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PRベースのデザイン思考戦略”Neo-PR経営”とは?/「イノベーションを起こすクリエイティブ思考術」ゼミ第5回

エリック松永氏が率いるNewsPicksアカデミア「クリエイティブ思考術」ゼミ第5回は、PRベースのデザイン思考戦略“Neo-PR経営”入門。多くの日本企業のPRの現状や、なぜPRが必要なのか、良いPRとは何か学びました。講義の後半に行われた「アースフレンズ東京Zへの提案」のグループワークについても必見のレポートはゼミ受講生の”にっしー”こと、西村仁志さんがお伝えします!お楽しみください!

PRの起源とは?

そもそも、PRの起源は何でしょうか?
諸説ありますが、今回の授業で取り上げられた事例は、1807年にトーマス・ジェファーソンが選挙で「パブリック」と「リレーション」の2つの言葉を組み合わせて使ったとのこと。

“選挙で勝つにはどうしたら良いのか?”

いくら良い政策があっても選挙に勝てるわけではありません。
政策をどんなメッセージ”として民衆に伝えていくのか?こそがポイントであり、票につながります。
メッセージは、トップである大統領が自ら作り、自ら発信します。
そのメッセージの伝え方を練るために大統領の側近には報道官がいます。報道官は大統領の考え方を最もよく理解している必要があるのです。

日本企業のPRの現状

しかし、多くの日本企業の場合は、
社長の下の、事業部長の横にいる経営企画室の中にいる広報室がPRを担います。

つまりトップから遠く、様々な稟議を通さざるを得ない場所にいる広報がPRを行なっているのです。
稟議を通していく過程で、当然そのPRは当たり障りのないメッセージに削り取られてしまいます。
そんなメッセージを出して、誰の心に刺さるのでしょうか?

あるべきPRとは、CEOが自ら経営理念・ビジョンを語り、Chief PR Specialist(以後CPS)とどのようにメッセージングするのかを検討して世に出す。そしてメッセージがどうパブリックに伝わっているのかを把握し、次のメッセージにどう変化を加えていくのかを考えることが必要とのことでした。

※CDO:Chief Date Officer

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PRって誰に対してするもの?**

PRといえば、一般的には消費者向けのCMや広告をイメージしがちです。
しかし、エリック氏は、「従業員・元従業員」や「現在関わりのない人」に対するPRが重要だと言います。
特に従業員へのPRが最も無視されがちとのこと。優秀な社員の確保が難しくなっている昨今、従業員の満足度が下がってしまうと会社の人材確保が困難になり、中長期的に会社に大きなダメージを与える可能性があるのです。

トヨタのNEO-PRの実践

ここでトヨタの豊田社長の事例が取り上げられました。

・スープラ(スポーツカー)を発売した時に「ドイツメーカーのスポーツカーと戦えるクルマはスープラしかない」と豊田社長の運転の師匠である故・成瀬氏と語り合ったスープラの思い出をアピールした。
・自動車企業であるにもかかわらず、トヨタはモビリティ・カンパニーに変革すると“ラスベガスCES”という家電ショーにわざわざ登壇して豊田社長が発表した。
・“白い巨塔”と社内で言われて他の社員がから理解されなかった技術部担当の副社長に豊田社長が“君たちの言うことは意味が分からない!”と言って話を振り従業員の全社会合で話をさせた。
・マツコ・デラックスに一番欲しいクルマを問われ、迷わず「ポルシェだね」と回答した。

表向きはトヨタのPRには見えないのですが、豊田社長がクルマを本気で好きなこと、本気でトヨタを変えたいという想いが伝わります。
そして誰よりも早く出社して仕事を頑張っている技術部の副社長の努力をアピールし、社員のモチベーションを着火させることに成功しているのです。

一方、会社員の私が日々感じるのは、トップが何を考えているかわからないということです。社長から私に伝わるまでの途中にいる誰かがメッセージを変化させてしまっているのかもしれません。

トップがメッセージを自分の言葉で伝えているトヨタでは、各社員が正しいと感じることを各々で判断して仕事を行う能動的な社員が増えるでしょう。現場で感じる課題の解決を提案して直属の上長に反対されても、トップのメッセージを盾にしてより上の上長などに相談できる社員が生まれれば、強い会社へと成長できる可能性があります。

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ゼミでの学び**

今回の授業ではトップ自らが従業員や消費者以外のステークホルダー候補にもPRしていくことが大切であることを学びました。果たして、これらの学びをどうトップではない私たちが活かしていくべきなのでしょうか?それを私の中で考えました。

① 会社でトップに働きかける
まずは会社のトップに、自分の想いを従業員に対して語りかけていくことの重要性を説いていくことができるかもしれません。多くの日本企業ではトップ自らがPRを行う必要性に気づいていないケースが多いですが、このように学んだ事例を伝えていくことで、変わってくる会社もあるかもしれません。

② 自分のチームにPRする
会社単位では難しくても、自分自身がトップになれる組織でその仕事に対する想いやストーリーを伝えていくことで、メンバーに対してこの仕事の価値を理解してもらうことは重要だと感じました。
仕事をより大きくしていくときに、メンバーの1つ1つの作業に指示だしをしていくのは組織トップが仕事の拡大を目指す上で好ましくありません。しかし、全てのメンバーに自由にやらせるわけにもいきません。
組織のトップは、この組織が何を目指しているのかを共感ベースで落とし込むことで、各メンバーが自分で判断できる組織に変革していくことが必要になってきます。

③ 会社に限らず自分のストーリーをPRする
授業は会社のPR戦略について議論されていましたが、そもそも会社という枠すら意味をなさない時代になりつつある中で、何かの夢を実現する際に自分を取り巻く仲間が自分の味方になってくれることが武器になります。
自分自身のストーリーを日々伝え続け、周りで共感してくれた仲間を引き込み、夢を実現していく。そのような活用方法もあるのではないでしょうか?

授業の後半では、各グループの検討状況を説明し、アドバイスを頂きました。
次回の最終回はこれまでの学びを活かし、アースフレンズ東京Zオーナーの山野さんにプレゼンを行います。


<プロフェッサープロフィール>

青山学院大学教授/アバナード デジタル顧問
松永エリック・匡史

バークリー音学院出身のプロギタリストという異色の経歴を持つアーティスト、教育家、ビジネスコンサルタントとマルチに活動。戦略コンサルティング、デジタルトランスフォーメーションのパイオニアとしてアクセンチュア、野村総合研究所、IBM、デロイトトーマツコンサルティング メディア・エンターテイメントセクター アジア統括パートナー/執行役員、PwCグループ デジタルサービス日本統括パートナーとしてデジタル事業の立ち上げと業界をリードし現職。現在青山学院大学の教授と並行しONE+NATION Digital & MediaのCEOとしてデジタルサービスのプロデュースを行う。青山学院大学国際政治経済学研究科修士課程修了。ONE+NATION Digital & Media Inc. 代表取締役CEO

💡ゼミ詳細

💡NewsPicksアカデミアとは?
毎月最前線で活躍しているゲストをお招きしてビジネスに役立つお話を伺うイベントや少人数で集中的に学ぶゼミが開催されています。
イベント以外にも、毎月最先端の知が学べる書籍が手に入り、オリジナル動画コンテンツも視聴可能。
NewsPicksアカデミアを、ぜひご自身の教養やキャリアのアップデートに役立ててください。


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