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「ウェルビーイングなチーム論」/春学期 前野ゼミ第3回レポート

個人が幸せに働ける、より良い組織にするにはどうすれば良いのでしょうか。4月から開講しているNewsPicksアカデミア春ゼミでは、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司先生を招き、「ウェルビーイングなチーム論」をテーマに3ヶ月間学んでいます。幸せな組織について考えた前野ゼミの第3回について、ゼミ生の「いちこ」こと寺田一子がレポートします。

幸せな職場とは?

第1回、第2回の前野ゼミでは幸福学の概要を学びましたが、第3回の本講義ではいよいよ具体的な事例を見ていくということで、「伊那食品工業株式会社」「ダイアモンドメディア株式会社」の2社を題材に、各チームで「幸せな組織とは何か」についての議論が行われました。

*第1回、第2回ゼミのレポートはこちら👇

まるで従業員全員が家族のような幸せな会社
「伊那食品工業株式会社」

まずは1社目の伊那食品工業。現職の塚越社長の父、塚越寛さんが1958年に創業し、「いい会社を作りましょう~たくましく そして やさしく~」を社是とする会社です。(写真は前野先生のブログから拝借しました)


企業理念として「従業員満足」や「顧客満足」を標榜している企業は多いですが、実際にはその手段である業績拡大、利益向上のみを追い求めている会社も多いのではないでしょうか。

私自身コーチとして企業の組織開発に携わってきましたが、かくいう私も企業たるもの業績向上が一番の目的と考えていました。こんなにも心洗われる企業目的があると知り、目から鱗が落ちました。

こちらは伊那食品工業HPに掲載されている同社の「企業目的」です。

企業は本来、会社を構成する人々の幸せの増大のためにあるべきです。私たちは、社員が精神的にも物質的にも、より一層の幸せを感じるような会社をつくると同時に、永続することにより環境整備・雇用・納税・メセナなど、様々な分野でも社会に貢献したいと思います。したがって、売り上げや利益の大きさよりも、会社が常に輝きながら永続することにつとめます。(伊那食品工業HPより)

更に、同社の経営方針として、
・目先の利益や効率は求めない。
・急激な成長は会社の「敵」と考え、需要があっても作りすぎない、売りすぎない。
・業績の評価はしない。
・会議の際、不必要な資料は作らない。
・能力給にはしない。給料には、ほとんど差をつけない。
・全社員の給料を毎年2%ずつ必ず上げる。(60年間実行している)
・毎朝、社員が自主的に会社の敷地内を清掃している。

など、会社が永続的に輝けるような仕組みや風土が60年の重みとともにしっかりと根ざしています。

「家族だったらどうするだろうか?」

塚越社長は何かを判断するときに、常にこの問いを自分に投げかけているそうです。

「家族だったら出来が悪いからといってお小遣いを半分にはしない。」

「家族だったら何かを買うのに申請書は必要ない。」

「家族だったら会議に資料は作らない」。

従業員を信じて任せる経営の成果は、従業員たちが自主的に考え動く組織となり、48期連続増収増益という業績に結びついています。まさに、「つながりと感謝」(第2因子)を徹底的に実践した結果、社員のやりがい(第1因子)、や自分たちらしさ(第4因子)も定着しているウェルビーイング第一主義経営が実践されています。

前野先生いわく、伊那食品工業は、里山のような暖かい雰囲気がにじみでつつ、きちんとした規律のある家父長型家族主義の会社です。いい意味での共産主義的、平等主義の会社で、トヨタ自動車の豊田章夫社長もその経営手法を参考にしているとのことです。

ホラクラシー組織の先駆者
「ダイヤモンドメディア株式会社」

もう一つの事例は、不動産テック企業であるダイアモンドメディア社です。武井浩三社長は1社目の起業で失敗した経験から、2社目の起業では皆が幸せになれるいい会社にしようと決意したといいます。

こちらはダイヤモンドメディア社の「サバイバルジャーニーガイド」(この会社でやっていくための手ほどき)の抜粋です。

①情報の透明性を重視。
②組織図なし。上下関係なし。
③休日、働く場所、時間は自分で決める。
④代表者・役員は選挙で決める。
⑤雑談を大切に。
⑥経営理念なし。
⑦ノルマなし。

給与額も含めすべての情報がオープンなので、会議の場での情報共有は最小限で済み、会議の場は主にアイディア出しだそうです。そして、ジョブディスクリプションに人を合わせるのではなく、適材適所で得意分野や強みを活かしあい、不得意分野を補いあうということが自然とできています。うまくいかなかったら、みんなで話し合って新しいことを試していく、その変化対応力もこの会社の強みだと感じました。

ティール組織という概念が世に出る前から、「自然だったらどうするだろう?」を自己の問いにおき判断してきたという武井社長。不動産テック企業という新しい業種にあった経営スタイルで、より幸せな組織を目指して試行錯誤されています。

事例として挙げられた2つの会社は、社長自身がよりどころとしている問いを持っていることが印象的でした。伊那食品工業は「家族だったら・・・?」、ダイアモンドメディアは「自然だったら・・・?」。迷ったときには、この問いを自分に問いかけ、判断しているそうです。

グループでの議論では、幸せな職場では「てばなす、ゆだねる」がキーワードという発言がありました。利益をてばなす、権力をゆだねる・・・。ありのままに経営することは難易度が高いというのは想像に難くないですが、手放したほうが管理コストも下がるという意見にはとても納得しました。

皆さんにとって「幸せな組織」とはどんなイメージでしょうか?

今回の講義では「幸せな組織」と一口にいっても色々な形態があることを学びました。利益を追求しないからよいというわけではなく、会社と従業員の心理的距離や、会社の経営方針への納得感も重要です。

「幸せな組織」を作るために、私は以下の3つを大事にしたいと考えました。
①一人一人を大事にしている。【ありがとう・ありのまま】どんな意見も否定せず、相手は何を大事にしている人なのか興味関心を持ち、相手を尊重している組織。
②対話(コミュニケーション)がある。【ありがとう】意見の対立を恐れず、意見を言い合える信頼関係がある。コンフリクトを乗り越えていけるだけの対話をしている組織。
③適度な余白がある。【やってみよう・なんとかなる】自分がやりたいことに取り組んでいる。googleの20%ルールのように、会社としてしなければならないことだけでなく、自分がわくわくすることに取り組める組織。

因子はあとから付け足しましたが、なんだかとてもしっくりきました。
読者の皆さんはどんな組織が「幸せな組織」だと考えるでしょうか?

ゼミ自体も「ありのまま」

さて、佳境に入ってきた前野ゼミは理論から実践へとフェーズが移りつつあります。講義の最後には前野先生から「実践のまとめ方も皆さんに考えてもらおうと思って・・・」という一言が。まさにありのままを体現していらっしゃいます。どんなアイディアが出ても、「いいですよ~」「いいですねぇ」としみじみ受け入れてくれる前野先生。前野先生の在り方そのものが私にとって学びとなっています。

執筆:寺田、 編集:山口晶子

<プロフェッサープロフィール>

前野隆司
1962年山口生まれ。広島育ち。84年東工大卒。86年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2011年より同研究科委員長兼任。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。

<ゼミ詳細>

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