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ビジネスのアウトプットのための読書法とは/麻野耕司氏×佐々木紀彦氏 組織・マネジメント読書論イベントレポート

人事・組織のプロフェッショナルの麻野さんを招いての読書談義。実は、9月20日に発売された『NewsPicks Magazine』2018 Vol2 Autumnでも人事・組織に関する素晴らしい本が麻野さんにより体系的に紹介されていますが、その中でも特に深く語りたい本について、今回のイベントではお話しされました。

『経営者の役割』

まず紹介されたのはこちらの一冊。共同意思・貢献意欲 (Willingness to corporate)に着目した本です。

そこで語られているのは「働いている人間は部品ではなく、意思がある」ということ、「その会社で働く・その会社に貢献することを内部の人材に選択してもらうことが必要」ということ、更に「外部の顧客から選択してもらうことと経営を両輪でやる必要がある」ということです。

高度成長期は、新卒一括採用・終身雇用・年功序列のシステムが機能していたので、部品としての人材を一度調達すればそれで終わりでした。一方、今は企業が終身雇用を保障できなくなり、転職インフラの整備で社員側も転職しやすくなり、会社と社員の関係は、お互い選び選ばれる相互選択関係になりました。

社員に選んでもらう、貢献してもらうということを会社側はもっと意識する必要があると、まさにバーナードが言っていたフレームワークが当てはまる時代になったと麻野さんはお話しされました。

『「アイ・カンパニー」の時代』

続いて、個人向けにお勧めの本として2003年に出版されたリンクアンドモチベーション 小笹芳央会長(以下、小笹会長)による『「アイ・カンパニー」の時代』が紹介されました。既に絶版になっている本ですが、アイ・カンパニーとは、自分株式会社という意味です。

前述のように、会社と個人は相互選択関係にあるので、会社側は社員のモチベーションを上げなければなりません。一方、個人は企業から選ばれる存在として、自分を高めていく必要があります。

これからの時代、個人は会社に依存せず自分自身を経営していく感覚を持つために、自分を「自分株式会社」と捉えなさいと2003年に言っている小笹会長の先見の明には驚かされます。

『心理学的経営』

こちらも既に絶版ですが、マネージャーや経営者向けにお勧めの本として『心理学的経営』が紹介されました。個人が色々な選択をできるように、組織の意欲を高める方法についてリクルートの元ナンバーツーの大沢さんが書かれています。

リクルート創業者の江副さんも大沢さんも東大の教育心理学出身ですが、組織・人事に関わる社会学や心理学の専門的な知見をリクルートに持ち込んだのは大沢さんだそうです。

リンクアンドモチベーションの小笹会長は、リクルート人事部時代にその大沢さんの弟子だったといいますが、リクルート的なサービスをより心理学・社会学を用いて体系化し、コンサルテーションとして提供したのが、リンクアンドモチベーションだということ。リクルートは、今まで見た会社で最も美しく組織をデザインしている会社だと麻野さんはお話しされました。

『ウォー・フォー・タレント(The War for Talent)』

続いて紹介されたのは13年前に出版されたこちらの本。求人広告を出しても優秀な人材は集まってこない昨今の労働市場を正しく言い当てているといいます。

これからの経営幹部の仕事は、半分は業績を上げること、半分は人材を獲得することにある、そのために社外にタレントプール を作って、自社の会社にくるように語りかけるしかないと書かれています。

これを実際にやっているのがメルカリだと麻野さんは紹介されました。

『エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング』

「エンジニアを前にプレゼンをすると、誰も頷かないし拍手もしないけれども、拍手するシステムがコンピューターに導入されていると、エンジニアは拍手のボタンは押す」とのこと。

複雑性が増し先を見通すことが難しい現代、エンジニアとビジネスを進めるための課題の整理方法やメンタリング法が学べるということでこの本が紹介されました。

今エンジニアを統率できない人はリーダーになれないとの佐々木さんのコメントにも頷かされます。

『7つの習慣』

麻野さんは同じ本を繰り返し読むことが多いそうですが、『7つの習慣』は300回くらい読んでおり、『7つの習慣』を体現することが人生の目的になっている程だといいます。

目標設定の3つの形としては以下のTo have, To do, To be型がありますが、この本ではTo beの形での目標設定方法を学んだということ。

この本は前田裕二さんの推薦の本でもあるので、前田さんと麻野さんで語り合うのもいいですね、と佐々木さんもお話しされました。

『ZERO to ONE』

この本も30回くらい読んでいるそうですが、ここに書いてあることを理解して実践するだけで、時価総額100億円の会社はすぐできると紹介されました。

事業を独占するための方法は、以下の4つだといいます。

事業サイドで『ZERO to ONE』に書かれている上記のようなセオリーを実践し、組織面で心理的経営をやったら、何万人かに1人の事業リーダーになれるといいます。

麻野さん自身、本で学んだ内容を本気で活かそうと思ってアウトプットするし、アウトプットに取り入れるつもりでインプットするというような本の読み方を大切にされているそうです。麻野さんの場合、『ZERO to ONE』に加えて、メルカリの 山田進太郎代表取締役会長兼CEOに教えてもらった『ブラック・スワン』(不確実性)からの気づきから、モチベーションクラウドを作ったそう。

「何か突然ある時に爆発するものがあるかもしれない。ペニシリンは発見されてから15年経って初めて効用を認められて、世界に広がった。ここにヒントがある。」と山田進太郎さんにある時言われたそうですが、社内に15年眠っているものでそのくらい可能性があるものがないかなと探したところ、コンサルティングの変革のための診断として使っていたサーベイ(組織診断)があったのだそう。このサーベイが事業のBS/PLのようなスコアが出る物差しになったら、きっと世界中の会社が使うだろうと、『ブラック・スワン』を読んでいる時に気づいたそうです。

まさにインプットとアウトプットを有機的につなげながら進化している麻野さんらしいエピソードです。

最後に

「世界を変えるとか、働く人のモチベーションを上げるとか、いつも言っていますが、夢を追いかける途中で出会ったチームメンバーやメンバーとの思い出ほど、味わい深いものはない」と語る麻野さん。

そのお話しには共感させられるところが多々ありますが、「目の前の地位とか名誉という世の中の物差しではなく、自分の物差しで生きないといけないと考えている」とおっしゃるところに、徹底的にいい仕事を追求されるプロフェッショナルとしての麻野さんの原点が見えたように思います。

来年3月にNewsPicks Bookから出版予定の書籍は、チームを再定義し、科学することにチャレンジされているそう。組織や人事の決定版となりそうで、今からとても楽しみです。

『「アイ・カンパニー」の時代』を書かれた小笹さんのインタビュー、現在NewsPicksで連載中です。

来年3月に出版予定の麻野さんの書籍も楽しみですね。

<イベントリンク>

<登壇者プロフィール>

文:宮崎 恵美子

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