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【NASA小野雅裕】 宇宙ビジネスの最前線 ≪イベントレポート≫

こんにちは!NewsPicksアカデミア 第1期アンバサダーの猪狩久子です。

NewsPicksプロピッカーが語る最先端、第2回「宇宙ビジネスの最前線」が、2018年2月21日(水)、アカデミーヒルズライブラリーにて(東京・六本木)にて開催されました。

このイベントは募集人数100名のところ、たった2日間で満員御礼!
講義はライブ配信も実施されました。

今回のスピーカーは、NASAの中核研究機関・ジェット推進研究所の研究者である小野雅裕さん。みなさんもご存知の大人気マンガ『宇宙兄弟』(小山宙哉/講談社)の監修もなさっている方です。

宇宙への愛情あふれる小野さんが、壮大な宇宙、最先端の宇宙ビジネスについてわかりやすく語ってくださったこの贅沢なイベントの模様をお届けします!

■登壇者プロフィール
小野雅裕(おの・まさひろ)
大阪生まれ、東京育ちの阪神ファン。2005年東京大学工学部航空宇宙工学科卒業。2012年マサチューセッツ工科大学(MIT)航空宇宙工学科博士課程および同技術政策プログラム修士課程終了。慶應義塾大学理工学部助教を経て、現在NASAジェット推進研究所に研究者として勤務。2007年、短編小説『天梯』で織田作之助青春賞。2014年に著書『宇宙を目指して海を渡る』(東洋経済新報社)、2018年2月に『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』(SBクリエイティブ)を刊行。2016年よりミーちゃんのパパになる。


宇宙のスケール感を理解しよう!

本イベントタイトルは「宇宙ビジネスの最前線」ですが、小野さんは「~人類が宇宙へ出る意義とは?~」というサブタイトルを掲げ、ビジネス面だけではなく、より深い話題を準備してくださっていました。

まず本題に入る前に、「宇宙のスケール感」について確認!

たとえば、地球がビー玉の大きさ(1.5cm)だったら、
宇宙全体の大きさは?さまざまな天体までの距離はどれくらい?
ビー玉(地球)は、六本木にいる私たちの掌にある想定で考えてみます!

◆月まで   45cm!
◆金星まで  10~50m
◆火星まで  100m
◆水星まで  110m
◆太陽まで  175m
◆木星まで  920m (青山まで)
◆土星まで  1.7km (神宮球場まで)
◆海王星まで 5.3km

太陽系で地球からいちばん遠い惑星は、5km先!
これが「宇宙のスケール感!」
それを踏まえて本題へGO!

地球に存在する産業は、宇宙でも存在し得る

イーロン・マスク氏のSpaceX社の目覚ましい活躍により、「宇宙産業=SpaceX(ロケット)」と一般的には考えがち。しかも「宇宙」という、とてつもなく広い領域を一緒くたして話をしますが、認識をあらためなければいけません!

■「宇宙」とひとくくりにすることは無意味
 「宇宙」=地球以外
■「宇宙ビジネス」とひとくくりにすることは無意味
 「宇宙ビジネス」=地球以外で行われるビジネス

地球にさまざまな産業があるように、宇宙にもいろいろな産業があります。
とはいえ、まだまだビジネスとして成立しているものはあまりないのだとか。

では、もしも宇宙ビジネスをしようと思ったら…
まず地球の産業を思い浮かべ、そのなかで、宇宙でできそうなのに、まだビジネスになっていないものを考えてみるといいそうです!

もしも宇宙のビジネスや投資をするなら?

■打ち上げビジネス(輸送業)
すでに盛んなビジネスで、今から参入は厳しい上に、差別化が難しいので「コモディティ化する」とのこと。

「みなさんは荷物を発送するのに、ヤマトさんと佐川さんにこだわりがありますか? 運んでくれればどちらでもいいですよね? 地球から望む軌道に、望むスケジュールで運んでくれれば、ロケットがSpaceXだろうがアリアンだろうが関係ないのです。産業として成熟してくると、値段が重要になりますので、早晩コモディティ化します」と、小野さんはおっしゃいます。

そんな中、輸送業で伸びしろが大きいのは、「小型打ち上げ市場」
日本でも宇宙ベンチャーなどがロケットを打ち上げたりしていますしね!

その次のイノベーションは?
「スペースプレーン」、究極は「宇宙エレベーター」

宇宙船に、宇宙エレベーターですよ!!!
ちょっとまだ物語の世界観で実感がわかないけれど、もうそこまで技術開発は進んでいるのかもしれないですね!

そして輸送以外のビジネスはというと、遥かに大きな市場になる可能性があるとか。

■宇宙インフラ
NASAが自前で持っている「通信」、静止軌道なら実現しそうな「軌道上サービス」、規制整備が必要な「デブリ回収」、「他惑星インフラ」等が有力なのだそうです。

アポロ11号着陸地点が人気観光地になる?!

輸送業やインフラ以外で計画されているビジネスに、小型衛星を打ち上げて世界中に高速インターネットを提供する「インターネットプロバイダ」、宇宙からの写真撮影や航路の情報提供サービス等の「情報収集業(リモートセンシング)」などがあるとのことですが、私たちにもっとワクワク感をくれるビジネスがあります!

■エンターテイメント
世界初!「人口流れ星」 宇宙ベンチャー・ALEが事業として取り組んでいます。狙った場所、狙った時間に流れ星を再現。東京オリンピック開会式・閉会式での実現を計画してるとか。ただ楽しいだけではなく、科学発展にも貢献できるという素晴らしい事業になりそうです!

■観光
ヴァージン・ギャラクティック社が推進する「サブオービタル」は、向こう数年でごく一部の富裕層が実現できそう。月は距離が近く片道3日で行けるため、これから10-20年後あたりが旅行ビジネス成立圏内?とのこと。

で、いちばんの観光スポットは「アポロ11号着陸地点」になるかもです!
初めて地球の生命が、地球以外に場所に降り立ったこれほどの文明イベントはない!! ほんとにいつか行ってみたいですね! 

民間の時代におけるNASA、JAXAの役割

よく日本では「民間」VS「政府」という二項対立の構図で語られる場合が多いのですが、「NASA(国営機関)」と「SpaceX(民間)」は相互依存の関係

まず、両社はほとんど競合していない。SpaceXはロケット開発、輸送の会社です。NASAにおけるロケット開発予算は1割。つまり、競合してるのはたった1割です。ロケット開発というのはマネーゲーム、資金力勝負なのだとか。

NASAは国営機関なので予算が決まっています。また、SpaceXに輸送委託をすることにより、輸送費の削減、利益確保ができています。

その一方、NASAには、儲けにならなくても人類のためにやるべきことがあるといいます。

地球外生命探査に力を入れるNASA

「宇宙に命はあるのか」

小野さんが携わっている火星。
40億年前に水が豊富にあったと言われる火星には、その頃の命の痕跡があるのかもしれないのだそうです。これを探査するのが「Mars2020」で、ミッションは火星サンプルリターン。地球外生命を確認できるのかどうかです!

もうひとつ注目すべきは、「エウロパ ~地球外生命体探査~」
木星の衛星です。表面は氷で、マイナス100℃以下かもしれないほどの極寒!厚さ10~30kmあり、その下に地球の2、3倍の水の量の海が広がるのだとか!そのため生命が存在するのではないかと多くの人が想像しているのだそうです。

JAXAは何しているの?

探査機「はやぶさ」は、世界で初めて小惑星(月以外の天体の表面)からサンプルを持ち帰り、感動のストーリーに日本全国で涙した人も多いのではないでしょうか。あのインパクトはすごい!とNASAでも評判になっていたそうですよ!

「なぜ小惑星なのか?」

小惑星には地球の過去の情報があるとのこと。
地球は生きているため、古い記録はほとんど取られていないけれど、小惑星には46億年前の太陽系のできたときの記録がそのままあるのだとか。
たとえば炭素、有機物、地球の水はどこから来たのか解明されていない。その鍵が小惑星にあり、だから探査に行くのだそうです!

小惑星探査はヒートアップ中!

2018年は、「はやぶさ2」、アメリカの「オシリス・レックス」の打ち上げが予定され、JAXAがその次に計画してるのは、「MMX(火星衛星探査計画)」
楽しみですね~!

我々はどこから来て、どこへ行くのか?

「なぜ地球外生命探査が必要なのか?」

この問いについて、小野さんはこう説明してくださいました。

「我々自身を知る必要があります。私たちは地球の生命誕生しか知りません。もしも火星の生命のしくみが私たちの地球と同じ起源だったら。私たちの生命の究極の疑問が、他の星の生命を発見し、比較することでわかってきます」

生命の究極の疑問とは「我々はどこから来て、どこへ行くのか?」

これって科学というより哲学!

しかし、生命の疑問を解明したところで儲かるわけではないので、地球にはもっとお金を使うべきところがいっぱいある!という意見もあるのだそうです。

ですが、「自分の親も先祖も知らなかったら、自分のルーツを知ることはできない。同じように人類のルーツを知りたいという欲求があり、知るべきだと思う」と小野さん。

これからもっともっと人類が宇宙に向かいますね。
いままで見ることのなかった視点で、地球を見るチャンス到来です!

宇宙から地球はどう見えるのか?

ここで宇宙から見た地球の写真をご紹介くださいました。

低軌道から見える日本列島。高度500km。意外と近い?!

光っている場所が鮮明に見えます。もっとも明るいところは、「おそらく、X JAPANが、コンサートをやっているところですね!」と、小野さんはユーモアを交えてくださいました(X JAPANファンの私は爆笑、歓喜!)。
このほか、土星探査機カッシーニから撮影した地球、日の出じゃなく地球の出「EARTHRISE」などを鑑賞しました!

『Pale Blue Dot』を小野さんが朗読!

講義の締めくくりは、小野さんが大好きだというカール・セーガン『Pale Blue Dot』の1節を、原文(英語)で朗読してくださいました。

広大な宇宙、そして地球の存在についてイメージを膨らませ、静かに思いを馳せる時間となったのは言うまでもありません。

この『Pale Blue Dot』の小野さんによる解説、日本語訳は、『宇宙に命はあるのか−人類が旅した一千億円分の八』(SBクリエイティブ)で堪能することができます!

ボイジャー1号からの写真では、小さく淡い青い点にしか見えない地球。でもここが我々にとってかけがえのない場所であることを感じ、胸に迫りくる『Pale Blue Dot』。ぜひお読みになってみてください!

小野さんと参加者の対話の時間

アカデミアのアプリ、ライブ配信、そして会場のみなさんからたくさんの質問が飛び出し、惜しまれつつ講義は終了へ。

続いて小野さんの新刊サイン本販売会を開催!
もちろんすでに購入、会場に持参されたみなさんの書籍にもサインをしてくださいました!

慌ただしい日常生活に追われて忘れていたけれど、遠い彼方でこれから何が起こるのかワクワクが止まらない、宇宙ってロマンティック!と感じられた講義でした!

最後に、NewsPicksアカデミアについて

「教養×実学×行動」による新たな価値創出を目指す、新時代の学びと出会いの場です。堅苦しい? そんなことないんです!

今回のように、専門知識なしでも理解が促進する講義、そして登壇者と参加者がざっくばらんに対話できる空間。アカデミア会員同士が互いに切磋琢磨し、より学びを深められる機会がここにあります!

有意義な日々をご一緒できるアカデミア仲間、お待ちしています!
https://newspicks.com/academia/about

猪狩久子 Hisako Igari
NewsPicksアカデミア アンバサダー[第1期]
Webディレクター/編集/ライター
https://newspicks.com/user/510845

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