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完全読解!テクノロジー地政学/蛯原健ゼミ第3回レポート【2019年春学期】

2019年4月から開講しているNewsPicksアカデミア春学期ゼミ。
第2回を終え参加者の熱も高まっている蛯原ゼミですが、引き続き第3回もシンガポール在住ベンチャーキャピタリスト・蛯原健先生より、これからの世界を多角的に捉える考え方を学びます。
今回は、参加者の金子さんによるゼミの講義レポートをお届け。必読です!

第1回第2回のレポートも併せてご覧ください。

今回、ゼミ生の金子が第3回の講義についてレポート致します。

*もし内容に事実と異なるところがありましたら、私が講義についていけなかった部分があったか、または聞き間違えてしまったか、そういった類のものかと思います。もしそういう箇所を見かけましたら、どうか温かいお気持ちで既読スルー頂けたら幸いです。

第3回講義のテーマ:中国

5月8日に行われた第3回の講義のテーマは「中国」。実はこのテーマ、本当は後の回で行う予定でした。ところが講義の当日、トランプ政権による対中国の関税25%引き上げについてどのメディアも一斉に取り上げたことから、「旬なうちに”中国”について講義しよう」とのお考えのもと、第3回に前倒しとなりました。

① 米中テクノロジー冷戦

まず、今まさに起きている「米中テクノロジー冷戦」をキーワードに、講義が始まりました。

講義内容:
「冷戦」という言葉は次の3つに因数分解できる。
「 安全保障」「貿易」「テクノロジー」

第2回の講義にもあったフレームワーク「歴史に学ぶ」を適用してみると、現在の米中テクノロジー冷戦は、1980年代の日中貿易摩擦と類似していることがわかる。
・共和党の大統領で not プロ政治家
・強硬派のロバート・ライトハイザーが交渉役
そして、1980年代の日本はその後、バブル崩壊を迎えた。同じ歴史を繰り返す可能性が高いとすると中国経済も急降下する可能性があると見て取れる。

ちなみに、1980年代はレーガン大統領でした。
↓は現在のライトハイザー通商代表の写真です。

ということで、現在起きている米中テクノロジー冷戦と1980年代の日米貿易摩擦はよく似ているのですが、一方で、1980年代の日米貿易摩擦の時とは類似していない点もあるといいます。それは以下の点です。

講義内容:
日米貿易摩擦では、日本政府は米追従スタイルで、アメリカの要求を全て受け入れていた。一方、現在の米中テクノロジー冷戦では、中国はアメリカの要求に抵抗している。この点、過去の日本の姿勢とは類似していない。

しかし、アメリカの経済が現在好調で(近く米株価が史上最高値になろうとしている)、純粋な経済戦争ではアメリカが優位であることと、以前にもアメリカが中国に対して関税をかけた時に中国の株価が大きく値下がりした事実から、今回の高関税によってやはり中国株が大きく下がるのではないかと考えられる。

と、さらっと書きましたが、さすが経済学にも強い蛯原先生。上記の説明は凄く説得力を帯びていました。

そして、現在の米中テクノロジー冷戦について「今日はとにかくこのキーワードだけは覚えて帰ってほしい」と蛯原先生が教えてくれたのがこちらです。

講義内容:
"Forced Technology Transfer" (強制的技術移転)
中国はアメリカの技術を "Forced Technology Transfer" している。
(詳細は、THE WALL STREET JOURNALの↓の記事を参照)

まず、中国で事業を展開するには、中国企業と合弁した法人を立てる必要があり、欧米は中国市場で事業ができる代わりに「技術提供」を見返りで求められている、というのが基本構造です。しかし、この記事を読むと「アメリカはアメリカで、中国は中国でちょっとやり過ぎなのかな」と、日本人感覚としては思ってしまうような内容が書かれていました。少し長めの記事でしたが一読の価値はあると思います。

なお、記事の中でこれは面白いと思った言い回しが二つあったので引用します。

「パディラ氏は夕食会でこう話した。「暗い路地で誰かがナイフで刺されても、翌朝になるまで誰がやったのか分からない。それでも殺人はすでに起こってしまっている」」

「ピーター・ナバロ大統領補佐官(通商担当)は「中国市場への参入に意欲的な米国企業が世間知らずで傲慢(ごうまん)だったことに加えて、中国が手の込んだやり方で技術を入手しようとした。命取りの組み合わせだ」と話した。」

② 中国企業のメリット・デメリット

次に、中国企業であることのメリット・デメリットについて教わりました。

講義内容:
中国企業であることのメリット:
・中国市場で独占(外資を排除できるため)
・中国国内の市場が大きい
・高い技術力
・労働コスト低

デメリット:
・海外企業と取引しづらい
(党・軍と関係がある?と勘ぐられ、距離を置かれやすい。実際は誰にもわからないのだが、そういう捉え方をされやすい)

メリットの方に挙げられている「高い技術力」。これを聞くと、我が国日本は果たして今どれだけ置いていかれているのだろうか…と思ってしまいます。

③ 中国の政策

次に中国の2つの政策に話題が移りました。以下の2つがその政策です。

講義内容:
1. 「中国製造2025」:精密製造業世界一を目指す。アメリカはこれを潰しにかかっている。米国内で中国企業のトップの事件等はこの潰しの一部。
2. 「一帯一路」:アジア、中東、アフリカをつなぐ経済圏構築の構想。

どちらも世界における中国の位置を大変意識したもので、ここでも、なんで日本はこういうのがないのだろうか… と思ってしまいます。

蛯原ゼミに参加すると日本の周回遅れ具合が感じ取れて、自分自身をドライブさせるきっかけになるーーそういう刺激を頂けます。

④ 日本と中国

次に日本と中国の関係について触れられました。講義の主な内容を挙げます。

講義内容:
日本には外資による企業買収を禁止する法律がない。中国が中小企業を買いたい放題の状態。ヨーロッパ諸国が法律を整備して外資から自国を守っているように日本もまずは自国の企業を守る必要がある。

日本は現在ザルであるということ… 。新しい法律を作るということ自体に、日本人には独特な抵抗感があるのかもしれません。あるいは単純に法律リテラシーが低いだけなのか…。

⑤ 中国の経済発展

最後の話題は、「中国の経済力」についてです。講義で学んだことは以下です。

講義内容: 中国の現在の経済レベルは米国と同程度で、R&Dに投資する額もほぼ同じ。中国の経済発展のスタートは約40年前に鄧小平が改革開放を行なってから。中国は経済的に成長して以来、テックに投資できるようになった。実は中国は1500年以降産業革命まではテックが強い時代だった。2017-2030の期間は、世界的にAIによるGDPへの貢献が15兆円と予想されているが、その内の半分は中国が持っていくと見られている。

上の図を見ると、日本のR&D投資額は、米中とは比較にならないほど小さいです。

日本は地理的特性を活かさないと本当に生き残れないか、生き残ったとしてもちょっとまずい状態、それこそ風紀的もまずい状態になってしまいそうな気がします。そうならないよう、志のある仲間達と一緒になんとかしないと、と超微力な自分でもそう思いました。

なお、鄧小平については、先ほどのTHE WALL STREET JOURNALの記事にも少し記載があります。少し記事を引用しますと、鄧小平は1984年当時に以下のように語っていたそうです。

「(中国は)われわれが必要とする進んだ技術と引き換えに国内市場の一部を手放す必要がある」」

その他

以下は、講義の中で出てきたキーワードです。気になった方は、Google検索で確かめたり、知識を深めて見ても良いかもしれません。私も時間を見つけて知識を深めて行きたいと思います。

講義内容:
・中国には軍や共産党を絡めた独特の「わからない」ところが多い。世の中のニュースにはそれをあたかも知っているかのように書いているものが散見される。
・上部構造、下部構造(下部が経済、上部はその他全て)
・2014年以降、全世界での未上場企業への投資額の方が上場企業へのものよりも大きくなっている。重要なエポックが切り替わった点と言える。
・比較優位論:人・規模が優位(~1700)→ 技術が優位(1700~2010)→ 人・規模が優位(2010~)と周期的な傾向がある
・米で成功しているアジア系は中国人ではなく台湾人が多い。(中国人は帰国する傾向)
・今は、共産主義スタートアップ VS 資本主義スタートアップの構造。人類レベルの実験がなされている。

最後のキーワードは、先日の竹中平蔵氏の講演会でも全く同じことを教わりました。「中国国家資本主義 VS 米自由資本主義の構図であり、これは長期化する」とのこと。そういう点では日米貿易摩擦とは次元が違っていそうだと思いました。

全体を通して

現在、多くの分野においてグローバル企業やベンチャー企業が競合であり協業先なのではないかと思います。これからの事業を考える際、その事業の狙いや目的を可能な限り"外さない"ようにするためには、否が応でも世界で起きていることを正しく捉えることが必要になるはずです。

蛯原ゼミは、テクノロジー地政学を武器にして、世界がどのように変化しているのかを見極めるフレームワークを学ぶ場として、大変ためになります。

第3回の講義では「中国」という、今を語るのに外せない大きなテーマでした。今後の米中関係や中国がどのような方向に向かっていくのか、それに伴って日本が受ける影響はどういうものか、これらをテクノロジー地政学のフレームワークを使いながら洞察し、所属するそれぞれのコミュニティの中で自分が何をすべきなのかを冷静に見極めて行動しなければならない。そんなことを思わせてくれる講義でした。

執筆:金子

<プロフェッサープロフィール>

蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー。1994年、横浜国立大学経済学部卒、㈱ジャフコに入社。以来20年以上にわたり一貫しスタートアップの投資及び経営に携わる。 2008年、独立系ベンチャーキャピタルとしてリブライトパートナーズ㈱を創業。 2010年、シンガポールに事業拠点を移し東南アジア投資を開始。 2014年、バンガロールに常設チームを設置しインド投資を本格開始。 現在シンガポールに家族と在住し、事業拠点はシンガポール、インドと東京の3拠点。


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