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#仕事2.0イベントレポート/変化を恐れず、人生100年時代を生き抜くために

人生100年時代を生き抜く術をまとめたNewsPicks Book『仕事2.0』をテーマに、8月3日、産業医の大室正志先生がモデレーターを務めるイベントがNewsPicks Roppongiで開催されました。

ゲストは『仕事2.0』の著者でありNewsPicks副編集長の佐藤留美さん。

そして、『転職の思考法』(ダイヤモンド社)を出版し、発売から1か月半で8万部を売り上げている北野唯我さんです。

大室先生が2人の著者に鋭く切り込んだトークイベントの模様をレポートします。

本当は怖い「働き方改革」

佐藤留美さんが『仕事2.0』を書くことになったきっかけは、経産省や厚労省への取材の中で、働き方改革の本質は国が国民に自立してくださいと言っていると気づいたからだといいます。

つまり、企業が従業員の一生の仕事を保障しきれなくなった今、何とかすることが個人に求められています。

留美さんは、このメッセージを伝えようと『仕事2.0』を書くことにしたと話します。

人生100年時代は、複数のコミュニティーで活躍する時代

リンダ・グラットン氏が『ライフ・シフト』(東洋経済新報社)の中で、「50歳未満の日本人は100年以上生きる時代を過ごすつもりでいたほうがいい」と警鐘を鳴らして以来、100年の人生を前提とする考えが日本でも浸透してきています。

かつて昭和の猛烈サラリーマンのゴールは55歳だと考えられていましたが、それが70歳まで伸びようとしています。

一方、現代の会社の平均寿命は25年。人のキャリアの年数よりも、会社の寿命が短くなってきました。

しかも、終身雇用の元、転職することがほとんどなかった昭和型会社人間は、会社外にコミュニティーをあまり持っていません。

そんな人に対して、仕事をスライドしていけるような複数のコミュニティーを持つことがリスクヘッジになると留美さんは話します。

それに、単純にコミュニティーに入っていると楽しいし、人生が豊かになります。

でも、それは同時に疲れることでもあります。

留美さんがNewsPicksに入社するまでのフリーランスの10年間は、コミュニティーをたくさん持たないとやっていけなかったといいます。

それが会社員になって4年たった今、会社という単一コミュニティーにどっぷりつかるのは気持ちがいいと思うようになったそう。

そうなってみると、複数のコミュニティーに関わることは厳しいし、疲れることです。

でも、それをやりましょうということを『仕事2.0』では書いたとお話しされました。

「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へのシフト

ここで無視できないのは、日本企業の雇用形態に変化の兆しが見て取れることです。

従来の日本の大手企業はメンバーシップ型が多いといわれています。
メンバーシップ型の会社では多くの保障が得られる反面、職務・勤務地・労働時間が選べない、いわゆる”三無”が特徴です。

海外の企業では職務が変わることは通常ないのに対し、日本のメンバーシップ型の企業では、全く異なる職務に突如として異動になることもよくあります。

例えば、日本のテレビ局では、ドラマのプロデューサーが経理に異動するようなことが普通に起こりますが、これは世界的には珍しいことだそう。

他方、ジョブ型は、例えばNewsPicksの編集部に入ったら、編集の仕事だけをずっとやる形態です。

メンバーシップ型の利点は、みんなでトーンをそろえて一斉に進めやすいことですが、今の日本では、メンバーシップ型で人を無期に雇用することを企業が約束できなくなってきているそう。

そのため、今後は日本でもメンバーシップ型からジョブ型へ移行していくとだろうとお話しされました。

これからの時代、ジョブ型への移行にうまく適応していく必要がありそうです。

ルーキーに年齢は関係ない

そんな人生100年時代に向けて、あなたは準備ができているでしょうか。

留美さんは、『ルーキー・スマート』という本から、「ルーキーらしさを取り戻すための方法」を引用されました。

『仕事2.0』p.102より

こちらのチェックリストに当てはまるものはいくつあるでしょうか?

実績を出している人は日々の業務に忙殺されるだけでなく、あえてこれらの日常業務とは違うことをしているといいます。

更に、「新しい試練が必要な人の10の兆候」も引用されました。

『仕事2.0』p.103より

こちらのチェックリストに3つ以上当てはまるものがある方は、新しい試練に臨むべきだと提言されています。

コンフォートゾーンから抜け出してみることこそが、「賞味期限が切れたベテラン」に陥らないための極意だといいます。

留美さんご自身、仕事が好調だったフリーランス時代にNewsPicks参画の打診を受けたそうです。入社の決め手になったのは、当時、ご自身が成長していないという実感があったということ。

NewsPicksに入ると、それまでの紙媒体のやり方を変えざるを得ない部分も多く、インターネットメディアのスタイルを一つずつ身に着けていかれたそうです。

マーケットバリューの三要素

イベントの後半は、『転職の思考法』(ダイヤモンド社)の著者 北野唯我さんを特別ゲストに迎え、自己のマーケットバリューの測り方についてトークが続きました。

単純に転職を勧めるわけではなく、いつでも転職できるというカードを持っておくことを勧めているという北野さんは、マーケットバリューの三要素として、以下の3つを挙げます。

【マーケットバリューの三要素】
技術資産:専門性。経験。

人的資産:社内でどれだけ信頼されているか。社外から仕事をお願いしてくれる人がどのくらいいるか。

業界の生産性:どこを選ぶかが重要。稼げる業界とそうでない業界がある。

マーケットバリューは、これら3つの要素の掛け算だといいます。あなたはそれぞれの要素を、どれだけ貯えているでしょうか。

更には、20代では技術資産やスキル・専門性を磨くべきで、30代ではスキルよりも経験を得ることにより人的資産を貯えるべきだといいます。

北野さんの場合、20代の頃、経営企画や事業開発に関する技術資産を貯めていたこともあり、どこに転職しても大丈夫だという確信があり、実際転職もされたそうです。

マイノリティー経験がいつか役に立つ

マーケットバリューの三要素に加えて、大きな強みになるのはマイノリティーの経験だといいます。

会社で日の当たらない仕事をしていたり、上司とウマが合わなくて冷たく扱われたというようなマイノリティーの経験をしていると、少しくらいのことでは落ち込まなくなり、今後の強みになると留美さんは仰いました。

北野さんもマイノリティ経験をたくさんされています。
「転職の思考法」は物語形式で書かれていますが、実は北野さんご自身が執筆したそう。というのも、北野さんは23歳の頃、シナリオを2年間習っていたそうです。
当時、広告代理店勤務で忙しい中、平日の夜にシナリオ講座に通っていたため、同僚からは「なんでそんなことをやっているの」と言われていたそうです。
でも、人には理解できないことをするのは、実際にはチャンス。シナリオライティングの勉強も著作という形で後に役に立ったわけで、そういったことを突き詰めるべきだとお話しされました。

イベントの最後には、参加者にエールが送られました。

留美さんは、好きでかつ伸びる業界に行くことを勧められました。
好きなことであれば仕事が楽しいし、伸びる業界は活気があり、質の良い仕事をする方が集まってきます。
そういった環境だとやる気が出るし、情熱がわきます。

「キャリアのスタートは専業主婦でした。だから自分には仕事ができるだけで幸せだし、うれしいという原点があります。」とご自身のマイノリティ経験もお話しされました。

パワーの源はまさにこういうことなんだと納得し、そういった原動力を大切に人生100年時代を切り開いていきたいと感じたイベントになりました。

イベントの後にはたくさんの感想がツイッターに寄せられました。

※本記事は、2018年8月3日(金)に開催されたNewsPicksアカデミアイベント「仕事2.0〜人生100年時代の“変身力”〜」(登壇:佐藤留美 ・大室正志・特別ゲスト:北野唯我氏)」をまとめなおしたものです。

登壇者プロフィール:

佐藤留美
2014年7月からNewsPicks編集部に参画、2015年1月副編集長に就任 。『凄母』(東洋経済新報社)、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)など著書多数。
大室正志
産業医科大学医学部医学科卒業。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社統括産業医を経て現職。メンタルヘルス対策、インフルエンザ対策など企業における健康リスク低減に従事。現在約30社の産業医業務に従事 。
北野唯我
ワンキャリア 執行役員
ダイヤモンド社より著書『転職の思考法』発売

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文:宮崎 恵美子

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