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若手起業家、就職を語る(朝倉祐介×前田裕二イベントレポート)

就職は起業の役に立つのか。

二人の若手起業家 朝倉祐介さん(シニフィアン株式会社 共同代表)と前田裕二さん(SHOWROOM株式会社 代表取締役社長)が、就活生からの質問に答えるトークイベントが開催されました。

二人の共通点は、いわゆる「外資系」企業でキャリアをスタートし、その後起業したということ。新卒時、朝倉さんはマッキンゼー・アンド・カンパニー、前田さんはUBS証券に就職しています。

「外資系」での経験はその後の起業に役立ったのか。経営者として、どんな人を採用したいのか。

会場には、いつかは起業したいという学生も多く集まり、たくさんのQ&Aが飛び交いました。

就活生だけでなく、何かを成し遂げたいビジネスパーソンに響く言葉の数々。そんなトークの模様をご紹介します。

Q.就活の軸は何でしたか?

早く成長するために、自分に負荷をかけられる場所に身を置きたかった。(前田)

学生の頃から起業したいとの思いがあった前田さん。とはいえベンチャー経営には、自分の能力の総量が100であるなら、150、200といった負荷を課しながら筋トレのようにやっていく必要があると考えていたそうです。そのため、「リストラ」のある投資銀行への就職を決め、自分に負荷をかけることで、できるだけ早く成長することを目指したといいます。

Q.大企業への就職経験はその後役に立っていますか?

「問題解決の手法」といったテクニカルなスキルよりも、仕事への向き合い方といったソフト面を鍛えられたことが役に立っている。(朝倉)

朝倉さんがマッキンゼーで働いたことで役に立っていることは、成果を発揮するために死ぬ気で考える姿勢やマインドセットが身に付いたということだといいます。

Q.採用するときにみているものは?

地頭の良さや英語力といったハードスキルもみるものの、会社と思いがあうかといったソフト面を重視する。(朝倉)

そもそも就職は、受験や資格試験とは違って、相手の事情があって決まるもの。恋愛や、結婚に近いといいます。そのため、相性があうかということを確認するために、面接では色々な角度から質問するそうです。

だから、たとえ選考で落ちたとしても人格否定をされているわけではない、落ち込む必要はない。朝倉さんはそう話していました。

一方の前田さんが採用でみるのは、以下の3点。

①仮説思考力があるか 
②会社の理念・価値観への共鳴度があるか
③愛の総量(性格がやさしく、おもいやりがあるか)

①の仮設思考力は、会社に入ってから教えられるものではないので、採用段階である程度確認するといいます。しかし、そういったハードスキルよりも、②の価値観への共鳴度や、③の愛の総量を重視するそうです。

それは、②③を重視して採用した人の方が、結果として会社への貢献度が高いと身をもって感じているから。

そこで印象的だったのが、前田さんの小中学校の同級生のエピソードです。

ゼロ歳から俳優をやっていた元同級生は、28歳まで俳優をやって芽が出なければ、演者を目指して努力する人を応援する役割にまわると決めていました。そんな彼がSHOWROOMに参画する時、前田さんは彼のハードスキルが弱いことはわかっていましたが、事業の方向性と本人の思いが一致し、それが並々ならぬものであったことから、採用を決めたといいます。

就職した当初、彼はPDFが何かもわからないところからのスタートでしたが、一日中トイレにも行かず仕事に没頭する日々を過ごした結果、3か月で社内でトップの営業成績をとるまでに成長したといいます。

意志の力が最終的なアウトプットに大きく影響することがよくわかります。

Q  集中して本を読むことができません。どうしたらいいでしょうか?

アウトプットする状況をつくってから、インプットする。(前田)

毎日1冊は本を読んでいるという前田さん。本のポイントを3つ抽出し、それを人に話すことを自分に課すことで、インプットを深めることができるといいます。

その前田さんも、自分の力だけでインプットを深めることは限界があるそう。そのため新卒で入った投資銀行の同僚に、「毎日1冊本を読み、そのポイントを3つ話すから『昨日何を読んだの?』と毎日質問してくれないか」と頼んでいたそうです。

そのような強制的なアウトプットの場を作ることがインプットを深める秘訣だといいます。

一方、読む気がおきないということは、それが必要のない時だとも朝倉さんはいいます。なぜなら、大学で学んで身についたことは多くないけれど、ミクシーの再生をしているときに必要にかられて読んだ本や、弁護士と話しながら勉強したことはその後の身になっているからだそうです。

Q.どんな本を読みますか?選ぶ方法を教えてください。

信頼している人が薦める本は即買いする。(前田)

前田さんは、本を薦められたら即座にKindleで購入するそうです。その場で読み始め、それについて語り始める程、そのスピードは早いとか。

本を薦められて、瞬時に買えるか。実際それができる人は多くはありません。だから、それをするだけで突き抜けられるといいます。

また、「ググるより前に、アマゾります」とは朝倉さん。最新の情報以外は、本でまとまった情報を得る方が早いことが多いので、そうしているそうです。

Q.就活の時に掲げていた人生のゴールは何ですか?またその後の経験でそれは変わりましたか?

「ゴール」や「やりたいこと」は経験することで変わっていくもの。(朝倉)

ゴールを掲げるかでいうと、トップダウン型、ボトムアップ型、そのどちらでもない派の3つにスタイルがわかれるといいます。

前田さんは、自分を突き動かす明確な原動力をもとにゴールを決めて、実行していく「トップダウン型」

一方、目の前のわくわくすることをひたすらやっていくスタイルが「ボトムアップ型」。堀江貴文さんや幻冬舎の箕輪厚介さんのほか、キングコングの西野亮廣さんもそれに当たります。

朝倉さんは、そのどちらでもない派。就活の時、これを人生で成し遂げようというミッションがなく、かといってずっとやり続けたい好きなことがあるわけでもなかった。そのため、色々な経験ができるコンサルティング会社に身を置き、巡り巡っているうちに、自分にフィットするものが見つかればいいと考えていたといいます。

朝倉さんは仕事をしていく中で、今の起業につながる志向性が見つかったとか。それはもともと自分にあったものかもしれないけれど、新卒の時には気づいていなかったことだそうです。そして、それは経験を重ねていく中でこれからも変わっていくものだと捉えているといいます。

Q. やりたいことはどうしたら見つかりますか?

やってみるまでは、それが好きか、自分に向いているかわからない。だから、まずは色々試してみることが大切。(前田)

就活生に限らず多くの人が抱えるこの問題。でも、「やりたいこと」はわからなくて当然だと前田さんはいいます。

本当は「たこわさ」が好きな食べ物かもしれないけど、それを食べてみるまでは、それに気づくことはできない。それと同じように、経験してみるまでは、本当にやりたいことを知ることはできません。

色々なことを経験し、自分の心のひだにふれるものがあるか試していくことが大切だと前田さんはいいます。そして、その経験を言語化していくことで思考が深まると。

「やりたいこと」が何かを考えすぎて何もできなくなることが一番のリスクです。とにかくやってみることが大切だといいます。

Q.  「離見の見」(客観的に自分と他人を見る目線)を身につけるにはどうしたらいいですか?

ステージに立つ。(前田)

能では、「我見」「離見」「離見の見」の三つの目があると言われています。

「我見」とはステージから客席を見渡す自分の目線。「離見」とは、客席が自分を見る目線。そして「離見の見」とは、その両方を俯瞰する宇宙からの目線のことを指します。

弾き語りのステージに立つことで、自分を客観視する目線を身につけられたと前田さんはいいます。

更に、「離見の見」を持つことで、「心」を強く持つことができるとは朝倉さん。

ビジネスでは、自分のエゴを捨てて心を強く持ち、あるべき方向に進められるかを問われる場面が多々あるといいます。そのためにも、客観的な目線を持てることが重要だといいます。

Q. 学生コミュニティを運営しています。人を集めるにはどうしたらいいですか?

旗印を掲げる。そして、人を動かせる人を動かす。(朝倉・前田)

今、人が動く理由は、「人」になってきているといいます。「誰かのことが好きだから動く」という人が増えているのです。そのため、人を集めるためには、人を動かせる人を動かすのが手っ取り早い。例えば、学生に支持されているキングコングの西野亮廣さんを動かすのも一案です。

そのためにも、どれだけの熱意をもって、人を巻き込めるか、旗印を掲げられるかということが大事だと朝倉さんはアドバイスしていました。

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熱気あふれる会場には、イベント時間内に質問できなかった方が何人もいました。そのため、ツイッターで質問すれば後日朝倉さん・前田さんが回答することになり、イベントは終了となりました。

*本記事は、4月4日(水)に開催されたNewsPicks就活イベントをまとめなおしたものです。(登壇:朝倉祐介・前田裕二、司会:最所あさみ)

<登壇者>

文:宮崎 恵美子
編集:柴山 由香

*その後ツイッターに投稿された質問に対する朝倉さん・前田さんからの回答については、こちらの記事をご覧ください。

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