ホテル

ドープな体験で繋ぐ―コミュニティ型ホテルが作る未来

旅って素敵だなぁ。

「コミュニティ型ホテルが作る未来」という本イベントには、ホテル経営やコミュニティの作り方について学ぶつもりで来ましたが、
イベント終了後の感想として一番に出たのはこんな思いでした。

ゲストの龍崎さんの原体験は、8歳の時に家族で行ったアメリカ大陸横断旅行だったそうです。
8歳という年齢だと移動の時間は楽しめず、唯一その日に泊まるホテルが楽しみだったそうですが、
着いてみると、どこも同じようなホテルで面白みがない。

そうしたホテルの在り方に疑問を持ち、ホテル事業をしようと決められたとのことです。

旅行は端的にいうと体験を求める行為ですが、
その中で一晩を過ごすホテルはとても重要な存在です。

コミュニティ型ホテルを考えるということは、旅行という体験の本質的な魅力・価値を考えることに繋がる。
そのようなことが頭に浮かび、これからのホテルの可能性にワクワクさせられました。

本イベントではそんな心を揺さぶる魅力的なお話が、深い思考に基づいた言葉によって展開されました。

<登壇者プロフィール>
楠本修二郎(くすもと・しゅうじろう)/カフェ・カンパニー代表取締役
1964年、福岡県生まれ。1988年、早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートコスモスを経て、大前研一事務所入社。平成維新の会事務局長に就任。2001年、カフェ・カンパニーを設立し、代表取締役社長に就任。“コミュニティの創造”をテーマに、代表ブランドである「WIRED CAFE」をはじめ、GINZA SIXのプレミアムフードホール「銀座大食堂」、コミュニティ型ホテル「WIRED HOTEL浅草」、LA発日本初上陸のティールーム「ALFRED TEA ROOM」等、およそ70ブランドを展開する他、地域活性化事業、商業施設のプロデュース等多様な事業を手掛けている。

龍崎翔子(りゅうざき・しょうこ)/L&G GLOBAL BUSINESS, Inc.取締役/ホテルプロデューサー
1996年生まれ。2015年にL&G社を設立。「ソーシャルホテル」をコンセプトに掲げ北海道・富良野の「petit-hotel #MELON 富良野」や京都・東九条「HOTEL SHE, KYOTO」をプロデュース。2017年9月には大阪・弁天町でアナログカルチャーをモチーフにした「HOTEL SHE, OSAKA」を、2017年12月には湯河原でCHILLな温泉旅館「THE RYOKAN TOKYO」を手がける。


コミュニティとしての”CAFE”と”ホテル”

「CAFE」=「Community Access For Everyone」
楠本さんにとって「CAFE」とは、単にコーヒーショップを表すのではなく、
「みんなが集まるコミュニティの場」という意味を持ちます。

地域コミュニティを地域に合わせて作っていくことを目指していると仰る楠本さんは、
2001年に渋谷の高架下にカフェを作ったところからスタートし、
そこから62ブランド104ショップを地域に根ざした形で作り続けています。

カフェ運営以外にも様々な事業を展開していますが、楠本さんが行っているのは多角化ではなく多様化です。
「ライフスタイルを育む CAFE TREE」というスライドが表す通り、
CAFEを中心に、コミュニティを進化させる事業をドメインとされています。

本記事ではイベント内容にフォーカスしますが、特に店舗経営される方はこちらからカフェ・カンパニーさんの哲学/企業理念を一読することをオススメします。
また、龍崎さんが楠本さんと”バイブスが合う”と感じられた著書「ラブ、ピース&カンパニー」もオススメです。


「ホテルとはメディアである」
そう定義する龍崎さんが作っているのはソーシャルホテルです。
ソーシャルホテルというのは、街や人や文化を繋ぐ存在となるホテルのことで、まさにメディア。

例えば、龍崎さんは大阪の弁天町が持っている空気感を、重厚感・インダストリアル感・レトロ感といった形に言語化し、
全室にアナログレコーダーを設置するという方法で、ホテル(HOTEL SHE, OSAKA)に落とし込まれています。
これによってホテルを地域の文脈にマッチさせて、ゲストと街を繋ぐメディアにします。

ゲストと人を繋ぐメディアとしては、コワーキングスペースやカフェとして地元の人がホテルを利用できるようにすることで、街の人と旅行者が繋がりやすい仕掛けをしたり、
ゲストと文化を繋ぐメディアとしては、泊まる×〇〇、例えば温泉なのにお酒が飲めたり、層雲峡ではシーシャ体験ができたりと、新たなライフスタイルを提案します。

お話を聞いていると、お二人の目指すところや、考えの根本的なところに2つの共通点を感じました。

1つに、
“ カフェ”や”ホテル”という箱を作ることが目的なのではなく、
“CAFE”や”ソーシャルホテル”を通じて地域をゲストと繋げることを目的としていること

2つに、
楠本さんは、「Think Global, Respect Local」
龍崎さんは、「Re write/light the world」
という言葉で、地域の魅力を再発見して新たな価値を生むことを大切にしていることです。
※共に両社のHP(L&G社CAFE COMPANY社)より引用

対談パートでもそんなお二人の掛け合いが相乗効果を生み、更に本質的な議論になっていきました。


非日常を求める旅行トレンドの変化

パンチパーマのママによって、カラオケやアポロチョコがぼったくり価格で提供される。
こんなスナックが外国人に非常に人気があると楠本さんは仰います。

これまでの旅行はラグジュアリーな非日常を求めることがトレンドでしたが、
今、”他人の日常を体験する”ことに非日常を求めることがトレンドになってきているようです。

旅好きの方には、きっとこの”他人の日常を体験する”ことに非日常を求めることが実感としてよく分かるのではないでしょうか。
僕はバックパッカーで旅をよくするのですが、旅中に一番求めているのは現地のリアルな生活に触れることです。
ラグジュアリーなホテルは”豪華”ということである程度想像ができてしまうことに対し、
現地のリアルな生活に触れることは、オンリーワンの魅力がある、最高の非日常体験になり得ます。

こうしたトレンドの変化の中で、龍崎さんの"ホテルは旅の演出装置”という言葉には非常に説得力があります。


ホテルの価値とは

「宿泊以外のホテルの価値にはどのようなものがあるか。」
という問いに対して、”旅の演出装置”という言葉が龍崎さんからは真っ先に返ってきました。

この”旅の演出装置”という視点から、改めて街・人・文化をゲストと繋ぐメディアとしてのホテルが語られる中で特に印象に残ったのが、

「ホテルは異文化・異質な存在を認知する場として機能する」
「ホテルはライフスタイルを試着できる場所」


という言葉です。

今の社会はSNSも発達して、自分の居心地がいい空間に移動し、居心地が悪い人や情報はシャットアウトできるようになっています。
そうした時代背景の中で現象として現れたのが、”サプライズ”として捉えられたBrexitやアメリカ大統領選挙で、
現在の人達は自分の認識の外にいる人の存在を想像することができなくなってしまっているのではないかと龍崎さんは仰います。

こうした中で自分の認識の外側にいる人達がホテルにはやってくるため、「ホテルは異文化・異質な存在を認知する場として機能する」のです。

この言葉には、これからのコミュニティ型ホテルの可能性を強く感じました。
好きなもの同士が集まるのではなく、異質な人同士が集まるコミュニティは非常にユニークです。


また、こうした社会的な機能とは別にエンタメ面での可能性を感じたのが、
「ホテルはライフスタイルを試着できる場所」という言葉です。

他人の物語を消費するより、自分の物語を構築することにエンタメが移ってきている現代において、
普段の自分とは違うライフスタイルを試着できるという機能は、自分の人生を楽しむ上でとても魅力的です。

楠本さんが仰った、「自己肯定感を後押ししてくれるホテルがこれから大事。」という言葉も非常に印象的で、
お気に入りの服を着た時にチャレンジングな気持ちになれるように、
ライフスタイルを提案し、ポジティブの連鎖を生む存在となるユニークなホテルがこれから求められていきそうです。

では、そんなホテルはどのような場所に生まれるのでしょうか。


そこにドープはあるか

ジャケ買い・チルアウト・digる・バイブス

言葉の端々から音楽への愛着が感じられる龍崎さんは、
ホテルの場所を選ぶとき、その場所がいかに”ドープ”かに拘ると仰います。

<筆者追記>
”ドープ”とは、HIPHOP界隈でよく使われる言葉で、「イケてる!」「最高!」のような意味があります。
エモいが湧き上がる感情なのに対して、感動に深みを感じる時に”ドープ”を使う気がします。

明らかにされていない良さがあり、掘り甲斐がある”ドープ”な土地、
これは、楠本さんが場所を選ぶ時に重視する「自分が2,3泊したら面白さを発見できるところ」という言葉ともリンクします。

お二人に共通しているのは、こうした”ドープ”さを発見し、徹底的に言語化をしてデザインに落とし込むところです。

例えば、龍崎さんは地名の響きにも魅力を感じると言いますが、
そうした地名の意味や歴史、漢字から伝わってくる印象も全て言語化し、ホテルのコンセプトを決定しています。

また、楠本さんは「まだ見ぬ人へのホスピタリティがデザイン」との言葉の通り、
誰が、いつ、どこで、誰と出会うのかを想像して言語化した上で、
その体験を必然性として仕掛け、コミュニティのデザインに組み込んでいきます。


このように、土地の良さを発見し、言語化をすることで"旅の演出装置"となるドープなホテル・コミュニティが出来上がっていくのです。


最後に ーおもてなしの本質とはー

おもてなしの原点は聖徳太子。

聖徳太子の「和を以て貴しと為す」とは、多様な価値観を全て取り入れてリスペクトをするという意味で、それこそがおもてなしの本質だと楠本さんは仰います。

コミュニティ型ホテルをデザインするということは、そうした旅行体験を増幅させて、
コミュニティに訪れる人の多様な価値観がリスペクトされ混じり合う、本質的な”おもてなし”空間を作るという事だと感じました。

ホテルというソーシャルなコミュニティによって、分断しがちな社会が緩やかに繋がっていく。
これからのコミュニティ型ホテルに、そんな可能性を強く感じたイベントでした。

※本イベントは7月31日(火)に行われたNewsPicksアカデミアイベント『コミュニティ型ホテルが作る未来(ゲスト:楠本修二郎氏・龍崎翔子氏)』をまとめなおしたものです。

文:稲垣 佑樹

編集:山口 晶子

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