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WEEKLY OCHIAI「なぜビジネスパーソンにアートが必要なのか?」

今回のWeekly Ochiaiのゲストは山口周氏。

山口氏といえば、ロジックや数字ベースの意思決定ではスピードもクオリティも頭一つ抜けられない不確実な時代に、直感や美意識に基づくリーダーシップの大切さを説く著書『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営におけるアートとサイエンス~』がたいへん話題になりました。

その山口氏と、アートも科学もビジネスも実践する落合陽一さんが、なぜ経営において「アート」が必要なのか、議論しました。

ちなみにこちらのツイート左側の女性は、今回からWeekly Ochiaiのアシスタントをされるシェアリングエコノミーの伝道師でもある石山アンジュさんです。

なぜビジネスパーソンにとって、美意識が必要なのか?

山口氏はこれまで、難しい問題を解いて正解を言い当てるスタイルの戦略コンサルティングを行ってきました。ところが、机上で出した正解の通りに実践しても、クライアントが勝てることは多くなかったといいます。

その理由は、ロジックベースの解なら誰でも解けるため、正解がコモディティ化してしまったから。では、どうしたら勝てるのかを考えた時に、そもそも経営に「美意識」があるかが大事という考えに行きついたそうです。

落合さんも、「実施する前にケーススタディで正解とされたものが実際にうまくいくかというと、それは少ない」と同意していました。

すべてのビジネスはファッション化する

基本的な生活ニーズが満たされ、消費が自己実現を果たす手段となった現代においては、どこに住み、どんな冷蔵庫を使い、どんな車に乗り、どんなパソコンを使うのかということ自体がファッションアイテムとなり、人間を記号化する道具となりました。そして企業には、ライフスタイルや感性自体を提案することが求められるようになったといいます。つまり、ビジネスがファッション化しました。

にもかかわらず、これまでの日本企業は機能重視に偏りがちで、感性の部分が欠けていたことにより、携帯電話や家電が世界で勝てなくなってしまった。

落合さんもロジックが大事ではあるけれど、ロジックはあくまでHowであって、それよりも何をするのかという問題発見力や熱情の方が大事だと話します。

とはいえ、「このセンスの人にはこれが高価格で売れる」というような売り方はロジックとして証明が難しいため、これまではロジックで説得しやすいコスト削減や低価格路線に陥りがちでした。

それが、最近では「数字は関係ない、やるからやるんだ」という若手が出てきています。そういう人に数字やロジックをつけてあげるのがこれからのコンサルタントの役割だと落合さんも話します。

日本のスタートアップはアジェンダが弱い

では、日本のスタートアップには課題解決志向や情熱は十分あると言えるのでしょうか。

シリコンバレーのベンチャーキャピタリストであるSchott Hartley氏は、著書『The Fuzzy and the Techiy : Why the Liberal Arts will Rule the Digital World』(思い切って意訳するなら、”フワッと系と技術オタク:なぜ文系がデジタル世界を制御するのか”)の中でこう述べています。

こんなことをやりたいとフワッと言う文系が軸となり、テクノロジーやロジックを作る人が周りを固めるフォーメーションのスタートアップが最も成功する。しかし、その逆、すなわち「このテクノロジーを使ったらこれだけお金が儲かる」という発想のスタートアップはうまくいかない。

このように、最近のシリコンバレーではリベラルアーツこそが最強だという機運が高まりつつありますが、日本ではまだまだアジェンダが弱いケースが多いと山口氏は指摘します。

落合さんも会社をやっている中で、数字で計算できることは重要でなく、言語化できないものの価値が高いと感じているそう。

例えば、「〇〇さんの頭の中に入っているコト」というような言語化できないものは、何度もディスカッションをしたり、その人のフェティシズムのようなものを理解しようとすることでしか分かりえませんが、それこそがアーティストの態度に近いし、数字で簡単に出せるものよりも価値が高いといいます。

アートは、究極的に個人的なことをやっているうちに最先端(State of the art)のものを生み出すことだと落合さんは評しますが、スタートアップも同様に、最先端なことをやっているときに最も活気があって価値が高くなります。アートとビジネスには親和性があるのです。

とはいえ、中途半端にアートを理解してもうまくいきません。長い時間をかけて蓄積されてきたアートの系譜を尊敬し、自分がその末端でトライアンドエラーを積み重ねているという認識を持つことこそが、最先端のアートを生む前提になるといいます。
ビジネスも同じで、そういったトライアンドエラーの積み重ねであることを体感的にわかることが大切だと落合さんは解説します。

美意識の鍛え方

では、美意識はどうしたら鍛えられるのでしょうか。

落合さんは、見たものを言葉にしてみることと、その後作ること、そのループを繰り返すことが大事だといいます。

山口氏も、アートや音楽、建築をたくさん見て、何が自分の心に響くのかを知ることが美意識を形成するといいます。その上で、落合さんが言うように言語化するプロセスに入ると、自分なりの感性やそれを評するリテラシーを持てるようになると。

ちなみに、日本人がよく美術館に行って有名作品の写真を撮って去るその見方は、ただの散歩だと一蹴されていました。

この他にも、大企業とアート、バブル世代と美意識派の戦いなど、ここでは書ききれないトークが満載だった今回のWeeklyOchiai。詳しい内容については、ぜひ見逃し配信をご覧ください。👇

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最後に、番組収録中に落合さんが山口さんの写真を撮り、その場でサインをしてプレゼントしていました。美意識あふれる素敵な一枚。デジタルにないリアルなモノならではの良さがありますね。

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編集:柴山 由香

※本記事は、2018年5月30日に開催されたWeekly Ochiai「ビジネスパーソンのためのアート」をまとめなおしたものです。(ゲスト:山口周氏・落合陽一氏、モデレーター:佐々木紀彦氏、アシスタント:石山アンジュ氏)

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