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THE MODEL 新時代のマーケティング・セールスとは?/NewsPicksアカデミア福田ゼミ前半を振り返って

書籍「THE MODEL」を教材に、マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスなど多くのSaaS企業で導入されている組織論やプロセスを学ぶNewsPicksアカデミア福田康隆ゼミ。今回、第1回から第3回のゼミの模様について、ゼミ生のソフトウェアエンジニア金子さんがお届けします。

講義とディスカッションのゼミ

福田ゼミのキーワードは「マーケティング・オートメーション」、「インサイドセールス」。そんなこともあり、福田ゼミに参加している方の多くはマーケティングや営業の方が多く、私のようなソフトウェアエンジニアは少数派です。

講義の構成は、福田さんの講義が7割、ゼミ生同士のディスカッションが3割です。

講義では、2004年当時のSalesforce.comやマルケトのマーケティングやセールス等の取り組みがどうであったのか等、福田さんの苦労話も交えながら、書籍『THE MODEL』の内容について、本に書かれていない内容も加えつつ説明頂きました。

ゼミ生同士のディスカッションでは、自社のマーケティング予算の決め方、インサイドセールスの管理指標や目標値、どのようにマーケティングを実施しているのか等について議論しました。

また、「もし自分がslackの顧客接点のロールを責任を持つ部門長だったとして、10人を追加でマーケティングや営業に投入するとしたらどのような割り方をするのか?」など実践的なテーマについての議論も。

福田さんともインタラクティブにやり取りをしながら考えを深めることができました。

ゼミ生にミッションあり

ミッション:「各自、自社のTHE MODELを作る。」

これはゼミ当初から既に定まっていたミッションです。
まさに学ぶだけでなく、学んだ知識、知見、智恵を実際の仕事にスピード感持って実践するゼミでした。

過去の自分を振り返ってみると、自分の知識を社外どころか同じチーム内ですら人に教えることをしないことも少なからずありました。それが、情報の非対称性がなくなった結果でしょうか。今では会社間の垣根すらもなく、社会が前進できるのであれば、進んで共有しようという動きが一般的になりつつある気がします。

当然のことながら各ゼミ生の会社の商材はそれぞれですし、会社の規模や状況も異なるため、どのように顧客にリーチして商談に持ち込んで契約を獲得するか、サービス・商品を購入して頂くか、その戦略もそれぞれです。そのため、The Modelもその数だけできそうです。

私の場合、これまでソフトウェアエンジニアリング畑でばかり過ごしてきましたが、作り手観点での事業戦略や組織のあり方を考えるだけでなく、営業やマーケティング視点での考え方をゼミを通して少しでも得られればと考えています。

以降は、講義で学んだ内容(『THE MODEL』の本の内容とあまり重ならない部分)を感想も交えながら記載致します。

インサイドセールス

講義の中でよく出る言葉の「インサイドセールス」。まず大事な点として、インサイドセールスという役割を設置することを前提とするものではない、ということです。

インサイドセールスにも2種類あります。

顧客からの問い合わせに対し対応していくインバウンド型のSDR(Sales Development Representative)と、狙った顧客に働きかけていくアウトバウンド型のBDR(Business Development Representative)です。そのどちらをどの位の割合にするべきかは、商材の特性や会社の状況、目的によるとのことでした。

インサイドセールスには、下記のような6つのステージがあり、比較的良く意識高くマネジメントできているのが「New」のステージ。一方、少し見落とされがちなステージが「Working-Untouched」と「Working-Connected」のステージです。実際の運用では、この2つのステージにある数値と実態について、インサイドセールス一人一人でどうなっているのかフォローすることが重要とのことでした。

<インサイドセールスのステージ>

New: リードが割り当てられてから、未アプローチの状態
Working-Untouched: 電話とメールのセットでアプローチしているが、担当者とつながっていない状態
Working-Connected:担当者に直接連絡が取れており、商談に向けヒアリングとディスカッションをしている状態
Convert:営業に訪問/アポイントとしてパスする状態
Recycle:担当者に◯回以上アクションを繰り返しても連絡が取れない場合や商談に繋がらなかった状態
Archive:担当者に直接連絡が取れたが、競合や相手が学生など今後もアプローチする可能性がない状態

"The Model"の指標について

「The Model」というと次のような指標を認識している人が多い傾向がありますが、一つ一つその数字の背景を抑えることが重要といいます。例えば「来訪者数」と言っても、Webサイトへのアクセスもあれば、電話によるアクセスもあるし、そのアクセス数は、定常的なマーケティング活動の結果として来たものなのか、セミナーや大きめのプロモーションを実施した直後にアクセスして来たものなのか、その意味や背景を理解することが重要です。絶対値を見るのではなく、そういったトレンドを見ることが大切であるとのことでした。

来訪者数 x  獲得率 = リード(見込み客数)
リード x 案件化率 = 案件数(商談化)
案件数 x 受注率 = 受注数
受注数 x 更新率 = 継続数

また、時間軸を踏まえて見ることも重要であり、例えば、商談化するまでの時間がどれくらいかかるのかによって、実績の見方、案件化率の見方が異なってきます。インサイドセールスの評価の仕組みは、実際の運営時には大変重要になってくるため、決めの問題ではあるものの「The Model」を考えていく際には、これらの数値をどう設定するかを検討することが重要とのことでした。

マーケティング・セールスで理解すべき「4つの不」

一から商品を検討する際、次の顧客が抱く次の「不」をクリアするようにしていくことが大切だといいます。

不信:その会社はどういう会社なのか
不要:なぜそれが必要か
不適:なぜその商品が適しているのか
不急:なぜ今それを顧客が買う必要になるか

このうち、「不要」を切り抜けるような経験をすると営業として力がつくそうです。というのは、例えばITの営業で割とよく見られるものとして「不適」をクリアするところから入ろうとする会社が多く、顧客にはそのニーズがある前提から入ってしまい、競合製品と自社の製品の比較から説明に入る格好になったりしがちである、とのことでした。

個人的にふと思ったのは、世の中にはとりあえず作るのは良いとしても、「不要」の壁を超えずに割とあっさりと出荷までしてしまった製品・サービスが意外と多いのではないでしょうか。

マーケティングのミッションの変遷

福田ゼミでは、マイクロソフトでのマーケティングのご経験を持つ鶴原さんがサポートの形で参加し、マーケティングには過去以下のフェーズがあったと紹介されました。

マーケ黄金期(〜2010):
  
マーケティングは花形。集客数と満足度がKPIとされていた時期。
マーケ暗雲期(2011〜2013):
  リード創出額がKPI。MQLの投入が促されていた時期。
MA導入期(2014〜2016):
  マーケ予算縮小。中小セグメントはWebインバウンド重視に。
エンゲージ重視期(2017〜):
  大企業向けと中小企業向けに分かれてマーケ活動を実施。
  カスタマーサクセス、インサイドセールスFTE化。

鶴原さんはマーケティングと営業の両方のご経験があることもあり、マーケティングと営業で大切しているところや考え方の違い、リードの中身やパスするタイミングの微妙な点について、リアリティを持って感じることができました。

製品自体がチャネル

SaaSではない商材、買い切りのものだと、受注後の顧客の状況を知るのに人海戦術(人が顧客のところに行って確認する)しかなかったが、SaaSであれば顧客の利用状況やリスク自体を自動的に取得できるようになったことがSaaSの最も画期的な点と考えていると福田さんはおっしゃいました。いわば商品自体が顧客接点のチャネルになった格好であり、この点はSaaS以前の商品と比べて大きな差別化になっているというのです。

ふるいにかけるのでなく、どうしたらリーチできるのか

大手企業だけでなく、中小企業に対してもターゲッティングは重要であり、ふるいにかけて残ったリードを攻めるのではなく、事前にロイヤルカスタマーを描いてそこにリーチする方法を考える、という方向で進めると効果的なマーケティングができるそうです。
確かにボリュームが大きいリードを偶発的に得ることができても、そこに将来ロイヤルカスタマーになる確度の高いリード、これがどれほど入っているのかは別の話であり、リード数の大小だけ見て判断しないよう注意する必要があると思いました。

福田ゼミ前半で一番大事だと思ったポイント

あくまで私個人が感じたものではありますが、一番大事だと思ったポイントをあげる場合、それは『The Model』の本の中にもありますが、「再現性」という言葉です。

ここで言う「再現性」は、単純に見える化、数値化するなどして測定できるから再現できる、そして計画が立てられる、といった類の意味ではなく、環境が変わっても再現できるようになることが重要 というところです。対象となっている事象や数値、行動、考え方等、ビジネス上のあらゆるものに対して、Whyを繰り返し、その背景や理由を常に探るように心がけることが大切であり、それを続けることでこの「再現性」を各々で得ることができるとのことです。

講義では、以下の動画も紹介して頂きました。Whyを繰り返す重要性がさらによく伝わって来ました。

「スティーブ・ジョブス1995 〜失われたインタビュー〜」

この中で、ジョブスの言葉として以下のようなものがありますが、講義ではちょうどこの部分を紹介頂きました。

「ビジネスの世界では物事が深く考えられていない。」
「ビジネスでは多くの物事が”言い伝え”に縛られている。”ずっとそうだから”で済まされるんだ。」
「だから臆せず質問して、よく考え、懸命に働けば、ビジネスの心得は自ずと身に付く」

福田ゼミ後半に向けて

福田ゼミの後半では、営業とカスタマーサクセスの講義、各自のThe Modelのチーム内発表とチーム代表発表が予定されています。私も自分の対象とするビジネスを解像度高く分析できるようチャレンジして行きたいと思います。

ゼミを通じて学んだ専門用語:
ADR(Account Development Representative):見込み客を営業に配分する部門
AE(Account Executive):外勤営業
ABM(Account Based Management):ターゲット決めて、そこにリーチしていくマーケティング手法
ARR(Annual Recurring Revenue):年間定額型収益モデル
BDR(Business Development Representative):こちらからターゲットアカウントを決めてアウトバウンドで行うインサイドセールス
CAC(Customer Acquisition Cost):顧客を1人獲得するのに必要なコスト
Churn:解約率
Close rate = 受注件数 / (Close + 失注 + no decision):営業の能力を見る指標ICP(Ideal Customer Profile):理想的な顧客プロファイル
CRM(Customer Relationship Management):顧客管理システム
EBR(Enterprise Business Representative):アウトバウンド型インサイドセールス。ターゲットを設定し、電話などで営業を行う
Lead:見込み客
LTV(Life Time Value):顧客の生涯価値
MQL(Marketing Qualified Lead):マーケティング部門が評価し、インサイドセールスに引き渡してよいと認定したリード
MRR(Monthly Recurring Revenue):月額定額型収益
Pipeline:商談が受注に至るまでのプロセス
SDR(Sales Development Representative):インバウンドのリードが入ってきて、Qualificationをコールするやり方のインサイドセールス
SFA(Sales Force Automation):営業が商談を管理するツール
SMB(Small to Medium Business):中小企業
SQL(Sales Qualified Lead):インサイドセールスが評価し、営業部門に引き渡してよいと認定したリード
SR(Sales Representative):インサイドセールス
Won rate = 受注件数 / (Close + 失注):競合に対しての勝率を見る指標

*このnoteに記載の内容はあくまで私が理解した範囲であり、誤りがある可能性があります。その点にご注意下さい。

執筆:Shuji Kaneko

💡プロフェッサープロフィール

アドビ システムズ 株式会社 専務執行役員 マルケト事業統括
福田康隆
2019年3月、アドビとマルケトの統合を機に、アドビ システムズ 株式会社 専務執行役員 マルケト事業統括に就任。 2014年6月、マルケト入社と同時に代表取締役社長に着任し、2017年10月同社代表取締役社長アジア太平洋日本地域担当プレジデントに就任。
2004年、米セールスフォース・ドットコムに入社。翌年、同社日本法人に異動。以後9年間にわたり日本市場における成長を牽引する。専務執行役員兼シニアバイスプレジデントを務める。 大学卒業後、日本オラクルに入社し、セールスコンサルタントとして勤務。2001年に米オラクル本社に出向し、営業職に従事。

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