クロール優先低いところはサイト内リンクを減らすのが良いでしょう。

大規模サイトの場合、sitemapの生成は重要です。sitemapは5万URLまでしかありません。その場合、sitemapを分割する必要がありますが、そのsitemapは分割したそれぞれの一番上を優先順位の高いページにしていくといいでしょう。

業界でのポジションを認識して無理のないSEO戦略を立てましょう。


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